真理
西暦XXXX年
科学は限界に達していた。
自然の全てを解明したとされている。
『科学で解けぬ謎は無く、科学こそが全てで絶対である』そんな考え方が珍しくない世の中になっていた。
しかし、そこに異を唱える者が居た。
「どうですか?」
燃やされ、灰になっている紙くずを指しながら、アレックスが集まった者全員に尋ねる。
「これでも『ダメだ』というのですか?!」
今度は顔を上げ、声を荒げる。
すり鉢状のコロシアムのような講堂の席は超過満員である。その集まった全員が今回の発表の聴衆なのだ。
その人々に向かってアレックスは吼えていた。
ここは世界最高学術研究所最高学院、通称『学院』と呼ばれる所。
その名の通り、学術における世界最高の研究所であり、また、最高学院はその中でも最も権威のある場所である。
そんな所で発表するのは実に数百年ぶりの事であったので皆が集まったのだ。
しかし、この発表を聞いて人々はクスクスと嘲笑していた。
「あいつ、馬鹿なんじゃねぇの?」「世も末だな」「誰かあいつを止めてやれよ」「誰だよ、ここに猿を呼んだ奴」
こんな言葉が飛び交っていた。
それも仕方ない事かもしれない。
科学で全てを解き明かせるとされるこの時代に、科学で証明出来ない『魔法』がある、と発表したのだから。
「じゃあこれはどう説明するのですか?!」
アレックスがもう一度吼えた。
アレックスはこの場で、紙くずを何も使わずに燃やして見せたのだ。
明らかに非科学的である。人々は一瞬、ほんの一瞬だけ驚いたが、すぐに思い直した。
「どうせ手品だろ」そう思ったのだ。
「知らないね。手品か何かだろうが、同じ手品でもタネは千差万別という。君が教えてくれないと説明出来ないよ」
聴衆を代表してか、一番前に座っていた1人の年配の学者が応えた。
人々もそれに異議は無い様で、反対の声は挙がらなかった。
「だから!タネも仕掛けもないんですってば!」
「君がいくら言おうと構わんが、結局は科学で解明出来るのだよ?」
「だーかーらー!」
「いい加減にせんか、このキチガイが!」
遂に堪忍袋の尾が切れたのだろう。温厚そうな学者も、アレックスの言葉を遮って声を荒げた。
それに同調して、周りの学者からも罵声が聞こえ始めた。
「だったら、今ここで証明して下さいよ!」
「うっせえ!もう引っ込んでろ!」
「かーえーれ!かーえーれ!」
聴衆からは帰れコール始まり、瞬く間に最大音量となった。
「うっ、ううっ」
突然始まったこの口撃にアレックスは涙が出始めた。
アレックスは泣きながらゴミを片付け始めた。
涙を流しながら白い灰を片付けていると、席の方からゴミが投げ込まれた。
それを皮切りに次々とゴミが飛んで来た。
「これも頼むわ!」
声を殺して泣きながらも大量のゴミを片付けた。
そしてそのまま家へと帰って行った。
その道中もずっと罵詈雑言の嵐だった。
家に着いてからも、彼は誹謗中傷にあっていた。
マスコミが大々的に報道したのだ。
テレビでもネットでもラジオでも新聞でも近所の噂でも、彼はバカにされ続けた。
最初は彼も、この魔法を分かってくれると思っていた。
しかし1月経っても収まらない事態に彼は、遂に自殺した。
彼のこの発表は以後数千年間、教科書のトップを飾った。
しかし彼の手品を解いた者は何億年経とうとも、居なかった。
そして、それを皆気にしなかった。
Thank you for your time!
完璧だの客観的だのと言った物は、そのモノサシは自分で決めるのであって、結局は主観である。
こんな言葉をコンセプトに考えてみました。
構想時間は5分ぐらいです。それに中3野郎です。拙いかもしれません。すいません。
お願い
僕はばりばりの大阪人です。大阪弁で喋ります。気を付けていますが、もし、変な言葉だったり、大阪弁が出てたりしましたら、ご報告して頂きますと、とても助かります。その他ご意見ご感想、誤字脱字文法の誤りなどがございましたら、お気軽に申し下さい。
自分なりの解説
ここからは所謂いらない部分です。興味ない方は飛ばしてもらっても構いません。
この物語は、真理に達した科学で解けない物がある、という感じです。
真理に達したのに解けないっておかしくない?って感じです。
そしてそれは真理のおかしさを示しています。
そもそも真理というのは人間の主観によって定義されます。ならば、いくら真理を客観的と言おうと、それは主観の領域を越えられません。
例えば、この現象は、『こうこう、こういう理由で起こります』と、科学が完璧に解き明かしたとします。しかしそれは、見方からすると違う理由かもしれない。逆にそれだと不可能になるかもしれない。
つまり、本当の真理という物はないし、本当の完璧、完全もないという感じ。
だからこそ、真理でも解き明かせない物がある。
これはそういう話です。
以上です。相変わらず文章力ない僕ですね。すいません。
最後までご精読頂き、ありがとうございます。