65.洞窟での出会い
まずはスタート国の洞窟を終わらせることになった。鍵も手に入ったし、わざわざ滝裏まで移動する必要は無くなったのはありがたい。
洞窟は残り2つ。ゲムデースと比べると土地も狭いからか数が少ない。これなら早めに終わらせられるだろう。
地下へと続く封印と洞窟の封印を解いて洞窟内部へ。
足を踏み入れた瞬間景色が変わり、洞窟とは思えないほどの光がそこにはあった。空があり、太陽もある。草原にはのどかに暮らす動物達。
そして人型を模した光――。
「神様!?」
「はーい、神様だよ。久しぶり〜。順調みたいだね」
相変わらず光ってばかりで見た目がわからない。性別さえもわからない。
「いつでも見てるわけじゃないんですか?」
「いやー、それがダメなんだよね〜」
神はどうやらあまり干渉できない立場にいるらしい。短期間で3人も救世主を呼び込んだのが悪かったようだ。力を使いすぎた結果、時々様子を見にくる親戚のような存在になっていると神は語る。
「まさか神様と対面できるとは……」
「見た目はただの発光人間だけどね」
神々しい何かを見ているようなイナトだが、神は「あはー」と気の抜けた声で笑う。
「ところで、何回死んだ?」
「2回、ですね」
突然神に耳打ちされた。死んだ回数なんて他の人が聞いても理解できないだろうから間違った対応ではない。しかし、とても眩しい。
死んだ回数が少なかったことに喜んでいるのか神は拍手をして私を褒めた。
「すごいね! 強い男を早々に仲間にできるよういじってよかったよ」
やはりイナトやルーパルドは本来ゲムデースに到着してから仲間になるタイプなのかもしれない。ロクは殺しで雇われているのでいつ来る予定だったのかは謎だが。
神は私と距離を取り、指を1本突き出しこう言った。
「ここで1つ、教えておこう」
表情は見えないが、得意げな物言いで神は言葉を続ける。
「洞窟に篭っても解呪魔法はありません。大人しく呪術オタクが集まってる村に行こう!」
「じゃあ、洞窟に入る理由ないってことです?」
ルーパルドは解呪魔法がないと聞いてやる気が削がれたのか、苦笑いを浮かべながら神へ質問した。神は「そんな嫌そうな顔しないで〜」と明るい声のまま言う。
「救世主強化の洞窟だから、攻略すること自体はお勧めだよ。でも、解呪はここじゃない」
神はそう話した後、突然手首を見て「時間が押してる! じゃ」と姿を消した。腕時計でもついているのだろうか。光っていてわからないけれど。
「……とりあえず、ここの洞窟の最深部まで行く?」
「これはどこが最深部なんだ?」
ロクはぐるりと辺りを見渡し肩をすくめた。
奥が見えないほど広々とした空間。全方位行き止まりは見つからず、どの方角に進めばいいのかもわからない。足元には複数道があるが、道案内看板はない。
ミニマップを確認してみるが、宝箱のマークはミニマップの範囲では見つけられない。
「1つ1つ確認する他なさそうですね」
道は3つ。この広さで3つしか道がないのは良心的な部類だろう。だが、本当にその道でこの空間を網羅できるのかは不明だ。
『リンー! おーい』
どの道を行こうかと考えていると、機械のような声が聞こえてきた。その声は少しずつこちらに近づいてきている。
『追いついた!』
「小型ロボット……?」
『わたしだよ。アズミ』
アズミの声とは違うが、読み上げ音声なのだろう。
それにしては返信が早いが、アズミはタイピングが得意だ。だからこそできる芸当だろう。
「アズミ? いつのまにマルチロボを作ったの?」
ワープポイントを欠かさず毎日見ていると、マルチ用ロボットの素材が手に入ったらしい。素材が揃ったのでロボットを作り、フレンド探知機能でここまでやってきたとアズミは話す。
「操縦できる機械ですか……」
この世界の機械は貴重なもの。通信機もそうだが、あまり一般的には出回っていないものだと書いていた。
物珍しそうに眺めているイナト。ルーパルドやロクも少し遠くから見ている。おそらくアズミへの配慮だろう。
アズミは小型ロボットの中から取り出したとは思えないほどの料理を空に浮かせた。
「料理?」
『これはマリエからだよ。個数制限はあるけど、マリエの料理はバフ効果あるし食べて欲しいって』
アズミはマリエとちょくちょく話をしていたらしく、私の力になりたいと作ってくれたのだそうだ。一緒に旅はできないが、嬉しい。
料理の説明欄には、攻撃力など一時的なステータスアップのものや魔法力の回復などがあった。これは便利だ。
「ありがとう、アズミ。マリエにも伝えとこ」
マリエに通信機でメッセージを送っておく。
「そうだ、来たついでにこの周辺のことってわからないかな?」
『探索だね。ちょっと待ってて』
小型ロボットは無言になったが、その代わり機械音が鳴っている。
「ますます便利になりますねぇ」
「この調子で順調に進めばいいんだがな」
ルーパルドの言葉にイナトは少し不安そうな声で言う。何か嫌な予感でもしているのだろうか。そういうのはフラグになるのでやめてほしい。
「……」
ロクは機械に浮かび上がっている文字と睨めっこ。私にとっては馴染みのある文字だ。しかし、ロクには理解不能のようで眉間に皺を寄せていた。




