じょーし、じょじ、或いはじょーじ
この小説は、短編「はらえの神様」の続編です。
「おい、じょーし、そこのせいじがじょーし」
「ん?いやいや、じょじだろう。いやまて、じょーじ、だっただろうか?」
「むむ。あれほど繰り返し反復しながら来たのだが。おい、せいじがじょーし、じょじ、或いははじょーじ。顔を貸しなさい。」
藍色に包まれた、その日の夜。
月が夜空を登頂する頃。
「・・・私の、こと?」
波のように寄っては引いていく、頭痛。
その中に、頭痛以外の何かを捉え、目を開いた。
声。さらさらと流れるように闇夜を撫でる、優しい声。
けれど。
私は、私の、
Ctrl F
私の、アイデンティティに
「じょーし」
「じょじ」
「あるいはじょーじ」
そのようなキーワードは、
ない、はず。
検索結果は無愛想な
[Sorry,Not Found.]
けれど、たった一つだけ、心当たりのある言葉。
深緑の屋根の下、一番小さめの部屋にいる私。
部屋に3つついている、窓。
その中で、一番小さな窓から聞こえてくる、声。
思い込みは激しくない方だと思うのだけれど、
あの声は、私を呼んでいるような。
灯りは点いていないけれど、闇夜に慣れた目がほんのりとあたりを映し、
ベッドから身を起こせば、ポチャリと水の音がした。
「氷、とけちゃったんだ。寒いのに」
傍らに落ちた氷嚢を見つめる間も、布団から離れた背中が寒い。
まだ底冷えする床に足をつけたくないのだけれど、スリッパが見つからない。
額ならば押し付けたいのだけれど、なんて思いながら。
ぞくりとする悪寒を止める術も持たず、
布団の上にあったブランケットを纏ってみる。ん、頭はスイカ割り実施中。
冬の西瓜は、そんな食べ方をしないはずなのだけれど。
結局見当たらないスリッパを諦めて、額に送りたい冷気と足の、ご対面。
最小の接地面積、五つと五つの小さな指だけで猫のように歩く。
猫、いえ泥棒のよう。おかしい、ここは私の家なのに。
3歩目でラグの感触。
声のした窓に向かうと、
まだやわらかく、繰り返し呟く声が聞こえる。
ここは2階。
彼らは神様かもしれない。