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乙女要素のある死にゲーに転移してしまった件〜帰還エンドのはずが、様子がおかしい〜  作者: 勿夏七
14章

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88.刺客

 夜中に目が覚めてしまった私。すぐにもう一度眠れる気はしない。

 ここにいる間は自由にして良いと許可はもらっている。それなら夜の散歩でしようかと用意してもらっている可愛らしいカーディガンを羽織り、部屋を出る。薄暗い廊下を歩き階段を降り庭へ。

 そこには様々な種類の花が綺麗に咲いていた。これほどたくさんの花があるのに香りはケンカすることなく、優しく甘い香りが鼻腔をくすぐる。良い気分のまま花の道を辿っていると、大きな噴水が見えてきた。月明かりに輝く水は幻想的だ。


「リン?」


 声が聞こえた方向へと視線を向けると、噴水の側に黒い影。声からしてロクだろう。


「ロク? ロクも眠れなかったの?」

「俺は元々あまり寝ない」


 ロクの側まで行き、顔を確認する。暗くて見えにくいが、いつも通り澄ました顔をしたロクだった。

 渡者は短時間の眠りで体力を回復するすべを持っているらしい。そのため、夜は武器の手入れや他の者の様子を見たりしていることが多いのだとか。


「……もしかして寝顔見られてる?」

「そうだが?」


 主人の状況確認は当たり前とでも言いたげなロクは、悪びれる様子もなくそう言った。

 どこから確認しているのかは不明だが、今気にすべきことはそこじゃない。死に戻りを活用しようとしていることがバレているかが問題だ。


「それってどのくらいの時間にどの程度確認してるの?」

「時間は決めてない。……ああ、安心しろ。リンが通信機で何をしているのかは知らない。見えないしな」


 何かを察したロクは、大丈夫だと私の頭をぽんぽんと軽く叩いた。

 だからと言ってプライバシーの侵害ではあるのだが……。でも、やましい気持ちもないようだし、言ってやめるとも思えない。私も見られていること自体気づいていないし。

 通信機がロクに見えないように気をつけるしかないだろう。もし通話で死に戻りについて話をする時は気をつけよう。


「……そろそろ戻った方がいいんじゃないか?」

「ロクと話してさらに目が覚めちゃったから、寝られるかわからないな」

「そうか。それなら少し俺に付き合ってくれ」


 手首を取られ奥へと進む。少し足早に歩くロク。誰かが近づいてきていたのかとミニマップを確認したが、何も表示されない。ロクと最初に会った時のように目のマークが表示されることもない。だが、ロクは何かから逃れるように視界の悪そうな場所を選んで入り、どんどんと奥へと進む。

 

 迷路みたいな植物の壁を通り、行き止まりまで来た。そこでロクは止まり、針を複数本取り出した。空に投げると1人のメイドが落ちてきた。それは今回のパーティーに私の付き添いとして参加する予定だったメイドだ。

 ロクは私を庇うように前へと立ち牽制している。それを見て、メイドは面倒くさそうな表情を浮かべている。


「救世主を殺し損ねて寝返ったというのは本当だったのね」


 手のひらや足に刺さった針を抜きながら、忌々しそうにロクを見ていた。ミニマップに映らず私を狙っていた様子から、きっとデボラの雇っている渡者なのだろう。だが、寝返ったことを確信していなかったのは何故だろう。


「同じ雇い主なのに知らないものなの?」

「俺はデボラから直接雇用されていたわけではない。この女もそれは同じだろう」

「足取りを追われないように?」

「それもあるが……別の主人に雇われる際、後処理をすると言っただろ? おそらくそれを避けたいんだ」


 どのような処理が下るのか、それは渡者それぞれだと聞いている。人によっては殺す。人によって忘却呪文をかける。など様々らしい。


「なんで私を殺そうとするの?」

「救世主サマが世界救済なんかしちゃうと、あたしらの仕事が減っちゃうの」

 

 ……世界救済をすれば誰かが損する。その理屈はわかるが、デボラに関してはイケメンを私に取られるのが気に食わない程度だと聞いている。そんなデボラの指示に従うなんて、お金さえ払えば猫の捜索も喜んで受けるのだろうか。


 メイド服の裾を破いてそれを止血として使いながら、メイドは話を続けた。

 

「特に人殺しは高値だからって食いつく者も多い。あたしと同じで人殺しが好きな奴も多いわ。そして救世主殺しの依頼は今もどんどん増えてる。だから渡者はほとんど敵だと思ってくれて構わない」

「教えてくれるんだ。親切だね」

「……脳内お花畑なの?」


 「興が醒めた」とメイドだった女はロクを一瞥した後、煙玉を投げその場から姿を消した。

 

「……まだいるよね?」

「よくわかったな」


 小声でロクにそう聞くと、感心したように頷かれた。

 仕様は理解していないが、やっとミニマップに目のマークが現れた。近くにいるようでマップの画面が少し赤くなっている。

 

 警戒していると、植物の壁から手が伸びてきた。私は回避行動をとった後、すぐに腕を掴み引っ張り出す。ロクは引っ張りでてきたメイドをポーチに入れていたロープで縛った。


「ナイスコンビネーションだね」

「ああ、さすが俺の主人だな」


 柔らかく微笑むロクに思わず目が奪われてしまったが、うめき声をあげるメイドのおかげで我に返る。


「いつから紛れてたのか調べてもらわないとね」


 もしまだ潜んでいたら怖いし。

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