事件簿ファイル2-2:お嬢様、晩餐会までに願いを賭けて。
……食べられる紅玉?
この世にそんなモノが?
「梅干し?、薔薇、サクランボ……」
食べられるものをあげてみる。だが、答えは見えない。多分、……甘いモノ。
「バイト、ぼ~っとしていないで。さっさと手を動かす!」
「……すみません。」
店長の説教を受ける。俺は此処でアルバイトをしている。ちなみに力仕事で一月で給料が40万ぐらい。手取りは10万だけど。
(……あと少しで買える。零へのプレゼント。)
今日は深夜までバイトが入っている。色々なアルバイトを掛け持ちしているためだ。
(……晩餐会までに間に合いそうにないな。零、ごめん。)
*
「………ばか。」
零の口から汚い言葉がもれました。小さく呟いた言葉は他の客の楽しげなお喋りに掻き消され、自分と神様しか知らないのでした。
(……何で来てくれないの?)
会いたい、でも会いたくない。
会うのが怖い。好き。でも、会うと憂鬱になって…自分でも気持ちがわからない。
ー複雑に絡まり合った心の糸。私のこころをほどいて下さい。マリア様、どうかほどいて下さい。
(……誰か助けてよ。どうしたら、彼を素直に愛せるの?)
*
此処は……病院?嘘じゃない。昨日、何をしてこうなったのか思い出せない。
「晩餐会は……?」
「終わったわ。もう、怪我するなんて!」
(もしかして……)
「……心配した、かな?」
「あ、当たり前でしょ!あなたのせいでクリスマスは病院でデートじゃないの……責任取ってよね。」
やっぱり、心配を掛けてしまった。
怒らせたし、……怒った理由がわからないのだが。
「……あの答えって『サクランボ』かな?」
「もう、違うってば!この、鈍感男。」
結果、謎は迷宮入り。全治10ヶ月の怪我で迎えたクリスマスはあっという間に過ぎて行った。