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VRMMOを始めたら各階層のボス、果てはラスボスの役割までさせられた件

作者: ふんにゃり

 ピーンポーン。


 春うららかなある日の午後。宅配便ですという声とともに届いたのは先週会社からプレイするように指示をされた最新式VRマシンとそのソフト。

 ソフトの名前は【Eternal Romantic online】略して……いやあえて言わなくてもいいな。

 そんなゲームタイトルにもかかわらず、このゲームに期待しているプレイヤーは多い。前情報からは古代ローマを舞台にしていたり、空飛ぶ機械に乗っての空中戦をしていたり、NPCといわれるゲーム内の住人と協力して戦争を行えたりと出来ることが人気の理由である。



 ここで自己紹介といこうか。俺は結城運命ゆうきさだめ、24歳独身で【Eternal Romantic online】などのゲームを開発した会社に勤務している。

 俺は幼少のころから剣道、柔道、弓道などの武芸に加え、礼儀作法といった様々な技術を叩き込まれる家で育った。

 成人してからはそういったものとはおさらばして自由に生きてるけどな。今だって礼儀作法習ったとか思えない口調だろ?

 後は物覚えがいいこともあるけどコレは教育で培ったものじゃなくて俺自身の個性だろうな。



 それを入社時の面接で言ったのが不幸?の始まりで、このゲームの初期開発部分に関わることになった。

 そこでは基本動作などのモーションなどのテスターをした位で実際のところこのゲームをプレイしたことはない。なにせ開発陣が同じ会社内の中でも誰が関わっているかなどを徹底的に秘密にさせたからだ。

 勿論俺も開発に関わっていない(と思われる)同期の友人にも話すなと厳命されている。




 俺はすぐに届いた機械のセッティングを行い、会社にメッセージを送ると数分後に登録時に打ち込むパスワードなどが返信されてきた。

 この打ち込むパスワードは初回ロットとかに特典アイテムが付いている例のあれだ。

 俺もそういう類のものだろうと特に考えることなく、起動したゲームにパスワードを打ち込み、ヘルメット式のだいぶ装置をかぶりベッドに横になった。



 「【Eternal Romantic online】へようこそ。お帰りなさいませ開発者、披検ナンバー04様」


 機械的な音声とともにタイトルロゴが流れて前情報で流れていたような映像が流れる。まあ見飽きているのでスキップしたけどな。

 披検NOとかそういうのは気にしないでくれ。どう考えても打ち込んだパスワードから認識されたのは明白だろ?てか俺って4番目に開発に関わっていたんだな。


 音声が流れていき、キャラ作成画面に移行。ここでは名前と種族、職業やスキルなどを決めることになる……のだが。


 「えっと、とりあえず名前はフェイトでいいか」


 よさそうな名前が思い浮かばなかったので自分の名前を意味は同じだが言葉を変えて入力し、次の画面へ行くと予定にないことが起きた。


 「それではゲームを始めます。チュートリアルは始まりの場所で受けることが出来ます」


 こうして俺は始まりの場所へ送られることになったのである。あれ?種族とスキルは?

 ゲームをやらされるとわかり、俺なりに前情報から推測していた楽しめそうなスキル構成とか考えてたのに、なぜだぁぁ!



 目を開けると石造りの部屋の中にポツンと立つ俺がいた。なんかやけに視点が高いんだが?俺の身長は165センチ。なのに見えてる足元までの距離は2メートルはありそうだ。


 「どういうことだ?あっ、そうだステータス確認をしてみればわかるか」


 そこで見たものは俺に驚きを与えた。くそぅ、コレが目的だったのか会社めぇ!



 名前:フェイト(他プレイヤーからのスキルでは表示されません)

 種族:ストーンゴーレム(第一層階層ボス)

 HP:25000

 MP:2000

 物攻:900

 物防:1500

 魔攻:200

 魔防:400

 速度:300


 スキル:【豪腕なる一撃1】【堅牢なる体1】【岩石投げ1】【ロックカット1】


 特性:【死の強化1】【斬撃耐性1】


 どうやらウチの会社の狙いは関係した社員にボスの役割をさせることらしい。ボスを人間にやらせることで、同じ手を通じないようにする目的でもあるんじゃないだろうか?

 まあ俺としては、一層のボスということで始めるプレイヤーが強くなればすぐにお役ごめんになるからありがたいんだけどな。

 ある程度ボスの役割を果たしたらそれらのデータを会社に申請して対応できるようにすればいいんだしな。

 それさえ終われば、一プレイヤーとしてゲームを始められるだろうし。


 んじゃ、俺の中で納得したところでスキルの確認だな。プレイヤーを相手にする以上、自分の能力もしっかり把握しておかないと、会社にサボっていると思われてしまう。



 【豪腕なる一撃1】:物攻があがる。レベルが上がればその分威力が増す。最大5。

 【堅牢なる体1】:物防があがる。レベルが上がればその分威力が増す。最大5。

 【岩石投げ1】:岩を精製し、対象に投げる。着弾した岩は破裂して周囲にダメージを与えることが可能。最大5.

 【ロックカット1】:物防をさげて速度を上げる。レベルが上がればその分効果が増す。最大5。

 【死の強化1】:倒されるたびに能力が上昇する。15回までは一律+100の強化16~20回目は10%増加する。最大強化回数20回。

 【斬撃耐性1】:剣や斧によるダメージ10%減衰させる。最大5。



 見事に脳筋ステータスだな。まあ種族がストーンゴーレムだから仕方ないけど。てか最低でも20回プレイヤーと戦闘しないといけないわけか。結構つらいけどデータを集めるという仕事のためだ仕方がない。


 ステータスの確認を終え、自分のいる場所を調べると石の迷宮十層と表示されていた。

 このままボスとしてのチュートリアルも受けるとしようか。


 詳しくは端折るが大体こんなもんだ。

 役割としてはプレイヤーパーティが来たらその相手をしデータを収集。ボスのステータスは基本高く設定されているので、そう簡単に負けるものではない。

 プレイヤーが来ない間は迷宮内の二つ下の八層までなら行動可能だが、プレイヤーが七層の中ボスを倒した時点で俺はボス部屋に戻される。


 となるとあれか、プレイする人数的な問題もあるし、八層までを探索できるのは始まってプレイヤーがここに来るまでの間ってわけだな。


 ボスのスキルに関しても数字が付いているところから見て使えば育つタイプなんだろうし、プレイヤーと戦う前にある程度強化しておいたほうがいいのかもしれない。

 というかそれ以外やることないし、それは仕方ないことだろう。




 それから時が流れ二週間。

 石の迷宮十層に一組目のパーティが訪れた。見た感じ前衛2後衛2支援2のバランスの取れた6人パーティだ。


 「おっ?ゴーレムじゃん。石の迷宮っていうからボスはこの辺だろうって予想はしてたけどな。こいつを倒したら二層だ。やるぞっ!」


 リーダーっぽい前衛が声をかけるとそれぞれが武器などを構える。

 おそらく良くあるパターンで前衛がボスの行動をおさえて魔法使いっぽい後衛が大火力を叩き込むっていう感じだろうな。定番の方法だが、普通のAI管理されているボスには効果が高いやり方だ。

 AI管理されていると前衛を無視してボスが攻撃することはめったにない。

 ボスの攻撃が後衛に向くとしたら体力の低い相手を狙うように設定されているか、後衛の攻撃でヘイトを稼ぎすぎたときくらいだ。


 まあ今回に限っては中の人が存在するボスだってことで対処法を考えてある。

 だけど、初対面のボスで開幕後衛を全滅させたりしたらクソゲーとか言う評価をされても困るから最初は相手の狙い通りに前衛を相手にし、稀に岩石を後衛のいる辺り(あえて当てたりはしない)に投げてビビらせる程度にした。まあ破片による範囲攻撃のダメージが当たるとそれだけで後衛は倒れるんだけどな。



 「な、何だよこのゴーレム。強すぎじゃね?」


 リーダーがぼやく。すでに戦闘開始して10分。俺の体力はまだ半分残っているのに対してプレイヤーパーティは前衛1後衛2の半壊状態になっているのだから。

 支援が二人いないのは俺の投げた岩が支援職のいるところに飛んでいってしまったんだ。

 でも狙ったわけじゃないんだぞ?岩を構えて投げるモーションをしたときにリーダーが俺のその腕に攻撃を加えたから狙いがずれたんだ。だから俺は悪くない!


 その後の彼らは支援がいなくなったことであっさりと全滅。


 ちょっといきなり張り切りすぎたかね?俺としても初めてのプレイヤー相手ってことでテンションが高すぎたのかもしれない。次からもうちょっと自重しよう……。



 そしてさらに1週間後。俺は初討伐された。そのときのプレイヤーパーティは前衛1に、俺が魔法に弱いという定番情報が出回っていたらしく魔法攻撃が出来るメンバー3人、あとは支援が2といったところ。

 さすがの俺も大火力を各方面から撃たれたら対応できんわ。あっという間に体力を削られロックカットするまもなく負けた。無念だ。だが次はそうは行かんぞ!


 その後一度死んだことで少しばかりステータスが上昇したこともあり、数度の防衛に成功した。

 魔法攻撃パーティが多いので開幕で岩を投げて数を減らしたら、ちょっと掲示板で噂になってたみたいだな。このことから同じ手段は通じないのかもしれないという憶測(まあ事実だけど)が流れた。



 2ヶ月経つころにはこのストーンゴーレムのステータスの強化も打ち止めだ。

 やっぱプレイヤーはあの手この手で俺の隙を突いてくる。防御無視のハンマーを装備してきた前衛4人パーティには秒殺されてしまったし。……ハンマーは打撃武器だからタダでさえ俺の弱点なのだよ。

 だからこういうパーティには開幕ロックカットで速度を上げて腕力で各個撃破する戦いを見せた。



 特性による最大強化を終えたので、俺は会社にデータを送りボスのAI化をしてもらった。

 コレで普通にゲームが出来ると喜んでいたところに来た次なる会社の指示は「あっ、次3層の怪鳥系のボス頼むわな」だったのだ。


 まもなくプレイヤーは二層をクリアするだろうとのこと。

 俺には怪鳥フェイトとしてのアバターを与えられ、能力の把握に努め、一層で戦ったことのあるプレイヤーに対応できるようにがんばれとのことだった。


 最初は不満だったが、この怪鳥系のボスで戦うのは非常に楽しかった。何せ空を飛べるんだぜ?おかげで最初から自重無くプレイヤーパーティを潰してしまったぜ。

 翼を剣の代わりにしてプレイヤーたちの乗る飛空挺を攻撃しておとしたり、いろいろやったなー。

 この怪鳥のボスはダンジョン固定のボスじゃなくてフィールド徘徊型のボス。まあある程度移動する経路は決まっているけどそれはAIが操作しているときだけ。

 俺が中に入っているときは3層の町の上だろうが気にせず飛行したものだ。そのたびにプレイヤーからボスだボスだ!と騒がれたけど。



 それから一年後、俺はグランドクエストで向かうことになるダンジョン最下層にいた。

 名前は魔神王フェイト。そうラスボスだ。


 まあグランドクエストだって言うだけでまだまだこのゲームにはお楽しみ要素があるからここまでストーリーを勧めているプレイヤーなんで微々たるもんだ。


 そんなことを考えながら玉座で待つ俺の元に30人からなるレイドパーティが突入してきた。

 そう俺はラスボスだけど、同時にレイドボスでもある。

 俺を倒したときのドロップアイテムが高性能らしく、それを狙ってくるプレイヤーがいるのだ。


 目の前にいるのは何度も俺に挑んできたことのある固定のレイドパーティ。

 勝ったり負けたりを繰り返し、実は会話も楽しんでいる関係でもある。

 このころになるとボスには中身があるときがあるという情報が流出していたのだ。


 俺としてもボスとしての仕事に飽きてたから俺がこの体を動かすときは戦闘前に会話をしているというわけ。


 「またお前達か……俺が復活するたびにくるのやめてくんね?他の情報あつまらねえからさ~」


 「おっ?今回は中身ありジャン。みんな今回のはヤバいから気をつけろよー!」


 「話聞けってw」


 「いいじゃんかよ。話したがりのボッチボスめ!中身ありで倒したらレアドロップ率高いし、今日も勝たしてもらうぜ!」


 「ボッチいうな!?俺はキレタぞ!お前達全員ぶったおしてやんよ!いつまでも同じ手が通じると思うなよ?」


 「やれるもんならやってみろーってんだ!」



 こうして俺たちの戦いは何度も繰り返される。プレイヤーとして冒険するより俺としてはこういうプレイ方法のがすきなのかもしれないとそう思った。

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