26.霧の中のフクロウ
「あれ、たたりもっけじゃん!!」
「たたりもっけってなんです!?」
「妖怪! 見た目は某死にゲーに出てるやつそっくり!」
「何の話だ」
「ただのでかいフクロウではなく!?」
目をギラギラさせていた大きな大きなフクロウ。
霧を払いながら移動していたせいか、すぐにそのフクロウは私達を発見。
フクロウは一鳴きした後、私達を捕まえようと追いかけてきている。
大きな翼で飛び、霧をかき混ぜながら飛んでくるため、ハライノカタマリを使っていても視界が悪く、タチが悪い。
さっさと倒せばいいところだが、ハライノカタマリの効果範囲は狭い。
戦いの最中にはぐれる可能性が高く、戦いに集中できない。
また、1人で戦う羽目になる可能性がある。だからこそこうして戦わず逃げているのだ。
「このまま逃げ続けてるわけもいかないし……どうしよう」
「救世主さま、俺の持ち物から投槍を取り出せませんかね?」
走りながらメニューを開き、ルーパルドの持ち物から投槍を探し当てる。
死にゲーはメニューを開いても止まらない仕様。というのはゲームだけの話だが、今それを体験している気分だ。
見つけた投槍をすぐさま渡すと、ルーパルドは笑顔で槍を握りしめる。
「ありがとうございます! これでちょっと怯ませてやりますよ」
ルーパルドは振り返り、照準を合わせすぐに投げた。
大きなフクロウは瞬時に回避したが、槍は曲がりフクロウの片目を抉った。
怯んだフクロウは地面に落ち悲鳴をあげた。
「好機なんじゃない?」
「やめておけ。今の悲鳴で周辺にいた魔物が動き出した」
ロクに言われよく見てみると、地面から這い出している魔物や木から降りてきた魔物など、いつの間にか多くの魔物が集まってきていた。
「私達で全部倒せるのかな?」
「詠唱時間さえいただければ、大技で対処いたしますよ」
「イナト万能すぎ……」
「とりあえず今は撤退しましょう。詠唱時間を稼ぐ時間もありませんから」
私が感動していると、ルーパルドに腕を引っ張られる。
確かに今倒そうと思っても、もう近くまで来ている魔物がいる。それを3人で対処するのは骨が折れる。
イナトがいないとなれば、私しか光魔法が使えない。となると対処が大変になってしまう。
「ワープポイントの開放が優先だし、とりあえず出口探すってことでいいの?」
「そうですね。ワープポイントを解放すれば、救世主様の能力の解放にも繋がりますし、あのフクロウの討伐は後回しにしましょう」
とはいえ、出口がわからない状況に変わりはない。
追いかけている魔物が見えなくなったところで、一度速度を緩め息を整える。
「で、出口の、目印ってないのかな……」
私だけ息切れしているようで、他3人は普段通り。
ちょっと悔しい。
「甘い匂いを辿れば出口が近い」
ロクは別の森で甘い匂いを辿って、森を抜けたことがあるらしい。
甘い匂いで思い出すのは、私があっさり死んだ花畑。
あれに負けなければ、私はあの時森を出られていたのだろうか。
「その花は森と草原の境目に生える毒花のことですね。毒花の花粉を吸うと眠くなり、そのまま呼吸を奪われ死んでしまうと言われています」
「甘い匂いを吸い込むと毒なの? それとも別で、花粉自体は無臭なのかな」
「花畑で倒れてしまう人が多いことから、花粉に毒があるのではないかと言われていますが……実際のところまだ解明されていません」
イナトは「お役に立てず申し訳ない」と眉や口角を下げた。
「それだけ分かればいいよ! イナト、いつもありがとう」
「救世主様……! こちらこそ頼っていただき恐悦至極に存じます!」
光魔法でも唱えたのかと思うほどの輝きだ。
「……あのー、ほのぼのしてるとこ悪いんですけどハライノカタマリの在庫がもう1個しかないんです」
「小石と布があれば簡単に作れるんじゃないの?」
「ここ、面白いくらい小石がないんですよ。そもそも石も岩も見当たらなくないです?」
「え、そんなこと……ある?」
すぐに足元を見渡す。土や木の葉があって、植物があって――。
「ほんとだ、ない」
そんなことがあるのか。土や草があれば石もあると思い込んでいた。確かにゲームでも小石を拾える場所は決まっている。
もしかしてそういう仕様?
この土や草だってもしかしたら取れない仕様の可能性もある。
私はしゃがみ掴んでアイテムに入れ込んでみる。
「普通に取れちゃうんだ」
「??」
ロクは私の行動に首を傾げている。
そしてイナトとルーパルドは、私の行動なんかよりも今後どうするべきかを考え込んでいる。
「もう1回死のうかな……」
いやでもどこで目を覚ますかわからない。
森の中からだとしたら進展はあまりないし、死んでも得がなさそうだ。
ワープポイントからだと確定していればもっと良いやり方を見つければいいんだが……。
「何を言っているんですか!? 死ぬなんて絶対ダメですからね!?」
「じょ、冗談だよ……。揺らさないでぇ」
私の発言を拾ってしまったイナトは私の肩に手を置いて揺らす。
「冗談でも言わないでください。貴女が死ぬなら僕も死にますよ?」
揺らすことはやめてくれたが、肩を掴んだままイナトは真面目な顔をして私を見つめた。
まだ私が死んでも大丈夫だということを知らないからだと言いたいところ……だが、死んでも問題ないと言っても実証ができない。
私が死ねば巻き戻り、記憶が残っているのは私だけなのだから。
ということは信用させることは不可能だろう。
「怖いこと言わないで。私は大丈夫だから」
「救世主さまは何を持って大丈夫だと言っているんだか……」
「俺はお前が死ぬのは見たくない」
「渡者……お前殺そうとしてた相手なんだから説得力ないぞ」
ルーパルドにツッコミを入れられたが、ロクは気にしない様子だった。




