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事件簿ファイル2:お嬢様が紅玉を盗まれました。
「私の紅玉は何処?」
「知らないよ?」
今日は前夜祭。憂鬱な気持ちと一緒に紅玉を隠して、彼を試したくなる。
でもね…本当は紅玉なんかじゃないの。本当は紅い、紅い、林檎飴。
「零、紅玉ってどんな?」
「丸くて、艷やかで、食べられるの。」
「紅玉が……食べられるの?」
「早く、探して来て。晩餐会までに!」
…最近、彼に愛されていない気がする。忙しいのか、かまってくれないし。それにやっと会えたと思ったら、デートは本屋ばっかり。正直、退屈なのだ。ああ、舟遊びがしたいわ!
(……私を愛しているなら謎を解いてみせて。謎が解けなかったときは、私やお父様の心に逆らっても彼と別れるわ。)
でも、多分。心に逆らうのは無理があるかもしれない。だから少し、彼が私が言の葉に仕掛けた罠や、忠告や、親切に気が付いて欲しいと零は願うのでした。