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乙女要素のある死にゲーに転移してしまった件〜帰還エンドのはずが、様子がおかしい〜  作者: 勿夏七
6章 呪い

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37.呪い

 夜中、目が覚めて水を飲みにキッチンへ。

 薄暗いが電気をつけるほどでもない。月の光を頼りに冷蔵庫へと足を進める。

 正直、箱の中なのに太陽や月があるおかしな状況。だが、これもゲームの世界だしいろいろ雑な部分なのだろうと割り切ってしまう。

 

 コップに水を注いでそれを飲んで。またすぐに部屋へと戻ろうとしたが、顔面を何かにぶつける。

 よくよく見ればロクが目の前に立っていた。


「びっくりするなぁ。声くらいかけてくれたって――」


 いいのに。という言葉は驚きのあまり口から出ることはなかった。

 ロクが私を強く抱きしめたからだ。

 息は荒く、体は熱い。


「どうしたの? 息苦しい?」


 抱きしめ返して背中を撫でる。ロクはただそれを静かに受け入れて、黙って私を抱きしめたまま。

 返事ができないほど辛い状況なのか、ただ話したくないだけなのかわからない。

 気の済むまでこうしていようじゃないかと1人意気込んでいると、ロクは腕の力を緩めた。


「リンといると落ち着く」


 首元に顔を埋めるロク。熱は少し下がり、先ほどまで荒かった息も落ち着いていた。


「それは良かったけど……くすぐったいからそろそろ離れてもいい?」

「嫌だ」


 私が離れようとしたところでまた強く抱きしめられてしまう。

 がっしりとした身体つきに、低い声にゾクリとしてしまった。

 最近は子供っぽい言動が多かったこともあり、やっと男として意識しなくなっていたと言うのに、これではまた逆戻りだ。鼓動が聞こえないことを願いながら、ロクの背中を摩る。


 いつまでも離してもらえず、立っているのも疲れてきた頃、足音が近づいてきた。

 こちらに来て欲しいような来てほしくないような気持ちがせめぎ合っていると、リビングの明かりがつき、大きな声が響く。


「うわっ、俺もしかして邪魔した!?」

「待って行かないで」

 


 ――通りすがりのルーパルドにロクを引き剥がしてもらい私は椅子に腰掛けた。

 ロクは私の隣に座り俯いている。


「で? 2人で抱き合ってたのに俺を引き留めた理由は?」

「故意じゃないの。ロクが変なんだよ。ほら、今だってぼんやりしてる」

「ぼんやりはいつものことじゃないか?」

「いやなんか、こう、いつもと違う……熱にうかされてる感じ?」

「ふーん?」


 ルーパルドはロクをまじまじと見つめた。

 フードを取ろうと背後に回ると、ロクはどこからともなくナイフを取り出した。

 ルーパルドは咄嗟に距離を取ったが、戦闘慣れしてない人であれば斬られていたところだ。


「リン、渡者のフード取ってみてくれないか?」

「ええ? いいけど……」


 取るよと一声かけて私はロクのフードに手をかけた。ルーパルドの時のように嫌がる素振りは見せず素直にフードを取らせてくれた。

 そこでやっと気づいたのだが、首元に痣がある。

 何か模様のようだが、これのせいで苦しんでいるのだろうか。


「これ、多分呪いだな」

「前の主人のせい?」

「恐らく。渡者、お前まさか殺す時に呪われたのか」


 頷いたロクにルーパルドはやっぱりと溢す。

 呪いは命と引き換えのものが多いらしい。どうせ死ぬならと呪ったのだろう。


「何の呪いかわかるか?」

「わからない。ただ、悪夢を見る。それと、息がし辛くなる」

「単純な呪いみたいだな。だから救世主さまの側だと落ち着くんだろ」

「救世主が呪いを解くことができるってこと?」

「そんなところ。でも、解呪魔法は覚えてるか?」

「ない、ね。どこで覚えるんだろう」


 ステータス画面を開き、自身の取得済みの術技を確認。しかし救世主専用のものは何もなく、呪いを解くような術もなかった。


「そればっかりは俺もわからないからなぁ……」

「明日、イナトにも聞いてみようか。ロク、それまで待てる?」


 ロクはフードをまた被り直し頷く。

 念のためルーパルドがロクを部屋まで連れて行ってくれた。私は覚醒してしまった頭をどう落ち着かせるか考えながら部屋に戻ったのだった。



 ◇



 朝、意外にも眠れたなと呑気に思いながら目を開けた。

 目の前に見知った顔があり、咄嗟に相手の胸を押してやった。

 よろけた隙に距離を取り、いつでも部屋から出られるように扉を開けた。


「ロク、もしかして呪い?」


 痣が妖しく光っており、手にはナイフを持っていた。ステータスを確認したところ、状態異常の欄に『呪い』とだけ書かれている。


 水の町についてから、ロクは疲れたようだった。それは旅の疲れだと思っていたのが間違いだったのかもしれない。

 

 元々救世主を殺してこいと命令を受けていたロク。

 なら救世主を殺すよう呪いを仕掛けられていてもおかしくはない。


「話は聞こえてる? それとも正気を失ってるのかな」


 話しかけても反応はなく、こちらの隙をただただ狙っている。

 昨日は私が側にいると安心すると言っていたが、抱きしめたら正気に戻ったりしないだろうか。

 試してみたい気持ちは山々だが、いかんせんロクはナイフを持っていて、抱きしめる以前の問題だ。


「いや、1回死んだら起きるところからとかないかな……」


 抱きしめて落ち着いたら御の字。できなくて殺されてもやり直しができる。どちらに転んでも問題はない。


「殺すなら一瞬でよろしく!」


 私はロクの元へ勢いよく走り出した。

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