物語の途中で 【月夜譚No.401】
掲載日:2026/05/10
物語なんて、あちこちに転がっている。
塀の上で昼寝をしている猫にも、擦れ違った少年にも、信号待ちをしている乗用車にも。それぞれにそれぞれの主人公がいて、各々の物語を紡ぐ。
それが本や映画、ドラマといった形になっていなくとも、物語は物語なのだ。
そこまで考えてから、青年はふと足を止める。果たして、自分が主人公であるこの物語は面白いものになっているのだろうか、と。
数秒立ち止まってから、しかし彼は歩を再開させた。歩調は変わらず、けれど表情は少しだけ笑みを湛える。
それは、今考えても仕様のないことだ。物語が面白いかどうかなんて、きっと終わってみてからでないと判らない。
それならば、面白くなるように今を目一杯楽しんでみよう。
ふと顔を上げた先に友人の後ろ姿を見つけた青年は、嬉しそうに地面を蹴った。




