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狐ぼんじゅーる編13

 朝6時頃にベッドの上で目を覚ますとりっちゃんはすでに黒のジャージに着替えていた。頭には白いタオルを巻いて後ろでぎゅっと縛っている。

 うん、りっちゃんがやると似合っているよ。少なくとも女の制服よりは似合っている。

 

「何でりっちゃんタオル頭に巻いてるの。ランニングに意味あるのそれ」

「今日はまず庭仕事をするから」

「庭仕事?」

「裏の竹林ちくりんのタケノコを採りに行く」


 りっちゃんの家の裏側は竹林だ。結構範囲も広いため、タケノコの取りがいがありそう。


「お前も来るか?」


 一応りっちゃんは僕に聞いて来たので僕は「行く!」と答えた。予想外の答えだったらしくりっちゃんは驚いた表情をした。


「本当に来るのか」

「りっちゃん1人は可哀想だからね」

「別に1人でも可哀想じゃない。それにお前は昨日のランニングは付いて来なかっただろ」

「え?りっちゃん、ランニングついて来て欲しかったの。それなら僕「付いて来なくていい」」


 皆まで言わせずりっちゃんは否定した。全くりっちゃんの恥ずかしがり屋さんめ。タケノコ採りとか楽しそうだし。



 僕はりっちゃんについて行った。

 竹林は青々と茂り、竹の間から吹き込む風は冷え冷えとしていた。まだ朝は寒い。

 けど、竹林は不思議と神聖な雰囲気を持っている。たぶん、朝日に照らされて幹がキラキラと光っているからだろう。昔の人が竹の中にかぐや姫がいると信じても不思議じゃないね。僕は知らないけど、そういう異形もいるかもだし。

 りっちゃんは家の物置小屋からシャベルとハンドスコップを持ってきた。

 僕はタケノコ採りは初めてだ。楽しみで僕は尻尾を振る。


「僕もやる!」

「いや、シャベルを使うからお前じゃ無理だろ。少し頭の出ているくらいの竹を見つけたら教えてくれ」


 りっちゃんは首を横に振って拒否した。ここまで来てやらせてくれないとか。

 というか、シャベルを使えないのなら人型になればいいじゃない。いや、別に妖怪の僕には他にも方法はあるけどせっかくなら人としてやってみたいな。

 僕はまたりっちゃんと同級生くらいの女の子に変化した。今日は赤白の巫女服姿だ。

 別に神社だからと様式を合わせたわけではなく、僕の人間になる時のスタンダードな衣装だ。僕の可愛さが引き立つでしょ。

 人間に化けられる雌の妖弧は巫女姿になる弧が多いし。いや、会合で妖狐はとある神社に集まるからそれに合わせてかもしれないけど。そうなると様式を合わせたで合っているのか。

 まあ、今はこの話はどうでもいいね。


「これなら僕もシャベル使えるよ。タケノコ採りやっても良いよね、りっちゃん」


 僕はもし僕に今尻尾があったならフリフリしていたくらいうきうきしてりっちゃんに聞いた。

 ちなみに僕はみんなに大人気な半獣型の尻尾、耳付きにもなれるよ。顔面だけ人間の人面狐じんめんこにもなれるよ。必要ないからならないけど。

 人型のときに獣の耳とか尻尾あっても無駄じゃん。別に能力が変わる訳でもないし。人を脅かす時くらいしか役に立たないよ。九尾の狐の姿も尻尾九本あっても邪魔だしね。

 僕が尋ねるとりっちゃんは何故か額に手をやって前髪をかき上げると、なんとも言えない視線を僕にやった。


「あのさ、お前は女…めすなんだよな」

「おうよ。生まれて死んでからもずっと僕は雌だよ」

「雌か」


 ふむ、この様子。

 どうやら、りっちゃんはおすが希望だったらしい。


「りっちゃんが雄の方が良いなら雄になるけど」

「いや、いい。タケノコさっさと採るぞ」


 素早く言い切ると声をかけておきながらりっちゃんは僕をおいて竹林の中に早足で行くから、僕は慌ててりっちゃんを追いかけた。


 僕たちは一緒にタケノコを探す。


「りっちゃん、このタケノコどう?」

「大き過ぎる」

「大きい方がいっぱい食べられるじゃん」

「大きいと固いから食べられないんだよ。地面から頭が少しだけ出たのがいい」

「へぇー」


 まあ、大きいものが良いとも限らないよね。異形の魂だって大きい獲物の魂が美味しいとは限らないし。


「これは?」

「ああ、それなら良いかもな」


 頭の本当に先っぽしか出ていないタケノコをりっちゃんに指差して聞くと、今度はりっちゃんも頷いてくれた。


「それでそれで。次はどうするの?」

「次は、周りの土を少し掘る」


 りっちゃんは持っていたハンドスコップを1つ貸してくれて「タケノコを傷つけないように気をつけろ」と手本を見せるようにハンドスコップでタケノコの周りの土を掘った。

 僕もそれを見てハンドスコップでりっちゃんの反対側を真似して掘る。

 思ったよりも柔らかい土を掘っていくと、タケノコの下の部分が綺麗に途切れて根っこのような部分が見えてきた。


「よし、後は掘り出すから少し離れてろ」

「僕もやりたい」

「次からな。まずは俺がやって見せる」


 りっちゃんはタケノコの横の地面へとシャベルを差すと、一度シャベルの足をかける金属部分に乗って自分の体重を使い深く土の中に入れてから、シャベルを横に倒してタケノコの下にシャベルを突き入れた。

 するとタケノコが見事綺麗に身が切れることなく掘り出せた。手馴れている。


「こんな感じでやるから、次からはお前もやってみろ」

「うん!やってみる」


 りっちゃんより上手に採ってやろう。

 僕は満面の笑みでりっちゃんへ返事をした。



 タケノコはりっちゃんに負けず劣らず上手に採れた。僕たちは全部で五本のタケノコを採った。

 五本採ってくるようにお母さんから頼まれていたらしい。三本は家で食べて、二本は人にあげるらしい。


「僕上手に採れたでしょ。えらいでしょ」

「ああ、偉い偉い」


 りっちゃんもおざなりに僕を褒めてくれた。

 りっちゃんはシャベルとかの道具、僕はタケノコを五本持ってまず家の物置小屋へ道具を片付けに向かった。

 僕がタケノコを全部持つと言った時はりっちゃんは心配そうだったけど。タケノコ五本くらい妖怪の僕には楽ちんだ。鬼とかデイダラボッチなどの肉体派でなくとも妖怪は人間に比べて力持ちが多いからね。

 なんならりっちゃんをお姫様抱っこで抱えることだって僕にはできるもん。やったら絶対怒るからやらないけど。


 りっちゃんは物置小屋へ道具を返した後はタケノコを全部持ってくれたので、僕は子狐に戻った。

 りっちゃんが持ってくれると言ったとき「僕も半分持つ」と僕は言ったけど、「おまえに持たせるのは心配だからいい」と断られた。

 ……もしかしたらこれは可愛い僕への気遣いだろうか。りっちゃんたら素直じゃないね。

 事実はどうあれ、とりあえずプラスに考えておく。


 家に戻ってからキッチンにいたお母さんにりっちゃんが取ってきたタケノコを手渡した。

 りっちゃんはその際に僕も手伝ったと伝えて手柄を独り占めしないことを忘れない。

 するとお母さんは「モフフさんもありがとうね」と頭を撫でてくれた。

 タケノコ採り楽しいね!


 その後はりっちゃんは学校に行くまであまり時間はないけど走りに行った。できるなら走っておかないと気持ちが悪いそうだ。

 一応ランニングに来るかとりっちゃんに聞かれたけど僕は断った。その代わりにお母さんから撫でられるために何か仕事はないかと聞いて、雑巾がけを手伝うことにした。

 廊下を子狐のまま前足で雑巾を押さえてスーと走って掃除していると、現れた雪門ゆきかどに偉いねと頭を撫でられた。

 お母さんに撫でられたいためにやっていたけど、棚からぼた餅だ。これからは僕もお手伝いをさせてもらおうと思った。


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