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乙女要素のある死にゲーに転移してしまった件〜帰還エンドのはずが、様子がおかしい〜  作者: 勿夏七
7章 洞窟

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47.最後の洞窟

 早朝はイナトとジョギングをすることになっている。

 床でまだ眠っているルーパルドを起こさず、私は手紙を側に置いて部屋を出た。

 

 寝てしまったルーパルドを私が動かせるわけもなかったので、床に布団を召喚しルーパルドを転がして布団の中へ入れておいたのだ。


 あんなことをされたのに、私はなんて優しいのだろう。なんて気持ちでイナトの待つ庭へ。

 ここにあるのは家と見晴らしのいい景色だけ。青い空に瑞々しさのある草花、そして心地の良い日差しで私たちを照らしてくれる太陽。

 ジョギングにはもってこいの場所だ。

 

 イナトに軽い挨拶を済ませ、2人でジョギングをする。

 イナトは私に合わせて走ってくれる。だからなのだろう私だけ息が上がり、ものの数分で息が切れていた。


「ちょうど良いのでここまでにしましょう。お疲れ様でした」

「全然、疲れてないね……」

「鍛えてますからね」


 さらりと答えるイナトに何度目かの頼もしい男だなぁの気持ち。

 正直ゲーム的にスタミナは無制限、またはそれなりにあると思っていた。だが、そんな補正は一切ないようで、オフィスワークの私にはかなりきついものがあった。平坦な場所であればまあまあ歩けたはずなのだが。


「今日でやっとゲムデースにある洞窟が終わるね」

「ルーパルドは大丈夫でしょうか。使い物にならないようならロクと留守番を頼むことにしましょう」

「ああ、ルーパルドの呪いなら――」


 解けたよ。と言いかけたところで私は口を閉じた。

 どうやって解いたのか、いつ確認したのかなど説明ができないと判断したからだ。

 代わりの言葉を考えるのに時間がかかったせいで、イナトは訝しげにこちらを見ている。


「なら? なんですか」

「ルーパルドの呪いはロクとは違って疲労系? みたいだからもしかしたら解けてるかもしれないね〜、と……」


 なんとか誤魔化し家へと入る。

 すると、ルーパルドの大きな声が響く。


「だーかーらー! あれは事情があるんだって言ってるだろ!」

「事情なんか知らない」

「何があったんだ?」

「あ、団長」

「……」


 ロクとルーパルドはイナトから話しかけられた途端、口を紡ぐ。

 何の話なのか今の一部ではイナトにはさっぱりだろう。恐らくルーパルドが私の部屋から出てきたのをロクが目撃したのではないかと思われる。

 

 ロクは私の部屋に近づかないようにと釘を刺されている。それなのに私の部屋前まで行ってしまい、部屋から出てきたルーパルドを目撃。

 本当はルーパルドが私の部屋から出てきたことを言ってしまいたいが、バレてしまうので言えない。

 そしてルーパルドもルーパルドで、ロクが部屋に来ていたことを言えば、詰められること間違いなし。だからこそ2人揃って黙っているのだ、と。


「く、くだらない喧嘩なので団長は気にしないでください。……な、渡者」

「そうだ」


 こういう時だけ息をしっかり合わせられるようだ。

 全貌を知っている私としては面白い光景だった――。



 呪いが解けいることをもう一度確認し、イナトとルーパルドは安堵していた。

 しかし、ルーパルドは私を見て顔を引き攣った。


「俺、救世主さまに確認したいことがあるんですけど……」


 私に近寄り小声で不安そうに言うルーパルド。もし昨日のことであればイナトに聞かれるわけにもいかない。

 だが、これから最後の洞窟に行かなければならない。


「洞窟攻略した後でもいい?」

「もちろんです。できれば団長と渡者に見つからないようにしたいですね」


 私もルーパルドには聞きたいことがある。それも2人には聞かれないようにしたい話。

 本当は今すぐに昨日のことを問い詰めたい。

 昨日のせいでルーパルドが近くに来ただけでドキッとしてしまった。

 それなのに、ルーパルドは自分が何をしたのか覚えていなさそうなのが更に腹立たしい。

 平静を装っていることを誰かに褒めてもらいたいほどだ。



 ◇

 


「嘘だと言って……」

「現実を見て、救世主さま……」


 最後の洞窟を終わらせ宝箱を開けた。

 そこには何も入っておらず、代わりに煙が溢れ出し気づけば知らない場所にワープしていたのだ。

 暗く静かな場所。洞窟と言うより、窓や扉のない家の中のようだ。壁や床は木でできており机や椅子、棚が最小限設置されている。


「密室のようですが、この程度なら壁を破壊してすぐ出られるでしょう」

「壊して大丈夫かな?」

「何かあれば弁償すればいいんです」

「金持ちは言うことが違うなぁ」


 イナトは悩むことなく壁を破壊し外へと出る。

 曇天のせいか全体的に雰囲気は暗い。


「まさか最後の洞窟がハズレだなんて思いもしませんでしたねぇ」

「神官に挨拶する手間が省けて助かった」


 イナトはゲムデースに転移できる道具を取り出し私を見た。


「ゲムデースに戻りましょうか。転移魔法なら使えますよ」

「そうしようか。平原ばっかりで何もなさそうだし」


 念のためマップを確認した。

 この場所は召使のアップグレードをしていないはずだが、モヤはなく地形が表示されていた。

 ミニマップを見ても特に宝箱や敵は表示されない。

 ハズレ用の場所にあたるのかもしれない。


 イナトのおかげで難なく外へ出てゲムデースに戻ることになった。

 ……もしかしてイナトの道具がなければ路頭に迷っていた可能性もあるのではないか?

 ワープポイントの利用はワープポイントを介してする必要がある。

 ここにはワープポイントは存在しない。


「もうイナト無しじゃ生きていけない気がしてきた……」

「救世主様!?」


 顔を真っ赤にして私に熱い視線を送ってきたのは、見なかったことにしておく。

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