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40.救世主専用洞窟

 神殿に到着し、早速神官に洞窟について尋ねた。

 すると、いつでもこの神殿から行けるよう道を繋いでいると説明してくれた。


 洞窟は神殿の地下にあり、厳重に施錠されている場所にあった。

 洞窟にはすべて魔法陣が壁のように立ち塞がっている。

 救世主専用ということもあり、救世主が手をかざし壁を取り払わないと通れない仕様らしい。


「ここで全ての試練が受けられるんですか?」

「いえ、残念ながらゲムデースの洞窟限定です。流石に別の国の洞窟まで管理するとなると、反感を買いますからね」

「ゲムデースだけでもありがたいです。他の神殿についても僕がどうにかしましょう」


 意気込むイナト。王子だということもあり、イナトはとても顔が広い。

 頼もしい反面、負担が多すぎていつか倒れないか心配になってしまう。


「無理はしないでね。出来ることは私もするし」

「ありがとうございます。その気持ちだけで十分です」


 嬉しそうに微笑むイナト。ただ、隣のロクが気になるのか、視線がよくそちらに向く。

 今もロクは私の側にいる。手が触れるか触れないかのレベルなのでかなり近い。

 ロクによって起こるストレスも早く解消してあげなければ……。


「それで、どれが解呪魔法が覚えられる洞窟なんですかね」

「それは……わかりません。救世主は稀に起こる厄災時にしか姿を現さない存在。そして、救世主が書き記していない限り、洞窟内のことを知る術はわたしたちにはありません」

「うわぁ、ここまで来て手探りか……」

「まぁまぁ。洞窟探しからじゃないからマシだよ」


 嫌そうな顔をしていたルーパルドにそう言えば、ルーパルドは頷いた。

 

「確かにそれもそうですね。救世主さま、どの洞窟から行きます?」


 5つほど並ぶ洞窟。どれも見た目に変わりはなく、マップなどを確認しても特に説明は書いていなかった。

 洞窟の名前も「救世主専用洞窟Ⅰ」と連番になっているだけ。

 せめて何が覚えられるのかだけでも説明文を入れて欲しかった。


「ロク、どの洞窟に行きたい?」


 なんで俺? とでも言いたげなロクだったが、洞窟を1つずつ眺めた後、真ん中の洞窟を指差した。

 

「こっち」

「ならこっちに行こう」

「ちょっと適当すぎません?」

「全然わからないからこれくらいで良いでしょ」

「まぁ、ここで考えていても仕方ないですしね」


 神官は知らないと言うし、私も入ってみるまで中身はわからないし……どうしようもない状況。

 これはもう直感で行くしかないのだ。


 1つ目の洞窟は要所要所に松明があり、快適に進むことができた。魔物も少なく、私以外は皆レベルが高いのもあって魔物はあっさり倒れていった。

 ちなみに私は後方支援に徹して欲しいと頼まれた。一応ゲムデースにある洞窟だからだろう。


 最深に辿り着くと、ボスとその背後には大きな宝箱が配置されていた。

 手応えのあるボスかもしれないと警戒していたが、ボスもいとも簡単に倒し終えた。

 豪華な見た目をした宝箱を開けてみると、「素材オート回収機能」が解放された。

 私が立っているだけで素材が私へと集まってくれるという優れもの。

 だが、今はこれが欲しいわけではないのだ。


「便利だけど違う」

「ほんと、便利なんですけどねぇ……」


 宝箱を開けると出口に戻れるような仕組みのようで、宝箱をもう一度調べると神殿に戻っていた。


「"救世主専用洞窟Ⅲ"は素材オート回収だね。書いとこう」

「次の救世主はリン様に感謝するでしょうね」

「1番は救世主がいらない世界……厄災の根源消滅だけどね」

「そこまでこの世界のことを考えてくれていたのですか?」


 イナトと神官は私の発言に感激しているようだが、特にそこまで考えていなかった。

 むしろこの世界にまた放り込まれてしまう人が出るのは良くないと思っているだけなのだ。

 でもわざわざ否定しなくてもいいかと私は笑って流した。


「次はどこに行こうか」


 並ぶ洞窟を眺めていると、イナトが止める。

 

「待ってください。次の洞窟は明日にしましょう」

「え、まだ時間あるよ?」

「ロクの体調が優れないようですし、次の洞窟も簡単とは限りません。また野宿になりますよ?」


 ロクを見るとまた疲れた表情を浮かべていた。

 戦闘の時はあまり疲れたように見えなかったが、不調を表に出さないようにしていたのだろうか。


「イナトの言う通り、明日にしようか」

「そうしましょう」

「お待ちください」

 

 神殿を出ようと歩き始めたところで、神官は慌てて声をかけてくる。


「宿泊先はお決まりでしょうか。よければ神殿に泊まってください」

「お構いなく。僕達は救世主様のおかげで快適に過ごせておりますので」

「……そうですか。では、また明日お待ちしております」


 少し残念そうな表情を見せた神官。

 だが、イナトは気にせず歩き出す。


「イナト、もしかして神殿の人全員嫌い?」

「そうですね。神を信仰していると口にしておきながら、神に選ばれた救世主をよく思っていない。その時点で僕は一生好きになれませんよ」


 この人、かなりの救世主狂いだな……。

 そう思わざる得ない回答だった。

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