第二話 ミスステップを踏む
自宅のベッド。
右足のギプスを見下ろし、ケガをした日の帰り道を思い出していた。
***
放課後のグラウンド。三年生、四月。
スタブロを片付けながら、美空に声をかけた。
「お疲れ。朝練、なんで来なかったの?」
「自転車、パンクしちゃって…仕方なく走ってきたんだよね。だから朝練したのと同じ」
「……と、いう訳で、帰りは乗せてってよ」
「二人乗り禁止」
「川沿いの堤防道なら車こないし、大丈夫だって」
美空に押し切られる形で、私は自転車を引っ張り出した。
前に私。後ろに美空。川沿いの帰り道。
猫が飛び出してきたのは、土手の真ん中あたりだった。
「うわっ!」
私はハンドルを切りかけてよろけた。
その瞬間、美空がとっさに私の背中を突いて、すぐに飛び降りる。
バランスを完全に崩した私は、自転車ごと土手に放り出された。
右足をひねった感覚と、地面に叩きつけられる痛みがいっしょにきた。
「彩花っ!」
美空の声が上から響く。
彼女は舗道の上で尻もちをついていた。
「大丈夫!?」
答えようとしたけど、右足がまったく動かせなかった。
***
翌朝。
病院の診察室で、レントゲン写真を見せられた。
「骨折ですね。全治一か月」
私は、右足にギプスが巻かれるのを、ただ見ていた。




