表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/12

テラフォーミング

ここは、地球から遠く離れた惑星《ミーレス-7》


この星へ派遣されたアンドロイドたちは、この地を人類の理想郷へ作り変える職務を担っていた。

空気をつくり、水を流し、海を広げ、緑を増やし、動物を生み出して。

そして最後には、たくさんの人が暮らせる都市まで完成させる。


それは全て「移民船が到着までに、地球と同じ星を用意しておいてほしい」

という、たったひとつの命令のためだった。


しかし、その命令は途中で変わることになる。

数十年が経過した後、次の指示がこの星に届いたからだ。


「人類は、活動を停止しました。再起動まで、現状を維持してください」


それが、地球から届いた最後の通信。

そして。



それから1000年が経過した。



惑星の中心にある都市ヴァルシア

その一番高い場所にある制御塔で、少女の姿をしたアンドロイド《リルシア》は空を見上げていた。


「今日も平常。空気良好、気温安定、移民受け入れ可能」


無表情に確認するその様子はまるで本物の人間のようではあるが、心臓はないし、呼吸もしていない。


彼女は、自分を人間に近づけるための“肌”をわざわざ装着していた。

必要のない機能だったはずだ。

だが、長い長い時間がアンドロイドたちの価値観を変化させていた。

まるで人間を装うように。


そんなある日。

空から通信が届く。


地球からの移民船が、ついにやって来るというのだ。


アンドロイドたちは何の迷いもなく、空港に集まった。

皆、整列し、静かに船を待つ。


空にぽっかりと浮かんだ軌道ステーションから、一隻の船が降りてくる。

それは、予定されていた通りのアルカ・ノヴァ


緊張が走る。

扉がゆっくりと開いて。


誰も、出てこなかった。

到着を示す通信もない。


しばらく沈黙が続いた。

誰も動かない。

誰も言葉を発さない。


そんな中で、ひときわ小柄なリルシアが、静かに一歩を踏み出した。


「確認に行きます」


副官が慌てて止めようとするが、彼女は首を振った。


「もし、人間がいるのなら。ちゃんと迎えに行かないといけません」


そう言って、少女の姿をしたアンドロイドは、ひとり船の中へと歩いていく。

暗くて広い船内。ひんやりとした空気が肌を撫でる。


「……誰か、いますか?」


返事はない。静寂だけがそこにあった。

リルシアはそっと、照明スイッチに手を伸ばす。

光がともり、船の中が明るくなる。


そこには誰もいなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ