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或る教授  作者: 浦島橋梁
7/7

007 : 或る帝国主義

「諸君が学び育つ事は大変結構だ。

 否、育つとは聊か上から目線、となるかな。

 失礼。


 さて、我々が学ぶ物はその大半が西洋から齎された。

 それを先人が解析し、翻訳し、

 更にその過程で様々な言葉、新たな単語を生み出した。

 そう、博愛や、正義、と言った類をね。

 ちなみに『自由』は仏教由来だよ。

 フランス革命とはまた違うので、注意したまえ。


 何?……平等?それも仏教用語だな。

 君は平等院を知らんのかね?

 否、冗談だよ。

 その『平等』か、と問われれば、

 それは平安時代の所謂、末法思想から来ている。

 

 …言葉は数々有るが、本題はそこでは無い。


 話を戻そう。

 我々は言わば、

 遺産を与えられた相続人の様なものだ。


 遺産、そう、その遺産が本来であれば…

 更に多い筈だったのだが。

 既に一世紀も前の事になるが、

 先の戦争が未だに悔やまれてならない。


 幸徳秋水の『帝国主義』に対して

 当時のテクノクラートが真摯に向き合い、

 正当に分析し、評価し、

 その警鐘に耳を傾けていれば、

 今日の様な國體の有様とはまた、

 違うものになっていただろう。

 そう言う意味に於いて

 社会主義者だ、無政府主義者だと、

 当時批判していた輩には、

 安易な批評は慎みたまえ、と猛省を促したい。


 …所詮、後世に生まれた者の話。

 平和な時代に生まれ、

 安全圏から彼や彼等を批評するなど、

 無責任極まると言うものだな。


 総力戦研究所ですら当時の政策、

 所謂『国策』を変える事は出来なかった。

 階級の思惑在り、追随する世論在り、

 それが世相、それが時代の空気と言えば、

 それまでの事。

 結局、歴史とは、視えざる神の手によって

 造られる物らしい。

 “正しい”と言うものは、過去を振り返り、

 評価された結果でしかない。


 余談になるが、

 歴史に “ もしも ” が無い事は重々理解している。

 だが然し、先の戦争では余りにも多くの有能な、

 有望な若者を失い過ぎた。


 若し仮に、彼等が生き、学び、

 更に深く探求していれば、

 学界も、もう少し…

 失礼、(健全に)発展していたのでは、

 そう思うのは、

 少し傲慢に過ぎるのだろうか。


 まあ諸君、

 君等の探求心に期待している。

 当然私も現役だ。

 共に学ぼうではないか。

 研鑽、そう、研鑽だな。


 それでは」

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