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乙女要素のある死にゲーに転移してしまった件〜帰還エンドのはずが、様子がおかしい〜  作者: 勿夏七
10章 カジ村

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59.一件落着?

「クロノダさん! クロノダさん降ろしてください!」


 ジタバタと暴れているつもりなのに、ビクともしないクロノダ。これが力の差か……。

 どこまで連れていかれるのだろうと思っていると大木の側でやっと降ろしてもらえた。

 村から少し離れており、その村から隠れるように大木の後ろに回っている。

 どうして私をここまで連れて来たのかと聞く前に、クロノダに叱られた。

 

「あんた、あれが何を意味してるのか、わかってんのか」

「私はただ止めたくて……。あの言葉を言って割り込めばいいって聞いたから――」

「あのジジイ。どんだけ騙し討ちすれば気がすむんだ」


 クロノダは頭を押さえ、ため息を漏らした。

 どうやらクロノダの曽祖父が最初に言っていた一妻多夫は冗談ではなかったらしい。

 あの言葉を言ったということは、全員婿にしますよみたいな意味なのだそう。

 知らなかったのだからしょうがないと言って終わらせられたらよかった。だが、私が素直にそれを複数回実行してしまっていることもあり、冗談では済まないかもしれないとクロノダに脅された。

 もう人間不信になるかもしれない。


「リン、あんた救世主として今旅をしてるんだろ?」

「そうです。だから、仮にクロノダさんと結婚してもここに留まることはできませんよ」

「それで、だ。あんたが世界を救ったら俺の嫁になる。ていう約束をしたことにするのはどうだ」

「それは、約束を破る前提でもいいんですか?」

「ああ。そうすれば俺は結婚の話を持ちかけられなくなるし、お前はこの場を凌げる」


 悪くない話だろ。とクロノダは悪い表情を見せた。どれだけ周りから結婚しろと言われていたのかは知らないが、それでクロノダが納得するのなら私から何も言うことはない。破棄前提であれば、特に私が気にする必要もないし。

 私は了承し、一緒に村へと戻る。


 村近くまで来ると、すぐにイナトが私を見つけクロノダから引き離した。

 どれだけ探し回っていたのか、息を切らし、汗をかいているイナト。必死に探してくれていたことに対し、申し訳なさと嬉しさが湧いて出てしまう。


「何もされてませんか!?」

「大丈夫だよ。話してただけ」


 その言葉を聞いて、よかったぁとその場でしゃがみこむイナト。

 だが、私が先ほどクロノダと話したことを伝えると、すぐに立ち上がり険しい顔をした。

 これだけ騙されているのにクロノダのことを信じるのかとイナトを筆頭に、ルーパルドとロクも否定的だ。

 もちろん私だってなかったことにしたいのは山々だ。


「騙されてたってことでチャラにならないんです?」

「村の連中はそこらへんうるさいからな。ほら、もう準備万端じゃねぇか」


 用意された席を指差し、クロノダは苦笑い。早くこっちに来てくれとクロノダの曽祖父はうきうきで自分の席で待っている。他の人々も主役が席に座るのを待っている。

 これ以上待たせるとせっかく用意してくれた温かいご飯も冷めてしまう。


「ま、パーティーくらい参加してやってくれよ。お祭り騒ぎしたかっただけのやつもいるし」


 クロノダは指定された席へと座り、私に隣へ座るよう手招きをした。

 クロノダの隣に座ると歓声があがり、並々注がれたお酒を持たされる。

 「騙してごめんね」と言ってくれる人もいれば、「クロノダとお幸せに」と冗談なのか本気なのかわからないことを言ってくる人もいた。他に、「美味い飯を救世主様に振舞えて嬉しい」「豪華な飯が食えて幸せ」とただ乗っかっただけの人もいたり。私とクロノダの結婚を本気にしてない人もいることが救いかもしれない。


 全員が席に着き、乾杯の音頭を取り、好きに飲み食いを始める。お酒やお勧めの料理を持って来る人もいたが、次第にそれはなくなり皆お酒に飲まれ、最後は眠ってしまった。


 イナトは酔いを覚まして来ますとふらふらの足取りで席を離れた。ルーパルドは酒瓶を抱きかかえ眠ってしまっており、ロクはいつのまにか席にいなかった。ミニマップにロクの姿は映っているので、そう遠くには行ってないようだ。


「酒、強いのか?」

「そんなに強くないですよ。注がれないように少しずつしか飲まなかっただけ」

 

 席を離れていたクロノダは、相手をしていた人が眠ってしまったようで私の隣に戻ってきた。

 小さな瓶に入っているお酒を、私がさきほどやっと空にしたグラスへ有無も言わさず注いでいく。


「これは?」

「甘い酒。強い酒じゃねぇから食後のデザートだとでも思って飲みな」

 

 わずかにフルーツの甘い匂いがする。果実酒のようだ。一口飲み、口に広がる甘さに酔いが深まってしまった気がした。

 少しぼんやりとするなと思っていると、クロノダは私を見て笑っていた。

 強い酒じゃないと言うのは嘘だったのか、それとも私がすでに酔っていただけなのか、もうわからない。


「もし気が変わったら、本当に嫁に来いよ」


 耳元でそう囁かれ、頬にキスを落とされ熱が頭のてっぺんまで湧き上がる。

 冗談なのか本気なのか、私は聞くよりも先に眠気に負けて瞼を閉じた。

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