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乙女要素のある死にゲーに転移してしまった件〜帰還エンドのはずが、様子がおかしい〜  作者: 勿夏七
13章

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75.魔族の誘い

 イナトからある程度アデルの話を聞いた後、ミマから質問責めにされるアデル。それを横目に、私とイナトはミマに出してもらったインスタントの紅茶と市販のマカロンをいただいていた。ミマの手作りとなるとまた呪われる可能性があるからだ。


「なんだあれは」


 やっと解放されたアデルは、くたびれた顔を見せた。

 それでも私達がミマから貰った飲食物をじっくりと眺め残念そうに「手作りでないと付与されないのか……」と言葉を漏らした。おそらく呪いが付与されていなかったのだろう。

 アデルのために用意されていた紅茶を飲み、マカロンを食べる。何かを確認するようにゆっくりと咀嚼するアデル。先ほど呪いの付与がないと言っていたはずだが、何か気になることでもあるのだろうか。

 飲み込み、紅茶とマカロンを交互に眺めていたアデル。そしてプロット作成中のミマへと言葉を投げかけた。


「ミマさん、これはどこで買えるんだ?」


 どうやらただ味が気に入っただけだったようだ――。



「ありがとうございました。完成したら直接アデル宛にお願いします」

「わかったわ。アデルさん、完成は1ヶ月くらいになると思うの。待たせてしまって申し訳ないけれど……」

「気にしなくていい。それより、時々で構わないのだが、手作りの物を送ってほしい。料理でも物でも構わない。呪いの付与状況について調べたいからな」


 指輪が調べられない代わりに、手作りのものには全て呪いがかかるのか調べることにしたようだ。

 アデルは言いたいことを言った後、「さっさと帰るぞ」とミマからもらったお土産を片手に私達を急かした。


 またワープポイントを辿り、ジュ村へとアデルを帰した。アデルは挨拶もせずに家へと一直線。そのあまりの速さにジュ村の人々はアデルが帰ってきていたことさえ気づいていなかったほどだ。


「アデルさんって、ちょっとロクに似てるよね」

「どこかだ。あれと一緒にするな」


 ジト目で私を見たロク。興味のあるものには一直線。周りの目を気にせず質問をしたり調べたりする姿はかなり似ていると思っている。だが、ここで説明をしてもいい気はしないだろう。


「ごめんごめん。ロクはアデルさんより視野広いもんね」

「……そう言う問題じゃないような気がしますけど」


 ルーパルドは呆れ気味に私を見てそう言った。



 ◇



 ゲムデースのワープポイントの解放を再開した。順調に事を進めていたが、廃墟同然の建物を通り過ぎようとしたところで魔族が現れた。

 その魔族は私達がスタート国の神殿で出会った魔族だった。魔族は私達が助けたウルフの上に乗っており、笑顔で私に手を振っている。ウルフもワンと調子の良さそうな一鳴きをした。


「久しぶりだなお前ら」

「ねえ、ほんとにあれ敵? すっごく友好的なんだけど」


 イナトに耳打ちをするが、イナトは迷う事なく「敵ですよ」と頷く。以前話していた歴史の授業による賜物だろう。

 魔族は反応を返さない私達を見て訝しげな表情をしていた。


「なあ、魔王様に会ってみる気はないか?」


 少し近寄って来た魔族。だが、イナトが武器に手をかけたところでその場に留まる。歓迎されていないことを察した魔族は少しだけ残念そうな表情を見せた。

 

「……私、一応魔王討伐のために旅してる側なんだけど」

「今のあんたらじゃ勝てっこないし、魔王様に武器を構えなければ五体満足で返してやるからさ」


 「会うだけだって!」と魔族は無邪気に笑う。かなり素直そうな魔族だが、本当に信じていいのかはわからない。

 ただ、魔族の言う通り、私達の今のレベルではきっと魔王に勝つことはできないだろう。エンドラスト国で何かしら魔王を弱らせるための封印を解かないといけないと聞いているし。


「会うって言っても、どこで会うつもりだ? まさか魔王城とは言わないよな?」


 首をかしげるルーパルドに対して、魔族は数回頷いた。

 

「そこなんだよなぁ。魔王様は城で良いって言ってたんだけど、他の奴らがよく思ってなくって」


 どのような原理かは知らないが、魔王城は隠されているらしい。そんな場所に招いてしまうとなると、場所がバレ一部ではあるが内装がバレ、何かしら策を講じられる可能性がある。この魔族と魔王は魔王城の招待に対してさほど問題ないと捉えているようだが、その他の魔族の方がよっぽど考えているように感じる。

 まあ、それだけこちらが舐められていると言う事なのかもしれないが。

 

「そりゃそうだろう。俺達は敵なんだから。だが、もし魔王城に入れるのなら入りたい」


 ロクはそう言いつつも、魔王城に興味があるのだろう。素直な言葉を魔族に話した。あまりにも素直すぎるが、魔族はその姿勢が好ましかったのか嬉しそうに笑う。


「興味あるよな!? あんた、いい趣味してるぜ」


 ロクが側にいたら肩でも叩いてそうな勢いだ。


「ま、城が無理ならってことでこの廃墟にあんたらを招待することにしたわけよ」

「この廃墟に?」

「おう、中は問題なく使えるからな。魔王様にはすでに許可は取ってある」


 そう言って魔族は廃墟に何か魔法を唱えた。一瞬廃墟が輝いたがそれだけで特に何か変わった様子はない。


「ささ、入ってくれ。魔王様が中でお待ちだ」


 仕組みはさっぱりだが、召使の用意してくれるものと同じ類のものだと思えば気にしても意味がないように思える。

 私達は警戒しつつ廃墟へと足を踏み入れたのだった。

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