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狐ぼんじゅーる編26

 夜、僕は食後にりっちゃんと雪門ゆきかどの三人で和室でテレビを見ながらこたつに入りくつろいでいた。

 ちゃぶ台型のこたつに雪門ゆきかどと僕が同じ区画に、僕とこたつの足を挟んだ隣がりっちゃんだ。つまり僕は二人の真ん中に伏せをして寝そべっている。

 テレビでは夜のニュースがやっていて、アナウンサーの綺麗なお姉さんが話している。明日は晴れらしい。


 雪門ゆきかどとりっちゃんは二人だけだと言葉少なめだ。

 仲が悪いからとかではないけど、やっぱり思春期だからかな。

 兄弟なのにお互い少し気を使っているような感じがする。


 でも僕はそんなの関係なく二人と話をした。


「今日はね。僕、学校でお友達と一緒に勉強したんだよ」

「そうなんだ。モフフくんは偉いね」

「お前に友達なんていたのか?」


 この、差っ!

 どっちがどっちの言葉か説明する必要はないよね。

 上がりっちゃんで下が雪門ゆきかどでだよ。

 …あっ、逆だった。上が雪門ゆきかどで、下がりっちゃんね。

 りっちゃんがそんな優しいこと言ったらちょっと怖いし、雪門ゆきかどが友達いたのか?なんて聞いてきたら僕泣く。


「りっちゃん僕に失礼。僕はやる気になったら友達100人作れるフレンドリーな狐だよ」

「つまり今はいないじゃないか」

「ぐっ」

 

 確かにここにも向こうにも100人なんていないけどね。作ろうと思えば作れるもん。たぶん。


「仕方ないじゃん。りっちゃんの学校って話ができる妖怪って少ないし」

「ちょっと待て、お前の友達って妖怪か?」

「そうだよ、鼠の妖怪。人間と友達になんて、僕が姿を人に視せながら校内を走り回ったらりっちゃん怒るでしょ」

「まあ、そうだけど。よく分かっているな」

「ほらー、雪門ゆきかどお兄さんりっちゃんひどい」


 僕は雪門ゆきかどの方にゴロっと転がって雪門ゆきかどの太ももに甘えるように顔をうずめれば、雪門ゆきかどは「よしよし」と僕の耳元を慣れた様子で撫でた。転がって移動したのはただの怠惰だ。

 雪門ゆきかどはだいぶ僕を撫でるのに慣れたと思う。嬉しいね。


雪門ゆきかど兄さん、そいつなんか気にしなくていいよ」

「モフフ、俺が代わりに撫でてやるからさ」

「狐、勝手に俺の言葉を作るな」

「言葉じゃないし。りっちゃんの心の声だし」

「そんなこと一ミリだって思ったことない」


 まったく、本当にりっちゃんは早く素直になればいいのに。

 そうすれば僕はりっちゃんを甘やかされてあげるのに。何言ってるか意味が分からない?うん、わざと。せいぜい僕を思って悩んでください。


 そんな感じに僕とりっちゃんが言い合っていると上から声を押し殺す笑い声が聞こえた。

 それに僕は片耳をピクッと上げて声の元である雪門ゆきかどを見上げた。

 雪門ゆきかどは手を口に当てて微笑ましそうに僕たちを見ている。


「二人は、とても仲良くなったね」

「仲良くなってない」

「仲良しこよしだよ!」


 僕とりっちゃんが揃って反対のことを言えば、雪門ゆきかどは面白かったらしく。今度は声を抑えずに笑う。


「本当に、ふふっ、仲が良い」

「兄さん、違うって」

「そうかな?それならそういうことにしておくよ」

「兄さん…」


 雪門ゆきかどはりっちゃんをからかうように笑顔でそう言う。

 雪門ゆきかどの言葉にりっちゃんは困った顔をしている。


雪門ゆきかどお兄さんとりっちゃんも仲良しこよしだね」

「うん、僕らはとても仲が良い兄弟だよ」

「兄さん」

「あれ?違うのかな?」


 咎めるようなりっちゃんに、雪門ゆきかどは首を傾げて悲しそうな声でりっちゃんに口を抑えて尋ねるけど。

 僕の位置からは口の端が上がっているのが見えるからこれはわざとだ。

 よく見ると肩も少し震えているし。


「ち、違わないけど。あまりからかわないでくれ。雪門ゆきかど兄さん」

「からかっていないよ。三門みかどが僕をどう思っているか聞きたかったから、ついね」

「…別に、兄さんのことは良い兄だと思っているし。尊敬もしているよ」

「そう?ふふっ、照れてしまうね。僕も三門ゆきかどのことは頑張り屋さんの大切な弟だと思っているよ」


 二人とも少しだけ照れた様子で顔を染めている。りっちゃんは恥ずかしそうで、雪門ゆきかどは嬉しそうだ。

 本当に二人は仲がいいね。


 それにしても、…兄弟か。


 僕には兄弟はもういないけど。少しだけ小さかった時の記憶がある。

 雨の中、木の下でくっついて雨宿りをしたり。虫を一緒に追いかけたり。お母さんにみんなで甘えたり。

 兄弟って、気にくわないこともあったけど。いてくれて良かったと思う。


「あれ?モフフくんどうかしたの」


 思い出して遠くを見ていれば雪門ゆきかどは僕の変化に気が付いたらしく、声をかけてくれる。

 りっちゃんも僕に優しくないくせに、どこか心配そうに黙って僕を視ていて。

 なんだろう、心がぎゅうっとする。


「ううん。何でもないよ。仲良しだなあって。ちょっと嫉妬しちゃうし。僕も二人の兄弟になりたいな」

「無理だろ」

三門みかど。いいじゃないか。僕はモフフくんが兄弟になってくれるのは嬉しいと思うよ」


 雪門ゆきかどは優しく言って僕の頭を撫でてくれる。

 嘘でも嬉しくて僕は目を細める。

 兄弟になれたら素敵だな。

 二人の兄弟。そうしたら、


「じゃあ年齢順で僕が一番上だね。弟たち!」

「誰がお前の弟になるか」

「ふふっ、お兄さんは譲りたくないな」


 りっちゃんは眉を寄せて、雪門ゆきかどは笑顔で、モフフお姉さまができることを拒否した。

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