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悪役(?)お嬢様は流されやすい。

悪役という名の、袋のネズミ

作者: 刹那零

『悪役は、難易度が高いようです。』の続編(?)です。

 要視点で話が進みます。

「はじめまして。しのみやみやび、です!」


 ……天使?

 いやいやいや、そんなわけはない。いくら俺が幼かろうと、そんなものが存在しないことくらい知ってるし。


 だが、どう見ても今喋ったモノは人間に見えない。

 先ほどは天使かと思ったが、羽や輪っかがないし……そうだ、コレはフランス人形か!

 確か、母様の収集部屋にコレと似たような(コレの方が可愛いけど)……でも、人形にしては大きいし、しかもさっき喋ってたな……


 俺が考えていると、目の前の人形(仮)は首をかしげて、更に口を開いた。


「あなたのおなまえは? おしえてくれる?」


 一応、知らない人に気軽に名乗るなって言われてるんだけど……

 まあ人形(仮)に名前を教えることくらい、特に問題はないだろう。

 ……母様、大丈夫だよね?


「……おれはさいじょうかなめだ」

「すてきななまえね! かなめってよんでもいい? わたくしのことは、みやびってよんでね!」


 嬉しそうに笑う人形――もとい“みやび”は……やっぱり、コレはにんげんじゃないな、うん。

 なんか、笑うと余計にきらきらしてる気がするし。



 ―――――――――――――――――――――――



 俺――斎条要の隣には今、フランス人形のごとき美少女――篠宮雅が寝ている。


 昨日は俺の誕生日だったので、俺が一番ほしかったモノを雅から貰……奪い取った。

 ……対外的には嘘も方便だが、さすがに内心でまで嘘はやめておこう。それに、俺は嘘は雅にしかつかないって決めてるし。


 ちなみにこの拘りは、雅だけが特別だということもあるが、ただの仕返しでもある。

 何故なら、初めて会ったときに俺が抱いた誤解は、その後1年は消えなかったから。


 ……ただの八つ当たり? 勿論自覚はあるが、別に雅が可愛いからいいんじゃないか?

 俺の一言に右往左往する雅は本当に可愛いから、部屋に閉じ込めたくなって困るんだよな(壊れた雅もそそるけど、俺としては壊れてない方が好きだから、実際に閉じ込めたりはしないけどな……多分)。他の奴らに見せたくないし、というか雅は俺のだろ?

 雅はああ見えて結構男が苦手(と言うか、かなりの男嫌い)だから野郎はあまり気にしなくても良かったが、世の中には女もいる。最近だと、特に青蘭紀伊とかいう女が邪魔だ。どうも雅は、俺とこの女をくっつけようと色々画策しているらしい(どれも面白いくらいに空回っているが)。


 ……それにしても、起き抜けにしては割と頭がちゃんと働いているらしい(俺は本来、朝が苦手だ)。別に朝が苦手ではないはずの雅はまだ眠っているが、これはまあ仕方ないだろう。諸々、全部俺のせいだが。


 でもな、考えてみてくれ。仮にも婚約者なのに「婚約を破棄する」とか言われて喜ぶのはどうなのか。

 結構腹が立ったから壁に押しつけたら目とか瞑ってるし、むしろキスしてくれって言ってるようなもんだろ? 酒に弱いのは知ってたから口移しで飲ませて酔わせた後、部屋まで連れてきて今にも眠りそうな雅に婚姻届を書かせるくらい(ちなみにその婚姻届は今朝一番で役所に出してきて貰ったので、雅はすでに俺のものだ)許されるだろ? 昨夜なら一応籍は入れる前だが据え膳は食わねば男じゃないしな。

 ……まあ別に成り行きでこうなったわけではなく、ただ計画通りにことが運んだだけなんだが。



「ん……」


 そうこうしているうちに目が覚めたらしい雅はかなり気怠そうで、俺としては色々そそられるわけだが、さすがに嫌われたくはない(嫌われたら壊すしかなくなるしな)から仕方ない。

 ふと見ると、顔を真っ赤にした雅が何か言いたそうに俺を見ている。何だ?


「……」

「……ああ、声でないのか?」


 ……何か言いたそうな顔が非常に可愛い。わざとじゃないよな?

 それが正解というわけではなさそうだが、とりあえずうなずく雅。……口移しにしたいが、それは後日にしよう。今日は話が進まなくなると面倒だ。

 雅は俺が手渡したコップから水を飲んでるし、まずは先手打っとくか。


「雅、今日から篠宮じゃなくて、斎条になったから」

「――!? え、ちょ、ちょっと待ってください!!」


 さすがだな、雅。唖然とした顔も可愛いなんて、世の中の女どもが嫉妬に狂うんじゃないか?


「昨日、婚姻届書いただろ? 覚えてないのか?」

「き、昨日って……わたくし、酔っ払っていたではないですか!!」

「ああ、やっぱり覚えてるんだ? まあ雅は御神酒程度でなかなかすごいことになるけど、記憶は飛ばないもんな、確か」

「しっかりわかってらっしゃるじゃないですか!!」

「当然だろ? こうなってんだから、わかってないわけないだろ」

「~~~っ!!」


 顔が真っ赤な雅は可愛い。可愛いんだが、つつくと話が進まないので、自重。……俺は割と意思が強いらしい。自分のことでも案外知らないもんだな。


「で、いつの間にか斎条になってたわけだが。元々婚約者だったし、家族その他の反対は一切ないとだけ言っておく」

「……そもそもその婚約自体、わたくしを人形だと思い込んだ要がわたくしを欲しがった、という理由で結ばれたものだったはずです。わたくしは正直なところ、あってないようなものと思っていたのですが……?」


 コレを言われると痛い。事実だからなあ。


「……まあ発端はそうだけど。俺が今まで雅を欲しがってたのは事実なんだけど?」

「だ、だから、それはコレクション的な意味なんじゃ「それ本気で言ってる?」……に、睨まないでください……」

「……ほんと、たまにわざとわかってない振りしてるのかと思うことがあるよ」

「……怒ってしまった?」

「いや、今更このくらいで怒ったりしない。けど、雅は俺の気持ち、本気でわからないのか?」


 雅が泣きそうになるが、俺は手加減しない。雅の気持ちくらい、俺が知らないとでも思ってるんだろうか?


「そ、れは……でも、でも……わたくしは、要が幸せにならないことが嫌ですもの……」

「俺の幸せは雅が決めるんじゃなくて、俺が決めるべきものだろ。だから、俺は選んだ。これが、俺が一番幸せだと思う形だ。雅はどう思う?」

「わたくしは……なら、わたくしは。……要と、要と一緒にいてもいいんですの……? 要の隣を、諦めなくても良いのですか……?」

「俺からすれば、むしろ諦める方が意味がわからないけどな」

「要……っ!!」


 ……刷り込みはきちんと成功しているようだ。誘拐される度に泣く雅を慰めていたら、雅は男では俺だけしか見なくなった。雅にとって男は、俺だけだ……。

 涙を浮かべて抱きついてくる雅の頭をなでながら、にやける顔を抑えようとするんだが、うまくいかない。


 これで、やぁっと手に入った……俺だけの雅。もう、逃ガサナイよ……?



 ―――――――――――――――――――――――



 入籍記念日に家に帰ると、なぜかあの女が家にいた。

 高校時代に雅が何を思ったか俺とくっつけようとしていて、その後図々しくも俺の雅の友人というポジションに収まった、忌々しい女。

 リビングのソファに腰掛けた女と俺はしばしにらみ合うが、空気の読めない雅は、俺に笑顔で声をかける。……本当にわざとじゃないんだよな……?


「要、お帰りなさい!」

「……ああ、ただいま」

「今、コーヒーを入れますね」


 雅が動く度、足に繋がれた鎖がじゃらじゃらと音を立て、俺としては気分が良い。思わずにやけそうだ。

 雅がキッチンに向かったのを確認すると、ソファから冷ややかな声が聞こえてくる。


「……前から最低な男だとは思ってたけど、ここまでくるといっそ見事だよ」

「……何か問題があるか?」

「ないと思う方がおかしいでしょ!?」

「なら逆に聞くが、仕事の忙しさにかまけて、雅を放置して大丈夫だと思っているのか? 自分の妊娠に6ヶ月気づかなかったんだぞ?」

「……同意するしかないのがものすごく嫌だわ」


 そう、雅は自分に無頓着だ。……自分の妊娠にも気づかないほどに。

 しかも妊娠が発覚してからも働こうとする(雅は俺の秘書をしている)から、俺が無理矢理休ませたのも記憶に新しく、ついでに誘拐されかけたのなんて、つい3日ほど前のことだ。


「……それで? お前は何をしに来たんだ? わざわざ俺たちの入籍日を狙ったんだ、重大なことがあるんだろう……?」

「あ、忘れてたわ。雅に新しい服を持ってきたのよね~」

「……ちっ」


 この女は新進気鋭のデザイナーらしく、雅に服を作っては持ってきてるんだよな。しかもそれは雅の良さをうまく引き立て、より可愛く見せる(これ以上可愛くなってどうする気なんだ……?)。

 そのせいで俺は俺好みの服を雅に着せられていない。


「ああ、それから、貴方にも話があったの。雅から打診があった貴方の会社の制服なんだけど。デザインが固まったから、今度サンプルを送るわ」

「ああ。それは雅に言え。雅に任せてある」

「……もう言ったわ。雅が貴方にも伝えろって言ったから、こうしてお邪魔していたんじゃない」

「なるほど、ならもう帰ってくれ。今ちゃんと聞いた」


 表情を一切変えずに言うと、女は立ち上がった。


「わかったわよ、お邪魔してごめんなさい。服は貴方から雅に渡しておいてね」

「……」

「それじゃあ、さようなら」


 あいつが完全に外に出たのを確認すると、俺はキッチンに向かった。コーヒーを入れている雅を後ろから抱きしめたときの、驚いた顔が可愛い。


「コーヒーもういらない。それより、雅が欲しいんだけど?」

「……えと、その……」

「風呂は入れるだろ?」

「あぅ……」


 真っ赤な顔の雅を抱きしめて満足するとか、俺って結構健全だよな――。

 要が予想よりも普通(?)の男の子でした。にこにこ腹黒は雅の前では発揮されないので、余計に普通ですね。もっと病ませてみたかったのですが、一人称だとやりづらかったです……。

 一人称は正直非常に書きにくかったので、所々失敗してる気がしてなりません。

 気になる点がありましたら、指摘お願いします。



 それにしても、全てが要の手のひらの上というか……そもそも、確実に犯罪ですよね。まあ、婚姻届は実際、出したもん勝ちなところがあるようですが。

 ちなみに、雅の男嫌いは誘拐されまくったことが原因という設定です。良家のお嬢様で美少女とくれば、色々あったということです。



 後日談について。

 要側からの紀伊が書きたくなってしまったので、結局足しました。要と紀伊は凄く仲が悪そうですね。

 紀伊の職業は、このやりとりを書きたいがために決めました。紀伊がいるから、要は雅の服を自分好みにできません。ざまあ、ですね。

 最後ですが、本人は健全とか言ってますが、足下の鎖を忘れる事なかれ、です。ただ閉じ込めておきたいだけです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 壊れたみやびちゃんが見てみたいです…!!
[一言] ヘ ン タ イ 光 臨 ☆!! 生粋か!?生粋なのかッ!? 紀伊ちゃんが紀伊ちゃんが世間に揉まれたからちょっとスレ気味になったんですよね?元からじゃないですよね? 大人になったなぁ…
[良い点] 要視点ですね! 待ってました。 雅ちゃんが実は要のことが(恋愛的な意味で)好きだったということに驚きましたが、面白かったです。 [気になる点] 『・・・・・・』が多くて少し読みにくかっ…
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