狐ぼんじゅーる編18
帰り道も僕がりっちゃんを背中に乗せて山を降りた。やっぱり石段って面倒だしね。
りっちゃんは帰りは少し顕著したけど、今は山修行って訳でもないし最終的には僕に乗るのに頷いた。
何なら家まで乗せていこうかと提案すると、りっちゃんは少しだけピクリと興味をそそられた仕草をしたけど断った。
なので僕たちは二人一緒に電車にガタゴトと揺られて家に帰宅した。
家に帰ってからお風呂に入ってりっちゃんと二人でこたつで寛いでいると、横でデコポンを剥いていたりっちゃんが僕に視線を下ろした。そういえばこたつにデコポンがあるのはりっちゃんが買ってきているかららしい。りっちゃんはデコポンが好きなようだ。
何か言いたそうに視つめてくるりっちゃんに、どうかしたのかとこたつから顔を出して僕は伏せをしたまま片方だけ耳をあげてりっちゃんを見る。りっちゃんは何やら真面目な表情をしている。
「狐、おまえ何か欲しいものはあるか?」
「結婚指輪」
「それは別の奴から貰え。真面目に答えろ。他に欲しいものは」
「突然どうしたのりっちゃん」
思わずふざけてしまったけど、突然そんな質問をされてもいきなり欲しいものなんて浮かばないし。
りっちゃんの意図が分からなかった。
「今日はなんだかんだお前に仕事を手伝って貰ったから。その分欲しいものがあるなら買ってやる。俺が貰うお金を折半でもいいけど」
「今日のってお給料出るんだ」
「バイトみたいなものだからな」
「そういえば仕事って言っていたしね」
てっきり家のお手伝いでただ働きなのかと思ってた。
いくらくらいもらえるんだろう。興味はそこまでないから聞かないけど。
でも、くれるって言っても。
「僕はお金はいらないなあ。いいよ、ただりっちゃんと一緒に出かけたかっただけだし」
「けどお前の分も俺が貰うのはすっきりしないから。何かないのか」
「僕の分ってほど僕は何もしていないよ。でもせっかく貰えるなら、何かかあ」
せっかくなので考えてみた。
何かって言っても食べ物はいらないし、住むところもあるし、着るものはいらないし。衣食住に不自由していない。
「じゃあ、りっちゃん。僕のこと撫でて!」
「はあ?」
「『今日はがんばったな、モフフ偉いぞ』って言葉も添えてね。僕はそれがいい」
まだりっちゃんにちゃんと撫で撫でされたことないし。僕にとったら一番のご褒美だ。
りっちゃんは何か言いたそうに口を開けたけど。何か言うのをやめて、ゆっくりと僕の頭に手のひらを落とした。
「今日はありがとうな、モフフ」
りっちゃんはいつもの乱暴な所作と違い僕の頭を壊れ物でも扱うように優しい手つきで撫でた。僕は思わず喉を鳴らす。
僕の指定した言葉とは違ったけど、とても満足だ。
りっちゃんと一緒に出掛けたのは楽しかったし、ご褒美も貰えて。
行って良かった。




