鬼教官の指導
私、天木ルミが一番困っていることは母の秘書に二時間たって一発も入れられないことである。
「おや、ルミ様集中していただかなくてはケガをしますよ」
そういって金髪の美形男子は私に回し蹴りをいれる。金剛でガードしているはずなのに蹴られた位置から3mも飛ばされた。すぐに体勢を立て直し間合いを詰めて右手に力をこめる。
「これなら!金剛系爆砕拳」
「そんな大振りではあたりませんよ。それに、左脇ががら空きです」
左脇に強烈な一発が入ってそのままゴムボールのようにバウンドしながら飛ばされる。体勢を立て直そうにもすでに距離を詰められていて起き上がる時間もない。私はとっさにローリングして回避した。
「その判断はお見事です。が、もう少しまわりをみたほうがいいかと」
「えっ」と私が反応したのもつかの間同じように飛ばされてきたさやが私とぶつかり二人とも吹っ飛ばされる。
「さっきも言ったけど、もう少し工夫がないと僕には一発も当てられないよ。ほらほら、早く立たないともう一発いくよ」
「奇遇ですね。めずらしくアンさんと同意見です。ルミ様、馬鹿ではないのですからいい加減対処法を考えていただかないと一生かかっても年度末の大会で勝てませんよ」
すごく腹が立つがまとをえているので言い返せない。対処法と言ったってどうすればいいのだろう。技の威力を出すために技事態をコンパクトにして戦うことは戦うことは今の私には無理だ。それに二か月たってもいまだに私の体は重く動きづらい。
「なにをぼけっとしているのですか。まだ戦いの途中ですよ」
考える時間もあんまりもらえないらしい。ほかに何か手はないのだろうか。丸爺の攻撃をさばきながら突破口を探し続ける。
ふと、一つだけ気になったことがある。それは、さやの身体能力が急に上がったことだ。私はずっと実戦練習を繰り返していたから身体能力が上がったのだと思っていた。でも、さやが実戦練習を始めたのはここ一週間の話でいくらセンスがあるといっても成長が早すぎる。
ならなぜ、そんなに変わった・・・・。そうか、金剛は鎧を作る異能じゃなくて身体を強化する異能だったのね!それなら、急にさやの動きがよくなったのも納得できる。
今の私の金剛は皮膚を分厚くしただけ、つまり余分な贅肉がたっぷりついているのと同じなんだ。だから、体が重くて動きづらい。それなら、もっと薄くてもいいはずだ。何もない時は必要最低限の薄さで技と防御の時にもっと分厚くすれば無駄も減って効率よく戦える。
「これなら!」
「なるほど、必要最低限でスピードを上げましたか。でもそれでは、私に一発も当てられませんがよろしいのですか?」
丸爺は連続でパンチを打つ。それを何とか流しながら、私もできる限りの反撃をする。それにさっきよりも薄くなった分普通のパンチですら痛い。その代りに体は前と比べ物にならないほど軽い。これならまだやりようはある。
「金剛系・・・」
「反省が足りないですね。もう一回吹っ飛びながら考えてください」
左手の大振りに対して丸爺は左脇をすかさずねらう。さっきとまったく同じ展開だ。
ただ唯一違うことはすでに左脇をガードしていることだ。これによって丸爺の左脇が同じように開いている。
「もう十分に反省したわ。だからこれでおわり!金剛系爆砕拳!!」
強烈な一撃が見事左脇にヒットして丸爺が吹き飛ばされる。ガードされることもなく確かに当たった感触があった。
しかし、吹き飛ばされたほうを見ると平然と立っている金髪の男性がいた。まさか当たっていなかったとは、当たった感触もあったというのに・・・。あまりのことに呆然とする。
「安心してくださいルミ様。確かに一発入っていますのでルミ様の勝ちでございます。無傷なのは異能でそう見えるだけでございます。金剛を必要最低限の薄さに変え、声でフェイントをかけてくるとはお見事です」
「はあ、つかれたー」
うまく言って本当に良かった。無傷で立たれているときはどうしようかと思ったがこれでようやく一息つける。そう思うと急に力が抜けてへたり込んでしまった。
「
あっ、ちょうどそっちも終わったんだね。こっちも一発入れられたから休憩にしよう」
そういってさやを引きずりながらアンが歩いてきた。
さやも無事に済んでよかった。今日は少し早いけどもう切り上げてもらえるだろう。
「そうそう、休憩だから少し休んだらまた始めるよ」
まだ続けるのか・・・。誰か、いや誰でもいいから助けて。この鬼教官二人を止めてくれ。




