才能なんて関係ない
―二か月前―
「気合が入ったみたいでなによりだよ。じゃあ、ちょっとやり方を変えてみようか。とりあえず雑談から始めよう。」
「ざつ……だんですか…。」
「そう、やり方を変えるにしても君のことをもっとよく知らないとどうしようもないからね。そうだなあ、将来どうなりたいとかを教えてよ。」
確かに、一理あると思うが将来の夢と今後の修行方針が大きく変わるとは思えない。ただ、せっかく私に合った方法を探してもらえるというのならこの機会を逃すわけにはいかない。少し考えてからわたしは正直に答えた。
「救命に入ろうと思ってます。」
「なんで救命なの、安全な病院勤務じゃなくて。救命コースは生存率がほかの学生よりも低いのに。」
それは、今までずっと言われてきたことだ。救命コースは、他の医療系と同じように二年多く勉強しながら前線にも配置される。
これは救命が前線部隊と後方部隊の中間を走りまわることになるからだ。いち早く前線の負傷者を救助し後方に送り届ける、軽傷ならその場で手当てしすぐに送り出す。
その移動中に敵に遭遇した場合は自身で対処しなければならない。都市の存続を脅かすほどの事態が起これば学生が出動することがあり、実戦経験のない学生が多く命を落とす。たとえ学生でなくても多くの救命員が救命中に襲われて命を落とす。
だから、多くの人はこういう「誇り高い仕事だが、現状の体制で救命員を志すのは自殺と変わらない。」と。
「そんなの関係ありません。わたしは、救命員になってできるだけ前線の人の命を救うだけです」
「なるほどねー、同じセリフをルアの友達が言っていた気がするけどまあいいや。それなら、なおさら金剛じゃないほうがいい」
「なぜですか」
わたしは、アンさんの言ったことに納得できなかった。いま、わたしに必要なのは戦って生き残れる強さである。
「なぜって、救命の主な死亡原因は異能の使用過多での死亡か使用過多で戦闘継続不能によって殺されるかのどっちかだよ」
「能力の使用過多?」
初めて聞く言葉だ。救命医学関連の本を読んで重要な病気やけがは覚えているはずだけど・・・。
「まあ、今はクラス分けがしっかりしてからはほとんどなくなったからね。知らないのも無理はないよ。でも、異能を使いすぎれば人は死ぬそれだけは覚えておいて損はないと思うよ。」
「まさか、クラス分けにそんな意味があったなんて・・・・」
知らなかった。ただ、実力順に割り振られただけでそれが生存率に直結するなんて考えたこともなかった。その基準で組まれているクラス分けなら、今していることに意味はあるのだろうか。
その質問に答えるようにアンさんは話をつづけた。
「ただ、勘違いしないでほしいのは一番下のクラスだから才能がないって決まったわけじゃないってことだよ。実際才能がなかったとしてもあると思って努力するとこから始めないと何もできないからね」
わたしは感心してしまって何も言い返せない。たしかに、才能がなかったとしても努力しなければ始まらない。だから自分を信じよう、そしてそれと同じぐらいアンさんを信じよう。
「はい。じゃあ、まず何から始めればいいですか師匠」
わたしは、この人に一生ついていきたい。




