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乙女要素のある死にゲーに転移してしまった件〜帰還エンドのはずが、様子がおかしい〜  作者: 勿夏七
6章 呪い

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38.料理の出来

 痛みが降ってきたかと思えば、その次に感じたのはベッドの柔らかさ。

 

 これで2回目の死か。

 そんなことを思いながら、私は目を瞑ったまま手を広げロクがいること前提で抱きしめる動きをする。


「っ!?」


 ロクの存在はしっかりあったようで、そのまま抱きしめ拘束を試みる。

 もちろんすぐに解かれる可能性だってある。だが、救世主の発しているオーラ? のようなもので落ち着くのなら無傷で済む可能性だってある。


 目を開けてロクがベッドに顔を埋めていることを確認したところで頭を撫でる。

 ……いや、どちらかというと頭を上げられないように押し付けていると言った方がいいのかもしれない。


「よしよーし。そのままナイフを捨てて私に身を任せて」


 案外暴れず、されるがままのロクに私は安堵した。

 力はどう見積もってもロクに軍配が上がる。

 ここで暴れられでもしたら、また死ぬ羽目になっていたはずだ。


「ロク、私がわかる?」

「リン」

「うん」

「なぜ俺はここにいる?」

「呪いのせいで私を殺しそうになったんだよ。記憶は残ってないんだね」


 体を離し、ロクはベッドから距離を取る。

 流石に女のベッドに上がり込んでいることに恥ずかしさを覚えたのだろうか。


「悪かった」

「いいよ。呪い早く解かないとね」

「……ああ」


 目を逸らし顔を赤らめるロク。今更恥ずかしくなったのだろうか。

 少し前からスキンシップが多くなっていたというのに。


 ロクはフードを被り部屋を出る。私も少ししたら部屋を出ようと思っていると、扉を叩く音。


「ルーパルド。どうしたの?」

「どうしたもこうしたもないだろ……。リン、大丈夫だったか?」

「もしかしてロクが私の部屋から出てきたのバレた?」

「団長にはバレてないけど……呪いの関係だろ?」

「殺されそうになったんだけど、なんとかなったよ」

「なんでそんなに落ち着いてんだ。うちの救世主さまは肝が据わってんなぁ」

「その方がいいでしょ。こんなことで泣いたり喚いてたら今頃私もここにいないよ」

「ま、それもそうか。じゃ、そろそろ行きましょ。団長が美味い朝食を作ってくれてるはずですから」


ルーパルドは私の頭をぽんぽんと軽く叩いた後、さっさと行ってしまった。

 

 私も寝癖などを確認した後リビングへと足を運ぶ。

 イナトがテーブルに朝食を並べている最中だった。私が来たことに気づいたイナトは、「おはようございます」と爽やかな笑顔で迎えてくれた。


「イナトって王子なんだよね? それにしては料理もできるし物も作れるし……万能すぎない?」

「僕は自分で何でもやりたい性分なんです」


 顔がよくてお金持ちで優しくて、どこから見ても理想の旦那様だろう。

 これまでよく私は女性達の嫉妬に殺されなかったものだ。鋭い視線も感じたことはないし、意外だ。


「団長は彼女にも何でもやってあげたいタイプっぽいですよね」

「は!? 何を言ってるんだルーパルド」


 誰を思い浮かべたのか、イナトは顔を赤くしてルーパルドを睨んでいる。このゲームの主人公補正付きであれば私の可能性は十分にあるが、調べようがないので確証は持てない。

 そもそもまだ理想の彼女がおらず、想像の域で顔を赤らめている可能性も捨てきれない。


「俺としては、彼女の手料理を毎日食べたいですけどね。あ、もちろんおねだりされたら作りますけど」


 突然のデレデレ暴露話しに私とロクは真顔。イナトは真っ赤、ルーパルドはニヤニヤ。混沌としている。


「俺は料理ができない」


 真顔のままロクはそう発言し、イナトの料理を完食し、席を立った。

 なんとも形容し難い空気が流れた。


「なんかすまん、渡者……」


 すでに本人はいないが、ルーパルドは苦笑いでロクに謝っていた。

 誰でも出来ないことはある。だが、あんなにも堂々と発言し去っていくなど、誰が想像できようか。


「ロクには料理当番まだ割り振ってなかったけど、やらせない方がいいのかな」

「そもそも、どのくらいできないかもわからないじゃないですか。簡単なものはできるかもしれないし」

「そこは本人に聞いてみないと何とも言えないね」


 朝食を終え食器を洗っていると、ロクがキッチンへと現れた。

 殺気は感じられない。痣も光っていない。呪いの再発まで時間はまだあるのだろうか。


「ロクって料理作ったことない感じ? それともやってみて、出来なかった感じ?」

「出来なかった」


 背後から私を抱きしめ、それが当たり前かのように私の頭に顎を乗せた。

 呪いの緩和のためだろうが、ベタベタしすぎな気もする。これが乙女ゲームクオリティか……!

 でも全然甘い雰囲気がないのは、ロク自身の問題か、それとも私が乙女思考を無理矢理停止しているかのどちらかだろう。


 ロクに抱きしめられたまま、なんとか洗い物を済ませた。


「きゅ、救世主様!?」


 イナトの裏返った声が聞こえてきた。きっとのこ状況に驚いてしまったのだろう。無理もない。


「そういえばイナトに言い忘れてた。ロクのことなんだけど――」

「き、聞きたくありません。失礼しました!」

「ええ……」


 何を言われると思ったのか、イナトは苦悶の表情を浮かべ走り去っていった。

 追いかけようにも、ロクが引っ付いたまま離れないため動けない。


「よし、ルーパルドに説明を頼もう」


 あの表情は、誤解しかしてない。

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