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乙女要素のある死にゲーに転移してしまった件〜帰還エンドのはずが、様子がおかしい〜  作者: 勿夏七
14章

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82.勇者の消えた洞窟

 小さな村に入ると、待ってましたと言わんばかりに村長が駆け寄ってきた。白髪混じりだが、まだ皺は少なく若そうに見える。

 洞窟の状況を伝えると、顎髭を触りながら村長は驚愕の声をあげた。

 

「ええ!? 魔物がいない!?」

「知らなかったのかよ」


 冷静なツッコミを入れるロク。その返しに村長は恥ずかしそうに頭を掻いた。

 

 討伐依頼を申請したのが1年前。様子を見に行ったのが3ヶ月前なのだそうだ。様子を見に行った後に誰かがその魔物を討伐したことになる。しかも村長が依頼していない誰かに。

 

 なお、村で1番強いと言われている村人でも歯が立たなかったらしい。

 その村人は元騎士。

 イナトも知っている人なのだそうだが、年齢を理由に隠居。だが、実力が衰えているわけではないと聞く。その村人でも倒せなかった魔物が、通りすがりの者に討伐されるだろうか。


「渡者とか?」

「渡者は形跡を残さない。焚き火の跡や松明に使われたであろう木を残すわけがない」


 ロクはあり得ないと断言。形跡を残さず主人のためならなんでもやれるとなると万能な忍者のようだ。実際の忍者がそこまでするのかは私は知らないのだが。

 

「えー、じゃあ旅人?」

「わざわざこんなところに来ないだろ」


 ことごとくロクに否定されて、私はただ首を傾げた。他に思いつかない。


 この村は隔離された場所だ。村に辿り着くには橋のない川を渡るしか方法はない。一度橋をかけたことがあったが、雨がよく振るこの地域では、何度橋をかけても濁流によって流されてしまったという。

 また、村の近くには海が広がっており、気軽に訪れることはできない。そんな場所にわざわざ足を運ぶのは何か目的のある者のみだろう。


「洞窟に用があったりは?」

「あの洞窟は勇者が最後に訪れた洞窟です」


 ルーパルドが以前言っていた地震で埋まってしまった洞窟のようだ。掘り起こし、勇者を探したが何も見つからなかったと言っていたことを思い出す。


「隅々まで探しましたが、ただの空洞でした」

 

 お金になりそうな鉱石も、珍しい素材や魔物もいなかった。最初は勇者が最後に訪れた場所として見に来る人が多かったらしい。場所の悪さなどから次第に人は減り、今は誰も寄りつかない。そのため、魔物が棲みついてしまったのだろうとイナトは言った。


「勇者が討伐した……わけないよね」

「そうですねぇ。500年も前の人なんで流石にないと思います。不死なら知りませんけど」


 最終的に、魔物を討伐した者はわからずじまいだった。ワープポイントの解放だけ終わらせて私達は次の目的地を決めることに。


「腑に落ちないけどしょうがない。次はどこに行く予定?」


 私がそう聞けば、イナトは伝書紙を飛ばしてから私の問いに答えた。

 

「夢に詳しい者に話を聞いてみようかと」

「私が寝坊して不思議な夢を見ただけかもよ? アデルさんが夢避けの香をくれるって言ってたし、そこまでしなくても――」

「僕が心配なんです。それに、僕の見た目で救世主様に近づいたこと、許せません」

「団長、救世主様のこととなるとすぐ暴走するんだから……」


 イナトのやる気に満ちた表情に、ルーパルドは肩をすくめたのだった。


 近くのワープポイントの解放をするため、歩いていると伝書紙がイナトの手元に届いた。早速封を開け内容の確認をしているイナト。眉間に皺を寄せたイナトだったが、読み終わった後は何事もなかったかのように手紙をポーチへと入れ私を見た。


「救世主様、明日ゲムデース街に戻りましょう」

「そこに夢に詳しい人が?」

「はい。予約で埋まっているところを空けていただきました」


 その店は人気店で、いつも人で賑わっていると言う。夢占いや不眠改善治療などができるらしい。

 店は複数人の従業員が働いている。その中でも1番人気の店長が私の夢について興味を持ったらしく、すべての予約を次の日に回してしまったのだとか。ちょっとやり過ぎ感は否めない。

 

「まだ可能性だと言う話はしたのですが、救世主様に会ってみたかったこともあり、協力的でした」


 ひとまず安心だとイナトは顔を綻ばせる。私もこれ以上迷惑をかけられないし、よかったと安堵した。

 そんな矢先、アデルから伝書紙が届いた。香の準備ができたようだ。


「アデルさんが今日の夜までには香を届けてくれるって」


 イナトはさらに表情を緩めた。他人のことなのにこうも喜んでもらえると少しむず痒い。


 なお、アデルの手紙にはまだ続きがあって、ミマの呪いについて調べていると書かれていた。呪いの耐性があるアデルには発揮されていないようだ。

 しかし、弟子には効果があったらしく、少々厄介なことになっていると書かれていた。「呪いのために生き、呪いのために死ぬ」と言うほどの志だった者が、突如愛の告白をしたり、甘ったるい雰囲気を醸し出しながら近づいてきたり。

 突然増える恋仲や結婚。呪いの研究をやめてしまう者まで出始めたらしい。

 アデルとしては子孫を残すこと自体は賛成のようだが、呪いの研究をやめる者が続出するのは腹立たしいと憤怒。筆跡から伝わってくるのがまた可哀想に思えてしまう。


 しかもまだ問題がある。アデル用小説の完成はまだなのだ。食べ物や編み物などに限られている。

 ミマさんの呪い、怖すぎる。

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