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乙女要素のある死にゲーに転移してしまった件〜帰還エンドのはずが、様子がおかしい〜  作者: 勿夏七
7章 洞窟

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43.純粋無垢

「なんでそうなるの!?」


 体を近づけてもらえれば、私の手がイナトの背中に届きスライムを倒せるかもしれない。という気持ちで言っただけなのだ。

 それなのにどう思考すればそんな発言が生まれてくるのか。

 冷や汗なのかスライムの液体なのかわからないが、イナトはだらだらと顔から水滴を垂らしている。

 さっきのいかがわしい雰囲気はどこに行ったのだろう。今は大量に汗をかくヤバそうな男になり果てている。


 イナトは背中を右の壁方向へと持っていく。そして、上で飛び跳ねているスライムごと壁にぶつけことなきを得た。


「そうすればよかったんだ……」

「お騒がせ、しました」


 私から離れ、イナトは背を向けた。しゃがみ込み、頭を抱えている。耳が赤くなっているが、今ふざけるのは流石に可哀想かと無視。

 そして自身の体についた液体や汚れを魔法で綺麗さっぱり片付ける。とは言っても、表面上綺麗になっただけだ。臭いやベタつきは僅かに残っている。

 

 イナトに教わった綺麗にする魔法を勝手にかけてやる。だが、イナトは気づいていないのか、ぶつぶつ何か言っており頭を抱えたままだ。


「イナト、先に進も?」

「先に行ってください。貴女と共に行く資格はありません」

「いやいや、そんなことないって。イナトは体を張って私をスライムから守ってくれた。そうでしょう?」


 どうにか連れて行こうと腕を引っ張るが、イナトはびくともしない。


「イナトは私を1人にするの?」

「っ! ……そうですね。僕は貴女を守るためにいます。なのに離れて行動するなんておかしいですよね」


 やっと動く気になったイナトは立ち上がり、私の手を握り足早に歩き始める。だが、私がキツくない程度の速度なのがイナトらしい。


「責任は世界を救った後に果たしますのでそれまでお待ちください」

「え? なんの責任?」


 別に一夜の過ちを犯したわけでもない。そもそもキスしたわけでも体に触れたわけでもない。

 ……もしかして、押し倒したという判定が責任に含まれているのだろうか。


「考えすぎだよイナト。責任も何も、私たちは何もしてないから、ね?」

「あれを何もなかったで済ませられるんですか?」

「……ちょっと純粋すぎない?」


 イナトの年齢は覚えていないが、確か成人済みだったはずだ。王子で騎士でモテモテで……それなのに何故このような思考回路なのか。

 これはゲーム制作側の嗜好なのだろうか。


「イナト、責任ってどこからだと思う?」

「な、ななっ、僕に何を言わせる気ですか……!?」


 私が暴れてる間に胸を揉んでしまったのだろうかと思ったりもしたが、流石に触れたらわかるだろうし、イナトは地面とスライムくらいしか触っていないはずだ。


「質問変えるね。イナトは私に何かしちゃったの?」

「リン様の頬に、僕の唇が……触れました」


 全然気づいていなかったが、どうやら私が暴れている最中に当たってしまったらしい。

 

「あ、ああそう……。掠めただけだろうし、イナトのファーストキスは奪ってないよ?」

「キスはキスでしょう!? キスは恋人同士がするもので――」

「わかった! わかったから落ち着いてよ! 頬なら挨拶でするところだってあるんだし、気にしなくていいから」

「この国ではそんな挨拶はありません!」

「うわーー堅物がすぎる!」


 イナトは顔を真っ赤にしながらも、対抗するように私の話への反応が早い。

 

 唇にキスをしたらイナトはどうなってしまうのだろう。好奇心にそそられキスしてしまいたくなる。

 もちろんそんなことはしないのだが。

 多分コントローラーを持っている状態であればキスをして反応を楽しんでいたことだろう。


「もうこれ以上この話しても埒が明かない。やめよう。そうしよう」

「勝手に終わらせないでください。責任はしっかり取ります」

「必要ないってば!」


 いつまでも終わらない話に、私は思わずこう言った。


「そんなに責任責任言うんなら、私の唇を奪ってからにしてよ」


 イナトの正面に立ち、顔を近づけるとイナトは固まってしまった。

 刺激が強すぎたのかもしれない。


「唇が奪えないんなら、責任は取らなくてよしってことで。はい、今度こそこの話終わり」


 イナトの手を離し、駆け足で距離を取る。

 行き止まりかと思いきや梯子がかかっており、上まで登れそうだ。ルーパルドと合流できるかもしれない。


「梯子があっ――! 危な」

「……何故止めるのですか」


 梯子の存在を知らせようと振り返ったところでイナトが壁ドンしてきた。

 そして、意を決したような表情を見せた後、顔が近づいてきたので咄嗟に私はイナトの口を手で覆った。


「いや、もう無効だから。さっきの時点で終わりだから」


 絶対にイナトなら無理だろうと高を括っていたのが間違いだった。だが、これでもう本当に安心できる……はずだ。


「僕とは嫌ですか?」

「そう言う問題ではないんだよなぁ」


 イナトは責任を取りたくて仕方ない様子。

 だが、私はこの世界に残るつもりはない。

 また、イナトがもし責任=結婚を考えている場合、イナトに恥をかかせてしまう。

 ならば拒否するのが1番だろう。


「私はこの世界を救ったら帰るつもりだから、責任は取らなくていいよ」


 その時のイナトの顔は、恐ろしいものでも見たかのようだった。

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