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乙女要素のある死にゲーに転移してしまった件〜帰還エンドのはずが、様子がおかしい〜  作者: 勿夏七
13章

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76.花嫁立候補

 外は廃墟同然だったというのに、いざ入ってみると目を疑うほどの整頓された場所だった。

 新品同様のテーブルに椅子。床や壁に傷も汚れもない。何がどうなっているのかと戸惑っていると、奥の部屋から黒い鎧を纏い、黒のマント、黒の髪色をした男が現れた。案内してくれた魔族よりも大きな角を持っており、爪も長い。爪を切らせてもらいたいほど気になる。また、もう説明する必要もない気がするが、やはり魔王も顔が整っている。


「おお、本当に我の恋人に瓜二つだ」


 愛おしそうに私を見つめる魔王。少しむず痒い気分だ。

 魔王は私の元へと足を運び、頬を撫でる。ひんやりと冷たい手だ。魔王は私の頬に爪が触れないように注意してくれている。それだけ私と似た見た目をした恋人を愛していたのだろう。……まあ、魔王にも恋愛要素を入れたければ昔の恋人と類似した見た目にするのが手っ取り早いのだろう。

 いつもならイナトが前に出て牽制をしそうなものだが、魔王の威圧や迫力が凄まじい。手も足も出ないのは明確だ。もし私がイナトだったとしても同じく動けなかっただろう。


「名はなんと言うのだ?」

「凛です」

「リン……そうか。リン、か」


 まるで愛しい名を呼ぶように復唱する魔王。私は貴方の恋人ではないし、愛される理由もないただの敵だぞ。と思いつつ黙って魔王の気のすむまでじっとしている。頭を撫でたり軽く抱きしめたり。ぐるりと私の周りを歩き「やはり似ている」と満足そうに微笑んだり。


「長い間失礼」


 魔王は距離を置き軽く会釈をした。丁寧な人だと感心していると、魔族は驚いた表情を見せた。


「そのまま連れ去らなくてよかったんすか?」

「残念だが救世主の力がある限り、我にはどうしようもない」


 力がなかったらすぐにでも連れ去られていたかもしれない。すぐに感心するものではないな……。


「救世主リンよ。我の元へ自力で来い。我の前で跪き花嫁になると宣言すれば、世界くらい救わせてやる」

 

 勝つ気満々の微笑みに、私はどう返すべきか言葉に詰まる。あまり煽るような言い方をしないほうがいいかもしれないと理性が働いたからだ。思うがまま言ってここで殺されてはたまったものではない。

 だが、イナトは私の前に立ち、魔王を睨む。


「僕達はお前に負けない。首を洗って待っていろ、魔王」

「リンは渡さない」

「悪いな魔王サンよ。俺達欲張りなんでどっちも諦められないんだわ」


 ロクとルーパルドも私を隠すように前に立ち豪語する。

 そして、リンと結婚するのは自分だ! と3人揃って言い放った。

 ……かっこいいこと言っているところ悪いが、私は誰とも結婚する予定はないし、ここに残る予定もない。

 後で訂正させてもらおう。



 魔王は大笑いで廃墟を去った。これが強い者の余裕なのだろう。

 そのまま慢心していてくれと思いつつ、私は3人を呼び止める。


「さっき私と結婚するのは自分だ〜的な流れになってたけど、誰とも結婚する予定はないよ……?」

「やる気になってる時に水をささないでくださいよ、救世主さま〜」


 ルーパルドはしょんぼりとした表情を浮かべたが、私は譲らない。

 

「事実だし」

「救世主様の気が変わることを願っています」

「ちょっと待ってよ、イナトは元の世界に帰るの賛成してくれてたじゃん!」

「俺達の何が不満なんだ?」


 ロクは表情こそあまり変化がないが、そこそこ一緒にいる時間も増えているし、そのおかげで寂しそうに感じられるようになっているのだろう。どことなく眉は下がり、口角も悲しそうに下がっているような気がする。

 

「不満とかじゃなくてね? ただ元の世界が気がかりだから帰りたいって話なんだよ」

「元の世界の心配事がなくなれば戻って来てもいいということか?」


 そうロクが口にした途端、目から鱗が落ちたような表情をするイナトとルーパルド。


「そこ、それだ! みたいな顔しないで。この世界にまた来られるかわからないんだけど?」

「神様に聞けばいいではありませんか」

「いつまた私達の前に現れるかわからないよ」

「どうせまだ旅は続きます。きっと会えますよ」


 一気に神様に会ってどうにかしてもらおうという雰囲気となった3人。愛されている実感は湧くがここまでくると少々厄介な気分になってくる。

 もちろんこの世界の人に一生会えなくなるとなれば、私だって少しくらい躊躇いもする。だからと言って、ここに一生いることを選べるかというと、まだそこまで決心がついていないのも事実だ。


「その話はとりあえず置いておいて、ワープポイントの解放していこう?」

「はい。それが僕達の使命ですから」

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