狐ぼんじゅーる編19
りっちゃんの家に来ての初めての休日。りっちゃんは朝から友達と遊びに行った。
お母さんもママ友の元へ行って、雪門も塾でいない。
ただ雪門は今日は昼に帰って来るらしいから、それまで僕は1人だ。
みんなリア充なのね。なんか僕寂しい子じゃないか。実際寂しいけど。
よし、後で遙香の家の住所聞いておこ。本当は知っているけど、遊びに行く許可をもらうついでに。
僕は前足を握り決意を固くする。
…寂しい。
「やっぱりりっちゃんについていけば良かったな」
思わず口に出してしまったけど、空気の読める狐である僕はりっちゃんとお友達の邪魔なんてできない。どうせ人と一緒にいるりっちゃんは僕を無視するし。
だからやってきました。一人…一匹、山に。
りっちゃんの家から山二つ分離れた山に来ました。
この説明、なんか距離が分かりづらいね。
りっちゃんの家から、大狐の姿で20分ほどの距離にある山にきました。
どう、分かりやすくなった?うん、分かりづらいね。寂しいあまりむしゃくしゃしてやった。
まあ、つまり僕はそこそこ離れた山奥に来た。
理由は狩りをするため。僕は人間のような食事はいらないけど、たまには妖力を他の異形を食べて補充する。
だから、こうやって異形を探しに山に狩りに来たのだ。
山を子狐の姿で湿った土を踏みしめ気配を消しながら歩いているとさっそく僕は獲物を見つけた。
ダチョウのような形の、僕の大狐モード時の背丈ほどある大きな鳥だ。体は黒と紫のペンキを被ったような色をしていて目が出目金のようにギョロギョロして大きい。
この妖怪は時々体が揺らぎ姿を保ててはいない。まだ妖怪としては生まれたてで不完全なのだろう。
僕はそれに子狐のまま近づいて、杉の木の間からこっそりと様子を窺う。相手は気づかずに虫でも探しているのか地面を突っついている。
僕は死角となる背後に回り、そして大狐に変化して隙をみて獲物に大鳥に襲いかかった。
獲物は大狐になった僕に気が付いて大きな足で僕を蹴り上げようとするけど、その足を僕は容赦なく鋭い牙で噛み切った。存在を保てていない妖怪なので柔い。
それにより獲物はバランスを失い倒れたので、僕は倒れてひるんだ獲物の喉元に噛みついた。大鳥は大きくクチバシを開け鳴き声をあげようとするけど喉を噛み付かれているため声が出ない。
喉を噛まれてもじたばたと羽や足を動かしている。けど、前足でも体を押さえつけて動けないようにしているとだんだんと力が抜けて行き大人しくなったところで僕は鳥を捕食した。
味とかはべつにないけど、お腹が満たされる心地はある。
食べると言ってもムシャムシャ肉を食べるわけじゃなくて、吸い込むって感じだ。妖怪っていうのは見た目は生き物だけど妖力の塊だからそれ自体を摂取することが妖怪の食事だ。
大鳥を食べ終わってからもう一匹食べようかなと、僕は顔をあげる。そのためにあまり鳴き声を上げさせないで殺したわけだし。
次の獲物を狩るために気配を探ろうと集中しようとした。
すると。
まるでそのタイミングを見計らったようにザワっと、思わず毛を逆立ててしまう気配を感じた。
これは、……強い妖怪の気配だ。
おそらくは僕と同程度、かそれ以上か。僕ほどの妖怪なんて珍しい。
多分僕は今、気配を消しているから相手はこちらの気配には気が付いていないだろう。動く様子はない。
僕はこっそりと誰だか確かめるためにその妖怪の元に近づいた。
「ちゅっ」
「あっ」
近づいたものの、僕は強い妖怪に気を取られていたせいで、足元が疎かになっていた。
鳴き声に気が付いて下を見れば僕の足元に鼠の妖怪がいた。油断してた。
その鼠が鳴いたせいで僕に気が付いたんだろう。探していた妖怪の気配が消えてしまった。
気配を探る。…逃げたようだ。
まったく、だから弱い妖怪は面倒くさい。気配を消せる訳でもないのに妖力が微弱なせいで気配を察しにくいから。
僕が見下ろすと鼠はさっさと逃げて行った。
けど、誰だったんだろう。僕は妖気の強さは感じられても種類や数までは分からない。集中すれば少しは分かるけど。そうしている間に相手に察せられたり、逃げられたりする可能性もあるから難しい。
敵になるような異形だとしても僕に戦いを挑んで来ないで逃げるモノ。うーん。
考えても分からないから考えるのを諦めた。




