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乙女要素のある死にゲーに転移してしまった件〜帰還エンドのはずが、様子がおかしい〜  作者: 勿夏七
9章 フクロウとの対決

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53.毒の抜き方

 フクロウがいた場所へと戻ると、すでに移動していた。赤い光は森の奥を指している。


「この森からは出ないようなので、遠くまでは逃げていないでしょうね」


 イナトはフクロウが食べていた物の確認へと歩みを進めた。私も後をついていき、そこにあるものを見て思わず口を手で覆った。

 人間か動物かもわからない肉片や折れてしまっている骨。木の実やフルーツの汁らしきものもあるが、どれも原型は留めていない。見ていると気分が悪くなってきそうだが、イナトは平然とそれらを観察している。

 アズミは私の表情で察したのか、近寄ろうとしない。むしろ戻っておいでとでも言うように困った顔をしていた。


 アズミの元へ戻ろうとしたところで頬を風が掠める。凶器でも飛んで来たのではないか思うほどのそれに、後ろを振り返る。そこには羽が突き刺さっていた。元々あったものなのか、それとも私の頬を掠めたのは羽だったのか。

 それは落ちる影により確証に変わる。今私がフクロウに狙われたのだと。


「ルーパルドとロクは同時に目潰しよろしく! 私はこのまま囮になるから」


 2人は頷き同時に投げた――かと思いきやロクの投げナイフが先に目を貫き、同じ場所をルーパルドの槍が目を抉る。


「ちょ、どう考えたって右にいる俺が右目だろ!」

「知るか。もう一方も同じようにすれば解決だろ」

「ちっ、でたらめな奴め」


 投げナイフと槍はもう一方を潰し、フクロウは悲鳴を上げようと口を開いたがロクがルーパルドの投げ槍を奪い喉を潰した。悲鳴もままならなず、フクロウは地面へと落ちジタバタと悶え苦しみ目や口から血を流している。


「やだやだ、グロいよぉ!」


 アズミの近くに落ちてしまった故、アズミは大慌て。走って距離を取り、魔法の杖を振り回し何度も光魔法をぶつける。

 イナトも加勢するようにアズミの隣に立ちアズミが唱えている隙に打ち込む。私も早くとどめを刺してしまおうと魔法を打とうとしたところで身体に痛みが走り転びそうになった。しかしロクが抱きとめてくれ、なんとか持ちこたえた。


 

「――なんとかなったか?」


 ピクリとも動かなくなったフクロウに近寄り、ルーパルドは槍で頭を突く。息はすでに絶えているようで突かれても動くことはなかった。ハプニングもあったが、苦戦することもなく倒す事ができた。

 安堵したが、私は魔法を出そうとするたび何かに邪魔され一度もフクロウに攻撃できなかった。


「ごめん、私何もしてない」

「そんなこと言わないでください。囮になってくれたおかげで上手くいったんですから。それより……頬から血が流れていますが、大丈夫ですか?」


 私の頬を白くて綺麗なハンカチで拭おうとしたところで私は制する。


「大丈夫。ただ、ちょっとビリビリする。麻痺かな」

「それなら休憩場所に行きましょう。僕が連れて行きます。ルーパルド、僕は先に救世主様と湖に行く。後は頼んだ」

「わかりました。周辺を確認してから俺達も湖に向かいますね」


 ルーパルドは2人と話し始め、イナトは私を抱きかかえ歩き始める。


「や、あの、自分で歩けるから」

「痺れているのでしょう? それなら無理に動かない方がいいです」


 軽々と持ち上げ、嫌な顔1つせずイナトは湖まで運んでくれ、血を洗い流してくれた。

 傷口に触れられるたび痛みが頬から身体中に駆け巡る。イナトは私の表情を見て、悲しそうな顔をした。


「すみません。痛いですよね。僕は状態異常回復を持ち合わせておりません。ですが、おそらく救世主様は自身で治療が難しいかと思います」

「そうだね。魔法を唱えようとしても麻痺のせいなのかできなくて」

「やはり、ですか。では、僕が抜いてみせましょう。原始的なもので申し訳ないのですが……我慢してくださいね」


 頬にイナトの唇が触れ、傷口を吸って、それを吐き出す。治療行為だとわかっていてもゾクゾクとする身体に、吸う音やイナトの吐息にドキドキしてしまう自分に嫌気が差す。

 身じろぎをする私の頭や体を固定し、イナトは行為を続ける。このままでは冷や汗が出てしまいそうだ。


「どうですか? 少しは良くなりましたか?」

「た、たぶん……?」


 行為に意識が持って行かれてしまい、今も自分が痺れているのか判断がつかない。この震えは、心拍数は、痺れのせいなのか行為のせいなのかどちらだろう。混乱している私にイナトは微笑みかけた。


「では、もう少し続けましょうか」

「も、もういいです! だいじょうぶ――」


 勢いよく立ち上がり、元気アピールをしようとしたら足を滑らせ湖にドボン。恥ずかしいからこのまま沈んでしまいたい。

 だが、きっとイナトが心配して湖に入って私を助けるだろう。湖から顔を出し、酸素を確保。

 あとは陸にあがればいい。しかし、泳ごうにもまだ微妙に痺れが残っているのか、陸に戻れない。

 私の様子を見ていたイナトだったが、すぐさま飛び込み私を救出してくれた。……情けない。


「本当に、目が離せないお方だ」


 その時私の頬にキスを落とされた気がしたが、きっと治療行為だったのだろう。

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