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乙女要素のある死にゲーに転移してしまった件〜帰還エンドのはずが、様子がおかしい〜  作者: 勿夏七
15章

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93.自称渡者からの襲撃

 なぜかゼヴリンとデボラに挟まれたままイナト達のいるらしい隣の部屋へ。

 少し前まで私に殺意の眼差しを向けていたのが嘘のようにデボラは笑顔だった。

 今は照れながらも私の腕に絡んでいる。その様子をイナトは何度も目を擦り、目を瞬かせた。

 私だってまさか少し褒めただけで、こうも態度を変えてくるとは思っていなかった。このゲームの男女関係なくちょろいキャラクターばかりなのだろうか。


「貴女はお兄様と結婚して、イナト様はわたくしと結婚すればいいのよ」


 そうすればお姉様と呼べるし、わたくしはイナト様と夫婦になれる。そうデボラは目を輝かせて言った。イナトは恐怖のあまり声が出ないのか、口を開いているが声は聞こえてこない。


「お兄様、わたくしお姉様が欲しいわ。絶対口説き落としてよね」


 そう言って救世主一行に押し付けようとしたが、ゼヴリンは首を横に振る。


「それは無理だ。仕事があるから行けない」

「もう、ほんとうに頭が硬いわ! そんなの、弟子に任せてしまえばいいじゃない!」


 それでもダメだとゼヴリンは言う。どうやらまだ独立できるほどの実力が備わっていないらしく、今はつきっきりで教えている最中なのだとか。職人の技を伝授するのは大変そうだ。

 

「その代わりと言ってはなんですが、文通相手になっていただけると幸いです」

「もちろん構いませんよ」


 ゼヴリンは嬉しそうな表情はしていないが、雰囲気は和らいでいる気がする。気がするだけなので私の思い込みかもしれない。

 ルーパルドはそんな様子を見て軽い口調で言う。

 

「俺達の前で堂々と浮気するのはやめてください」

「浮気も何も付き合ってないでーす」

「……そんなことより、救世主様が襲撃されたことについて話し合いましょうか」


 イナトは私を兄妹から離し、何事もなかったように事件の話を始めることなった。


 最初こそ、デボラの仕業だと思われていた襲撃。

 しかし、デボラは「自分の開いたパーティーで面倒事を起こすわけないでしょう」とムッとした表情をしていた。

 それはそうだ。イナトから聞いた話だが、パーティーを開いた際、何か事件などが起きた場合はすべて主催者のせいとなる。もちろん1番悪いのは問題を起こした者だが、その隙を与えてしまったということとなり、処罰対象になるという。

 ずっと処罰から逃れられるよう考えて行動していた人が、このようなミスをやらかすとは思えない。


「デボラ嬢に恨みがあったか、はたまた救世主様か……」

「どっちもの線はない?」


 口には出さないが、デボラは結構恨まれるようなことをしている。私に降りかかったこと以外は全て噂でしか知らないが、かなりのワガママっぷりを発揮しているらしい。

 また、世界を救ってほしくない人にとって私は邪魔な存在だ。

 

「あり得ますが、その2人を同時に始末したい人間がどれほどいるかわかりませんね」

「わたくし、イナト様に想いを寄せている女には容赦いたしません。なので私が叩きのめした女の中にいるのではなくて?」

「そこに絞ったとして、あとは救世主様ですが……」


 うーん。というそれぞれの声。だが、ルーパルドだけはすでにわかっている様子で手を挙げた。

 

「あのー、正直団長に想いを寄せている女ってことは、漏れなく救世主様も嫌われてる可能性ありません?」

「イナトとよく一緒にいるからね」

「いや、そうなんだけど違くて。団長は救世主様のことを話しすぎです」

「そ、そんなに話してるか……?」


 私と別行動をとっている時も、どうやら私のことを話していたようだ。救世主様が救世主様が〜と。しかもルーパルドが言うには恨めしそうにしている女性を何度も目撃しているのだとか。

 全然気づいてなかったが、敵判定ではないということ……? そもそも視線に気づかないでずっと街や村を歩いていたということ?


「人の好意や嫌悪には敏感だと思ってたのに……!」

「今そこショック受けるとこじゃないですよ!」


 ルーパルドのツッコミが部屋によく響いたのだった。

 


 ◇



 私達が話している間に、ロクが主犯と思われる男を捕まえてきた。男は「自分は渡者で自らの意思で救世主を殺しに来た」と言った。

 わかっていた事だが、デボラもゼヴリンも面識がないと否定。男も雇い主ではないと断言。

 どうにか聞き出そうとしてみたが、口は堅く何も話さない。


「イナトに頼む?」

「いいですよ。アデルにもらった呪いのスクロールを試してみましょう」

「え、いつの間にそんなものを」


 スクロールを見た自称渡者は危険だと判断したのか、口笛を吹いた。その途端煙でいっぱいになった部屋。慌てて私はポーチに入れていた目が良くなる薬を飲んだが、効き目はなかった。まるで霧の森のような濃さだ。


「窓も扉も開けていないのにいない……」


 隠し通路があるのかと聞いても、持ち主であるゼヴリンもデボラも首を横に振る。探してみてもそんなものは見つからなかった。


「渡者って壁抜けできたりする?」

「そんなわけないだろう。……顔は覚えてる。念の為、統括者(おっさん)に名簿を借りよう。渡者の名簿で見た記憶がない」

「なんで自称してたんだろ」

「主人の命もなしに行動するのは渡者の意に反する。渡者の評判を下げたい者かもしれない」


 渡者は主人に従う者。

 教育費を国や主人希望の者から一部頂戴していることもあり、一定期間主人のいない渡者は罰則を受けるのだとか。


「支援してもらってるのに、元主人になった途端殺しちゃったりするのってどうなの……?」

「契約前に了承を得ているから問題ない」

「私なかったよね!?」


 万が一私がソロでこの世界を楽しむとかで解散したら真っ先に殺されるということか? ロクがどのような処理をしているのかは不明ではあるのだが。

 

「お前は俺を捨てるのか?」

「いや、捨てるつもりはないけど」

「ならいいだろ」


 寂しそうにしていたロクだったが、私の回答を聞き満足そうに頷いた。

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