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勧誘活動

やっと2話目が完成しました。

これからも完成するのが遅くなると思いますが、よろしくお願いします。

第2章



 4月10日。

 4時30分。

 授業が終わり、たいていの生徒が部活へと向かう。

 俺も今日から活動を開始する。練習着やユニフォーム、スパイクなどはいらない。

 だってパソコン部だもの。いるのはパソコン、そして知識。それもマニアックな。

 パソコン部に入ったのだから、せめて人並みの知識をと思って、昨日悠太にエンコードやらを教えてもらった。まあ、さっぱりだったけどよ。

 とにかく今1番心配しているのが、俺はパソコン部やっていけるのかということだ。

 昨日は自己紹介だけをして帰ったので、活動内容もろくに知らない。

 さて……、何すんのかな?

 そう、俺は心配でたまらないのだ。

 そんな俺とは裏腹に悠太はいつものように八重歯をむき出しにしてニヤついている。

「何二ヤついてんの?」

「いや、別に」

 階段を下り、第1パソコン教室につづく長い廊下にさしかかった。

 もう部室は目の前である。

「何もってきたん?」

 悠太はショルダーバックの中に何か入れている。

 長方形で……うーんわからない。

「ノーパソだよ」

「何する気なんだ?」

 予想はつく。

 たぶん……自分の好きなゲームを紹介しようとでも考えてるんだろう。

「教えてほしい?」

「まあ」

 別にどうでもいいことなのだが、どんなことしてんのか気になる。

 ちなみに、俺はパソコンの知識はほぼゼロと言っても過言ではない。

 パソコンが家にあるのだが、やることといったらインターネットくらいだ。

 だってよ、ほかにすることねーじゃん! 

 パソコンできる人はすることいくらでもあるどろうけどよ……。

 悠太はまた八重歯をむき出しにしてニヤリと笑い、

「エロゲーだよん!」

「はあ?」

 いかん、聞き間違えてしまった。

 いくら悠太でも先輩にエロゲーを見せるなんてバカなことはしない。

 だいたい何でエロゲーもってんのってことになるしな……。

「聞こえなかったわー。もう一回言ってくれ」

 俺は神経を尖らせた。

 悠太は顔を赤らめて、

「だから……、エロゲーだって……」

 やっぱりエロゲーかよ!

 つーか何でエロゲー?

 先輩とやるつもりだったのか?

 何でもってきたんだ?」

「ここでやるからに決まってんだろ!」

 バカだろ、絶対バカだろコイツ。

 そんなもん家でやれ!

「家でやればいいんじゃねーのか?」

 悠太は顔を強張らせ、眉を顰めて言った。

「そんなことしたら、ミキちゃんに会える時間が減るだろ!」

 何言ってんだ、お前は!!!

 誰だよミキちゃんって!

 お前の恋人か!?

「だ、だれ……だれなんだ、そ、そのミキちゃんって?」

 悠太は八重歯をむき出しにし、目を見開いて、

「ミキちゃんは俺の彼女だよ! エロゲー内の!」

どこで買うんだ? そ、その……エロゲーは?」

「ネットで買った」

 俺の問いに、悠太はすげなく答えた。

 それから立ち止まり、ショルダーバックを右から左に掛けなおして、当然のように語りはじめた。

「実は今日持ってきたのは、おととい出たばかりの新作で、限定1000個のちょーレアな商品なんだ。それを昨日やっとのことで手に入れたんだ。クーッ!」

 お前は川平慈英か!

 ってか昨日手に入れたばかりなのにもう彼女とかできんのか?

 おっと、俺はそのような如何わしい商品に手を出したことはないぞ。

 ……ちょっと疑ったろ? だが、俺は手を出したことはない。断言してもいい。

 少々引き気味の俺をよそに、悠太は話を続ける。

「でさ、限定品だったからさあ、けっこう金使っちゃったわけよ」

「いくら使ったんだ?」

 俺は声が裏返りながら聞いた。

「3万円くらいかな」

 さ、さんまんえんだって? 

 エロゲーってそんなにすんのか?

 い、いや、俺も如何わしい雑誌はもってるけどさあ、まあそういう雑誌って1000円以内でくらいで買えちゃうわけじゃん。

 でも3万円って……ゲームだから高いのはわかるけど……、買う気にはなれんーよな?

 エロゲーファンの方には申し訳ないが、これが今の俺の心境だ。

「で、その金はどっから出てくんの?」

 この学校は、生徒を勉強に専念させるためにバイトを禁止している。

 そのおかげで成績は県内トップ……とまではいかないが、けっこうランクは高いのだ。

「自分の小遣いだけど」

「お前んちそんなに金持ちなのか?」

 実際のところ俺はまだ悠太の家のことはよく知らないのだ。

「言ってなかったっけ? 俺のとーさんはゲーム作る会社の社長なんだ。名前はポニー・エレクトリシティー・ディベロップメント。つまり、PEDペッドだよ」

 なにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!

 父親がゲーム会社の社長だって?

「え、えっ?」

 動揺を隠し切れない。

 自分の目の前に超有名会社の社長息子がいるのだから。

 そんな悠太は顔色1つ変えずに説明を続ける。

「知らなかった?」

「ああ、まったく知らなかったよ」

 それなら理解できる。超有名会社の社長が借金まみれなんてほとんどないだろうからな。

 そうか、だから3万円のゲームソフトをらくらく買えちゃうってことか。

 いいな。うらやましいぜ。

「それでな、とーさんの会社のゲームは無料でもらえるんだ。もちろんエロゲーも」

「エロゲーも? まさかそのエロゲーもポニーが作ったやつか? だから限定1000個でも手に入ったってことなのか?」

「このエロゲーは別の会社のやつ。ポニーのエロゲーおもしろくないし、全然興奮しねえからな」

 お前はどんだけエロゲー好きなんだよ!

「ポニーのエロゲーやったことあんの?」

「あるよ。とーさんに貰った」

 何で父親が息子にエロゲーあげるんだよ!? 

 そんな父親見たことないわ!

「お前の父親がくれたのか? でも何で?」

「おもしろくて、興奮するか評価してほしいってくれた。だから俺がエロゲー始めたのはとーさんの影響かな」

 とんでもねー父親だよ。

 ゲーム評価してほしいからって自分の息子にエロゲー渡すか?

 だいたいエロゲーってほとんどが18禁だろ? コイツまだ15じゃん。

 どんな性教育してんだコイツの父親は! 

 俺はしばらく呆然と立ち尽くしていた。

「まあ、行くか?」

 悠太の一声に俺は我に返った。

「すまん。ぼーっとしてた。……いきますか!」

 俺と悠太は再び部室に向けて歩き始めた。

 大きなチャイムの音が静かな廊下に響き渡る。

 ――5時だ。

 どうやら30分間もくだらない話をしていたみたいだ。







 部室に着いた。

 パソコン部の活動開始時間は4時44分。すごく微妙な時間である。

 理由は2人の先輩方が4という数字が好きだから。

 とはいえ、『4』が3個もあり、何か不吉な感じがする。

 俺と悠太は扉を掴み、ゆっくりと開けた。申し訳なさを出すためだ。

「遅れてすいません」「遅れてすいません」

 扉を開けると、2人の先輩がニコリと爽やかな笑顔を振りまいた。

「おっ、来た来た」

「やっと来たんか」

 やはりパソコン部が似合わない顔である。

「どうしたの? こんなに遅くなって」

 永井先輩も河合先輩も全然怒っていないようである。

「話ながら来たもので……」

 悠太が丁寧に説明する。悠太は先輩受けが昔からいいのだ。

「へえー。何の話?」

 おい悠太エロゲーの話なんかすんじゃねーぞ。

「え……」

「英語の宿題の話をしてたんですよ。な、悠太」

 俺は悠太に空気を読めよの意味を込めて、目配せをした。

 すると悠太は、俺に耳打ちした。

『何で嘘つくんだ?』

『エロゲーの話をしたなんて言ったら、先輩に何て言われるかわからんからだ。』

『あー、そっか。わかった。今回は伏せておこう』

 『今回は』という言葉に不審を抱いたが、まあいっか。

「耳打ちかいな? 何か疚しいことでもあるんか?」

 河合先輩は胡散顔でこちらを見つめる。

「何でもないっすよ」

「まあええけどな」

 背が高いしかっこいいから、なんか怖い。

「ところで、今日は何をするんですか?」

 絶好のタイミングで悠太が話を変えた。

 悠太の方を向くと、ニコっと笑い、目配せをしてきた。意味はおそらく、ここは俺に任せろだ。

 永井先輩は爽やかな笑顔で、

「今日は勧誘します」

 何だって? かんゆう? まだ部員がほしいのか?

「勧誘だ? 何でそんなことせにゃならんのや?」

 河合先輩が真顔で反論する。

 今日の河合先輩の服装は、いかにも不良高校生って感じだ。髪の毛もワックスで整えてあるので、よりそれらしく見える。

 それに対して永井先輩は、ザ紳士といった格好に長い茶髪がとても似合っている。永井先輩も河合先輩同様、ワックスでセットしているので、ホストみたいだ。

「人があと1人集まらないと、強制的に廃部になっちゃうんだ」


「ええ!」 「ええ!」

 

 河合先輩、悠太という順で、漫画の1シーンのような顔で驚きを表現している。

「そうだったんですか」

 俺も遅れて驚きを表現した。

「ああ。だから、これからビラ配って勧誘に行くよ」

「仕方ないなー」

「ちょっと待ってください。どんな格好でするんですか?」

 いつになく真剣なまなざしの悠太。

「着ぐるみとか着るんですか?」

 何言ってんだコイツは? この格好でいいだろ。着ぐるみって、どっから持ってきたのその発想?

「悠太、お前アニメの見すぎや!」

「すいません。わかっちゃいました?」

「謝らなくていいよ。俺もそれ見てやってみようかなって思ったことあるし」

 いったい何の話をしてるんだ? 

 さっぱりわからん。

 やっぱ俺……やっていけるのかな?

「普通の格好でいいんじゃないですか?」

 俺は話をもとに戻した。

「そうだね。じゃあ行こう」

 4人は部室をあとにし、下駄箱に向かった。

 この時間になると部活に入ってない人が家に帰るために、一斉にやってくるからだ。


 下駄箱に着いた。

 ここは1年から3年の下駄箱がすべて揃っている。

 すると早速、向こうから今どきの女子高生って感じの少し悪ぶった3人組がやって来た。

 クラスを仕切っているって感じがする。

 まず1番に話しかけたのは、ミスター紳士の永井先輩だ。

「ねえ君たち、僕と一緒に遊ばない? サービスするよ」

 ちょ、ちょっと、何言ってんの?

 やっぱりアンタはホストなんだろ? 今の口調、絶対ホストだよね?

 先輩はいつもの爽やかスマイルで女の子と話している。

 どうやら、悪気があったわけではないようだ。

「え、いいんですか?」

 3人の女の子は同時に言う。

 表情からはうれしさしか伝わってこない。

「いいよ。じゃあ入ってくれるんだね? パソコン部に!」

 その言葉が発せられた瞬間、3人は一瞬で表情を変えて、

「やっぱりいいです」

 これまた同時に言った。

 しかも、ものすごく冷淡に!

「え? ま、まって……」

 どうすればいいんだ、こんなときは?

 あんなに落ち込んでいる先輩の顔は初めてだ。会って2日しか経ってないけど。

 俺は助けを求めて、河合先輩と悠太を見た。

 なんていうか……、怯えてる?

「河合先輩、どうしたんすか?」

 河合先輩はポケットに手を突っ込んで弱弱しく言った。

「わい、実は、女の子と話すの苦手やねん」

「あ……そうだったんですか?」

 ほう、これは意外。

 関西弁使ってるからじゃないけど、誰にでも対等に話せるガキ大将みたいな人かと思ったけど。

「何でですか?」

「それはな……」

 さっきは落ち込んでいたはずの永井先輩が急に語りはじめた。

「小学校の低学年のころだったかな、そのころ、スカートめくりしたら男と認められるっていう儀式があったんだ……」

 あったなー。そんなこと。

 ガキ大将みたいな奴しかやってなかったけど。

「博も周りの奴にそそのかされて、アグレッシブな女の子のスカートをめくっちゃったんだ。こっからがすごいんだけど、なんとその女の子、ノーパンだったんだ……」

 何でノーパン? 

 そのとき、悠太が漫画みたいに鼻血を噴き出した。

「ブハァァァァァァァァァァ!」

「おい、だいじょうぶかい、悠太君?」

「なんとか」

 何でそのくらいのことで鼻血が出んだよ!

 お前は18禁のエロゲープレーヤーだろ? もっとエロいシーン何度も見てきたんだろーが!

 永井先輩は続ける。

「ノーパンってところからだよね?」

「あ……はい」

「そこに、なんと男の先生が来て、女の子のを見てしまったんだ。先生は『何でノーパンなんだ!』って大声で言っちゃったんだ。俺も先生と同じことを言おうと思ったんだが……」

 同じこと言っちゃだめですよ! もっと考えて言ってくださいよ!

 つーか、先生も先生だよ。

 何でそこで女の子に叱り付けるんだ? 普通逆だろ! そこは河合先輩のことを叱らないと!

「それ以来、博は女の子から避けられるようになったんだ。この高校に入ってからは、知ってる女子がいなかったから、少しはマシになったけど」

 自業自得なのだが、なんだかこっちまで悲しくなった。

「トラウマに……なってるん……ですか」

「そういうこと」

 河合先輩を見ると、体育座りをして縮こまっている。

 昨日の先輩とは全くの別人に見えた。

「で、悠太君はどうしたんだい?」

 忘れてた。

 なぜか悠太も縮こまっているのだ。

「ち、ちょっと、まだ現実世界の女の子に慣れてないんです」

 それエロゲーのしすぎだよ!

 早く2次元の世界から帰って来い!

「げ・ん・じ・つ・せ・か・い? 何それ?」

 永井先輩の顔色が変わった。

 やばい! エロゲーのことがばれる!

「悠太は今どきの女子高生のことを現実世界の女子って言うんですよ」

「へえ、そうなんだ。で、そのげんじつせかいのおんなのこと話すのが苦手ってことか。でも、何で?」

「あれは、僕が小学5年生の頃だった……」

 ここで回想シーンかよ。

 しかもなんだよ、その在り来たりな回想の前フリは!

「…………」

 悠太は黙ったまま、俺をじっと見ている。

 そして悠太は、

「おい和磨、このあとを説明してくれよ! 俺はコイツのすべてを知っているみたいな口調で説明してくれよ!」

「お前の昔話なんて知らねーよ!」

「僕は和磨のこと何でも知ってるのに!」

「嘘つけ!」

「昔はあんなにきれいな目をしてたのに」

「お前は俺の何を知ってるってんだ! 俺はお前のことを中学3年のときにはじめて知ったよ!」

 悠太は下を向いて、

「あのとき交わした会話は全部嘘だったのか?」

「そんな会話交わした覚えねーし、誤解を招くからやめてくんない!」


「ギャハハハハハ!」


 永井先輩と河合先輩が腹を抱えて笑い出した。

「お前ら、漫才やっとるみたいやわ」

 はじめて会ったときと同じ河合先輩に戻っていた。なんだかこっちのほうがいい。

 永井先輩もいつもの爽やかスマイルが一段と爽やかに見えた。

「今日はここまでにして、部室に帰ろうか。あと1週間あるし」

「1週間あればなんとかなるでしょう」

 落ち込んでいた悠太も復活したみたいだ。

 この3人……立ち直るのがはやい!







 

 結局、声を掛けたのはあの3人だけ。しかも部員にはなってくれなかった。

 俺と悠太、先輩2人は落ち込むことなく、部室に帰った。

 ガラガラガラ……。部室の扉を開けると、機械のにおいというか、部屋のいおいが漂っている。

 野球部などの運動部の部室よりもたちの悪いにおいである。

「さーて、今日は何する?」

 永井先輩は手を上に上げて伸びをしながら言った。

「パソコン部の主な活動内容は何ですか?」

「自由や」

「へっ?」

「だからな、何やってもええんや」

 大胆な部活だな。

 顧問もいなければ、部員もいない。それに活動も自由って……、どこぞの不良高校じゃねーか!

「そや、みんな明日自分のノーパソ持ってきてくれ! SNSしよう!」

 SNS……それはソーシャル・ネットワーキング・サービスの略。

 要するに、ネット上で顔のわからん人と会話するってこと。

 ノーパソは持ってるけど、大丈夫なのか?

「いいな、それ。みんなでやろう」

「僕も賛成です。オフ会もみんなで行きましょう」

 オフ会だって、今の流れだと俺もオフ会に参加ってことに。

「ちゃんともってこいな、和磨」

「わ、わかりました」

 明日は俺がまだ行ったことも見たこともない世界にいける。

 俺はわくわくとどきどきでいっぱいだった。

 明日は何が待っているのか。

 それは神でさえわからないであろう。

 
















長い時間僕の小説を読んでいただき、ありがとうございます。

どんな感想、意見でも構わないのでよろしくお願いします。

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