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乙女要素のある死にゲーに転移してしまった件〜帰還エンドのはずが、様子がおかしい〜  作者: 勿夏七
12章

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71.解呪魔法を覚える必要

 皆と別れて解呪魔法を取得する事になってしまった。去り際にイナトから何かあれば通信機で連絡をと言われたが、そこまで警戒が必要な相手なのだろうか。

 

 私は眼帯の男に本人の家らしき場所まで連れて行かれた。

 部屋へと入ると草花や動物、薬品を入れるための小瓶など乱雑に置かれている。足の踏み場がないほどに物が置かれているが、眼帯の男は踏むな蹴るなと無理なことを言う。

 細心の注意を払いながら、なんとか少し開けた場所に辿り着いたかと思えば椅子に座るよう促され窮屈な椅子に座らされた。キシキシと悲鳴を上げる木の椅子に私は学んでいる最中に壊れたりしないかと不安になる。それよりも魔法の取得方法を気にしなければいけないと言うのに。


「さて、自己紹介がまだだったな。ワタシはアデル。一応この村の長をしている」


 私も自己紹介をしようとしたが、「君のことはすでに聞いているから自己紹介はいらん」と言われ、アデルはティーカップに紅茶を注いだ。

 2人分のためおそらく私にも入れてくれたのだろうが、どうも飲む気になれない。テーブルを挟んで腰をかけているアデルは、紅茶を優雅に飲んでいる。まるで貴族のような所作だ。じっと眺めていると、アデルは表情1つ変えずに「紅茶は好きではなかったか」とポツリと呟く。


「いえ、そうではないんですが――」

「君は実に素直だな」


 言わずともわかると言いたげな顔に私は口を閉ざした。アデルは私の前に置いていたティーカップを手に取り飲んでみせた。そしてまた少し紅茶を追加して私の前に置いた。


「毒味をした。これなら安心だろう」


 安心かもしれないが、口をつけたものをそのままくれるとは思わなかった。

 アデルは口を閉じ私が紅茶を飲むのをじっと待っている。飲まないと話が進まなさそうだとカップを取り、ひとくち。

 アデルはそれを見届けた後、突然クッキーを取り出し食べるよう勧めた。イナトから聞いたイメージとは違い、優しそうに感じるが慣れてくると本性を出してくるタイプなのだろうか。勧められたクッキーを齧ると、突然全身が熱くなり頭がぼんやりとしてきた。


「え、な、なんですかこれ」


 慌てて状態異常回復で解除し事なきを得たが、アデルは興味深そうに私を見つめていた。


「まず、紅茶に呪いを仕込んだ。だがそれは、反応もなく君の体内で浄化された。次に、クッキーには媚薬を少量混ぜた。君は即座に反応し回復を行った」


どちらも最悪な状態異常だ。優しそうというのは今ここで訂正させていただきたい。


「呪いはわからなくもないですけど、なんで媚薬?」

「ワタシが試作したんだが、誰も試飲してくれなかったのだ。また、イナトは君のことが好きなようだからワタシに縋る姿を見せつけてやれたら面白いだろうと思っただけだ」


 他意はない。と紅茶とクッキーを回収するアデル。

 目の前でティーカップに付着した唾液の採取を始めた。本人の目の前ですることではないだろう。そもそも私は解呪魔法を教えてもらいにここに来たはずだ。


「あの、私は解呪魔法を教えて貰おうと思って――」

「ああ、そうだったそうだった」


 手早く採取した後、それらを全て床へと丁寧に置き、アデルは別の物をテーブルに置いた。それは針と理科のお皿(シャーレ)だ。何をするつもりなのだろうかと思っていると、手を取られ人差し指に針を刺された。

 まるで注射の針が刺さったような感覚だ。指を強めにつねられて、シャーレに血を落とした。

 すぐにシャーレを取り裸眼で眺めている。顕微鏡とかそういうものはないのだろうか。


「ほう、救世主は血や唾液でも解呪が可能なのか」

「見ただけでわかるんですか?」

「眼帯で隠している目は視力はないが、別の意味で力を発揮できるようになったのだ」


 アデルは眼帯をしたまま成分を確認することができるらしい。いや、見えすぎるから眼帯で制御していると言った方が合っているようだ。

 シャーレに蓋をして、血の出ている私の指を眺めた後、口に含む。


「ちょ、ちょっと」

「ふむ。特段変わった味や匂いはないな。ただの血だ」


 アデルに掴まれていた腕を振り解く。だが、アデルは気にしていない様子で、私の血をじっくりと口の中で味わっているようだ。

 私の血を飲み込んだ後、アデルは不思議そうに首を捻る。


「君、これがあるのに解呪魔法を覚える必要はあるのか?」

「必要だから来てるんですよ……」

「なぜ? 血は君が傷を負う必要があるが、唾液であれば別に難しいこともないだろう」

「唾液を飲みたい人がいると思います!?」

「ワタシなら飲む。効能に変化がないのなら、飲み物に混ぜて飲めば問題ないだろう?」


 誰もが人の唾液が飲めると思わないでほしいし、唾液を飲ませたいと思うはずがないだろう。血だって好んで飲むのは吸血鬼くらいだろう。……ロクは別として。


「解呪魔法を教えるのは簡単だが、発動には面倒な素材の用意や呪文が必要だ。特に素材は手に入りにくくてね。だからこそ、ワタシは血と唾液で済むのならそうしたほうがいいと言っているんだ」

「その素材って、そんなに手に入りにくいものなんですか……?」

「ああ。だから今もワタシはもっと簡単に解呪できる方法を探している。君が手伝ってくれればきっと良い方法が見つかると思っているんだが……どうだろう?」

「それで負担が減るのなら考えますけど……あ、ちゃんとこの村以外の人にも教えてあげてくださいね?」

「そのくらいお安いご用だ。それでは、手伝ってくれるという事でいいか?」

「はい」

「言質、取ったからな」


 アデルの不敵な笑みを見て、私は間違った回答をしたような気がしてきた。

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