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狐ぼんじゅーる編12

 りっちゃんの部屋に行くと僕の寝床は昨日とブランケットが変わっていた。今日は濃い茶色だ。りっちゃんが用意してくれたのだろうか。

 僕は用意された寝床のクッションに登ってクッションの弾力を足でフミフミして楽しんだ後、りっちゃんのベッドへと登ってベッドに敷かれている太陽の匂いがする布団の中にスイっと潜った。

 ベッドに登ったらだめだと言われていたような気がするけど、たぶん気のせいな気がする。

 …きっとこんなことをするからりっちゃんに好かれないのだろうけど。やろうとすればできるのだろうけど。真面目でいい子を演じても疲れるだけだし。

 僕は結構りっちゃんのことが好きだから好かれたい人に演じた僕を好きだと思われても寂しい。


 しばらくの間ベッドの中に埋まっていると、部屋の扉が開いたので僕は布団から顔だけを出して扉の方を見る。

 音で察していたけどやっぱり戻って来たのはりっちゃんだった。

 りっちゃんはパジャマ姿でベッドの上にいる僕を視ると眉をよせた。『なんでそこにいる』と顔に書いてある。

 だから僕はりっちゃんを見つめながら敷き布団を前足でポムポムと叩いて「来いよ」っと声を普段より低くしてハードボイルドな感じで言った。

 するとりっちゃんはこちらへズカズカと歩いてきて、ベッドの上にあった枕を掴み僕の真上まで持ち上げ、それで僕の頭はボフリと潰された。

 羽毛枕なため痛くはない。そして僕は妖怪だから呼吸をしなくても大丈夫なので苦しくもない。

 けど僕は手足をじたばたしてりっちゃんに枕を離してと抗議する。


 しばらくすると枕は離れた。


「自分の寝床にいろと言っただろ。お前はあの寝床に何か不満があるのか」

「寝床にはないけど。フカフカのクッションにふわふわのブランケットだし。いいとは思うよ。でも、何度も言ってるけど僕はりっちゃんと寝たい」

「どうしてそんなに俺と寝たいんだよ。俺の寝首を掻くつもりか?」

「そんなことしたら僕は焼き狐になっちゃうじゃん。しないもん」


 結界が発動して死ぬようなことわざわざしないし。それに僕は雪門ゆきかどと昨日一緒に寝た時も何もしてないじゃん。

 そもそもりっちゃんを狙っているなら賢い僕は少なくとも家の外でやるよ。


「なにもしないって信用できるか」

「実際に何もしてないし。りっちゃんだって知ってるでしょ僕が人一人殺したことないの」


 異形は生きた人を殺すと穢れる。堕ちるのだ。そして多くが黒に染まり狂う。だから食べたいと思ってもみんな人を食べることを我慢する。

 中には人を殺しても自身を維持できる妖怪だっているけどね。とくに死神とか神の称号を持っている妖怪は影響を受けなかったりする。それでも気を読むと殺したことがあるかどうか簡単に分かる。そもそも僕はただの妖狐で、神の称号は持っていないし。

 だからりっちゃんほどの能力の持ち主なら分かるはずだ。


「それは、これからもそうとは限らないだろ」

「りっちゃんかたくな。まあ気持ち分かるけど」

「分かるのかよ」

「分かるよ。僕だっていつもゴロゴロして過ごしてきたわけじゃないんだからね。異形を信用できない気持ちくらい分かるよ。でも僕はりっちゃんを襲ったりしないし。りっちゃんのこと好きだもん」

「……」


 どちらも譲らずにりっちゃんとじっと見合うと、りっちゃんは少しして諦めたように息を吐いた。


「…まあ、いい。とりあえず俺は今から学校の勉強をするから静かにしてろよ」

「はーい」


 りっちゃんは諦めたのか、それともさっさと勉強を済ませたかったのか。

 ベッドの反対側にある机に向かうと僕に背中を向けて腰を下ろし、学校鞄から教科書とかを取り出して勉強をはじめた。

 りっちゃんは真面目である。なんか一緒に過ごしていていつも運動や家業や勉強ばかりしていたけと、年頃なのにもっと友達と遊んだりしていないのかな。真面目な子はこれが普通なのかな。

 学校での様子を見る限り、りっちゃんはぼっちではなくむしろ友達は多いみたいだけど。


 僕はりっちゃんの後ろ姿を布団から顔を出して静かに見守る。

 遙香はるかもだけど。みんな、ちゃんとやることやって頑張っているね。

 それに比べて僕ってめっちゃぐーたらしているように見えるな。

 別に僕はぐーたらしている訳じゃないんだよ。僕がやる気出す方が迷惑だと思うから控えているだけだよ。あー、眠い。

 りっちゃんはもう何も言ってこないからとりあえずベッドで寝てもいいのかな。駄目だったらまたベッドから落とすだろうし。寝ちゃおう。

 りっちゃんがカリカリとペンの音を奏でながら勉強を頑張っている中、僕は眠ることにした。


 寝ていると布ずれの音で僕は目を覚ました。

 けど、目は開けないでいる。

 電気が消されているのでりっちゃんがどうやら勉強が終わり寝ようとしているらしい。

 僕はまたクッションに落とされるのではとドキドキしていると、そんなことはなく、りっちゃんは何も言わずに布団に入ってきた。

 そしてベッドのど真ん中で寝ていた僕をベッドが横付けされている壁側に押しやると、僕とは反対を向いてそのまま寝ようとする。


「りっちゃん、おやすみ」


 僕がりっちゃんに声をかけると。りっちゃんは黙っていたけど、しばらくしてから小さい声で「おやすみ」と聞こえてきた。


 今日の夢見は良さそうだ。


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