69.推奨年齢
なんとかハグや甘い言葉のみで呪いが解けたようで、イナトはスッキリした表情を浮かべていた。
だが、私を見るたび気恥ずかしそうにする。私も恥ずかしくなるのでやめてほしい。
このまま帰ると誰かと鉢合わせる可能性や、顔の赤みで色々と言われそうなので熱を冷ましてから部屋へと帰ることにした。
その間に呪術オタクが多いと言われているジュ村についての話とジュ村に持っていく荷物の準備を手伝うことになった。
「ジュ村の人々は呪いであればなんでも喜んで受け取ります。なのでこれを渡します」
「うわ、なにそれ」
頑丈なケースから取り出されたのは、禍々しい邪気を纏っている短剣だ。その短剣はゲムデースに保管されていたものなのだそう。扱いに困っていたが、解呪魔法を取る予定と分かった時点で持ち出していたと話す。
「それ、大丈夫なの?」
「この短剣は使うことで呪いを発動するものです。切ったりしない限りは大丈夫ですよ」
イナトは私に見せた後、短剣をケースに入れ鍵をしっかりと閉めた。いつでも取り出せるようにと、私はメニューを開き、イナトの持ち物欄にそのケースを置いた。
「もしかして、呪いを解きたかったのって、ジュ村で何されるかわからないから?」
「それももちろんあります。救世主様がいなければ、実験体になれと言われていたでしょうね……」
ため息を吐き、くたびれた様子のイナト。
どうやらイナトはジュ村の人と関わりがあったようだ。
以前、ゲムデースで呪いを受けた者が複数人いた。その治療のためにジュ村の人間へと頼んだのがきっかけだとか。呪いの人間を見て早々に実験していいか、解剖していいかなど人権問題が発生しそうなことまで言われ、かなり時間を要したと。駄目な理由を並べてもなかなか納得してもらえなかったのだと険しい表情でイナトは言った。
「お金と、過去によく使うと言われていた素材を――」
素材の中には最近倒した花の魔物の花粉もあった。いつの間に小瓶なんかに入れていたのだろう。全然気づかなかった。
必要な素材を揃えてから、イナトは最後に伝書紙を書き、空へと飛ばした。事前にジュ村に伝えておくのだろう。
熱も冷め、ジュ村に行くための準備も終えたので、私は部屋へと帰ることにした。バレないうちに帰ろうと思ったが、イナトの部屋を出て少し歩いたところでロクと鉢合わせてしまった。
私はすぐにジュ村に行くための準備を手伝ったことだけを話した。ロクは疑いの目を向けていたが、私が他に何も言わなかったためか、無表情となり口を開いた。
「あの金髪に度胸があるとは思えないな」
自身でそう言って納得をしたロク。
更にロクにとってイナトは、融通が効かない男だ。リンに好意はあるが、奥手で手が出せない小心者だと話した。
否定できない内容に失笑してしまう。ロクは人をじっくり観察している甲斐もあってかよく理解している。
「イナトは紳士なんだよ」
フォローとしてそう言うと、そういう言い方もあるな。と頷き、気が済んだようで、ロクは自分の部屋へと入っていった――。
なんとか切り抜けて自分の部屋へと戻った私。
部屋に置いていた通信機には通知が複数あった。それはアズミとマリエがグループチャットで私の状況について質問を投げかけていたものだった。
旅は順調なのか、痛い思いをしていないかなど心配してくれている内容が多かった。楽しくやっていること、大変だったことなどを語る。そうしていると、突然マリエから誰と良い雰囲気なのかと言う話へと流れた。
私はこれまであったことを教えられる範囲で話した。もちろんスキンシップに関してはあまり話せていない。が、マリエはクロノダの攻め方に『刺激的ー!』と興奮気味だった。
『戦闘は18歳以上、恋愛は17歳以上推奨だからだろうね』
アズミの言葉に私は通信機を落としそうなほど困惑してしまった。グロテスクだから18歳以上ということは知っていたが、まさか恋愛にも推奨年齢があったとは知らなかったのだ。
「そんなこと、どこに書いてた?」
『雑誌に特集載ってた』
事前に情報を仕入れていなかった私は驚きで指が止まる。ライトな恋愛を楽しみたいと思って買っていたものが、戦闘の刺激と恋愛の刺激どちらも網羅しているとは思っていなかった。
『あと、主人公にはモテまくってもらいたいからって皆ちょろいんだって』
『もちろん一途がよければ意中の人だけパーティーに入れれば良いって言うのも書かれてたよね』
「2人ともしっかり読んでるなぁ」
逆ハーレムは乙女の夢とはよく言ったもの。
自身でキャラの入れ替えができるので、好みのパーティーで旅ができる仕様なのだとか。
ゲームでは箱に男を待機させるか、そのキャラがいる街や村に行って誘う方法があるらしい。もちろん箱にいるキャラの方が親密度の上がりは高く、好きなキャラを箱に入れてしまうのが簡単な攻略方法だと。
「何もかも雑なゲームだなぁ!」
『でも、戦闘難易度は高めにしてるらしいから死にゲーとしては成功らしいよ』
「そこは私にとって嬉しいところだね……」
このゲームを無事攻略できるのか、私は今更ながら不安になってきたのだった。




