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41.落とし穴

 箱で休んで、また洞窟へ。

 昨日よりも私にベッタリとくっついているロク。

 私の身体に腕を回し、かなり歩きづらい。

 本人としては痛みをどうにか和らげようと必死なのかもしれないが。

 それを見て、イナトは不快な表情。ルーパルドはそのイナトの様子を見て苦笑い。

 神官は私とロクが恋人同士とでも思っているのだろう。微笑ましそうにこちらを見ていた。


「ロク置いてった方がいい?」

「んー、どうなんですかね……。俺も呪いに詳しいわけじゃないんで」

「置いて行くのがいいと僕は思います」


 イナトの言い分としては、呪いは救世主殺しのために発動する。ならば、できるだけ離れていた方が呪いの発症は抑えられるだろうと言うこと。

 痛みは標的が近くにいて、その殺意を抑え込もうとしているからだろうと。


「なるほど。離れてしまえば落ち着くかもってことね」

「それがいいかもしれないですね。渡者の心配をしなくていいのは、こっちとしてもありがたいですし」

「俺は主人の側にいるのが仕事……」

「主人と離れて仕事することもあるよね? 箱で料理の練習をしろ! ていう命令でいこうか」

「了解」

「あ、でももし症状悪化するようなら、渡してる通信機で連絡して」

「ああ」


 ロクを箱に入れ、念のためすぐに通信機で連絡。

 まだ痛みはあるが、私にくっつかなくてもどうにかなりそうだと教えてくれた。


「イナトの言う通り、いいかも? まだわからないけど」

「それは良かった。では、進みましょうか」

「今日はー、イナトが決めた場所に行こうかな」

「僕ですか? では、こちらを」


 選ばれた「救世主専用洞窟Ⅰ」の壁を取り払い、3人で洞窟内に入る。

 そこは最初に入った洞窟とは変わり、松明はなく真っ暗だった。

 水の落ちる音が聞こえてきて、少し肌寒い。


「暗くて冷えてるね」

「洞窟らしいと言えばそうですけどね」


 ランタンに火をつけルーパルドが先陣してくれる。

 その背後を私が歩き、その後ろはイナト。

 頼もしいが、私はこのまま守られてばかりになるのかと不安にもなってしまう。

 だが、ゲムデースはまだ私には高レベルらしく、あまり調子に乗って邪魔になるのもいただけない。

 どこがで1人でレベル上げをしたいものだ。


「分かれ道ですね。どうします?」

「こう言う時は大体どっちかが行き止まりで、宝箱があるんだよね」

「そういうもんです?」

「そういうもんだよ。とりあえず右に行こう」


 右が行き止まりな気がする。というただの勘。

 魔物は少なく順調に進んでいく。こっちが行き止まりだといいなぁと思いながらひたすら歩く。


「ひゃっ!」

「!?」

「きゅ、救世主さま、大丈夫ですか?」

「ごめん。首に水がついただけだよ」


 変な声が出た。しかもそれが洞窟に響いた。

 かなり恥ずかしい。穴があったら入りたい。

 首元を触り、水滴を拭った。


「ここはよく水滴が落ちてきますね」

「そうだね。ランタン、大丈夫?」

「はい。保護魔法をかけていますので」

「そっか」


 私も保護魔法をかけてほしい。と思ったが、そんなことでかけてもらうなど、恥ずかしいに拍車がかかるだけだ。

 

 その後、雑談はせず周りの音を聞きながら前へと進んだ。


「あ、やっぱり宝箱だ」


 行き止まりの場所に宝箱。これがあるからわざわざ行き止まりを選びたくなるのだ。

 地味な見た目ではあるが、宝箱には違いない。

 開けてみると、回復薬が複数個。そして装備アイテムが1つ。


「ブレスレット?」


 ブレスレットの説明欄には、「ただのブレスレット。力がつくわけでもないし、HPが増えるわけでもない。ただのおしゃれアイテム」と書いてあった。

 それを2人の前で読み上げると、2人してなんとも言えない表情を浮かべていた。

 おしゃれアイテムと書いてあるものの、オシャレかと言われると、そうでもない。


「い、いらない……」

「そのブレスレットに魔法を込めるのは、ありかもしれません」

「確かにありかも? 一応持っておこう」


 ポケットに仕舞い込み、分かれ道の場まで戻る。

 正解の道だろう方向へと進むが、また行き止まり。

 宝箱もない。


「隠し通路とかかな」


 ペタペタと壁を触ってみるが、特に何もなさそうだ。私に倣って2人も別の壁や地面を確認している。

 ガコッと私とルーパルドが触ったところが同時に音を立てた。


「あ」


 そして、私が立っていた場所に突然穴が出現し、ルーパルドの触れた場所も壁が消えた。

 ギャグ漫画のように一瞬だけ浮遊した感覚があった後、私はそのまま穴に落ちて行く。

 私の近くにいたイナトが咄嗟に私の手首を掴んでくれたが、引き上げることは難しそうだ。


「イナト、無理しないで。私1人で――」


 1人でどうにか切り抜けるよと言う前にイナトが私の手首を掴んだまま穴に自ら飛び降りる。

 地面に落ちる前にイナトが抱き寄せてくれ、私は地面に叩きつけられることなく下に降りることができた。


「ルーパルドと一緒に正規ルートっぽいとこ行けば良かったのに」

「救世主様を1人にするわけには参りません。ルーパルド、お前は1人で大丈夫だよな?」

「問題ないと思いますよ。ここの敵もそんなに強くなかったですし。何かあれば救世主さまお手製の通信機で連絡しますね」


 じゃ、お先に。とルーパルドは軽い口調で先に進んでいった。口調もフットワークも軽いなぁ。


「僕たちも行きましょうか。足元がぬかるんでいるようなのでお気をつけて」


 紳士的に手を取って誘導してくれるイナト。


「いやいや、これじゃ戦いにくいから!」


 少し残念そうなイナトだったが、それもそうですねとはにかんだ笑顔で言った。

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