25.依存は危険
イナトの持ち物に日記帳が入っていた。
1日の感想や反省を書くのか、それとも報告書のようなものなのか……かなり興味がある。
だが、勝手に人の日記を覗くのはあまりにモラルがない。
日記帳から視線を逸らす。今度落ち着いた時にでも読ませてもらえないか聞いてみようかな。
恥ずかしがるのか、それとも堂々と見せてくれるのか……少し楽しみだ。
私は何事もなかったかのように、イナトの持ち物からキャンプセットをその場に召喚した。
ロクは初めて召喚を見たため、目を大きく見開いていた。だが、イナトやルーパルドのように感嘆の声をあげるわけでもなく、ただじっと見つめていた。
「ありがとうございます」
召喚されたキャンプセットから複数個アイテムを取り出すイナト。
ルーパルドに手渡し、ルーパルドも慣れた手つきでアイテムを使い始める。
アイテムは魔物避けや視線ずらしなど、外部から襲われないよう気づかれないようするアイテム達だ。
ルーパルドがアイテムを使っている間に、イナトとロクと一緒にテントを張った。
初めてテントを張ったが、イナトとロクのおかげでスムーズに終わらせられた。
「これで安心して過ごせますよ」
それぞれ1人用のテントを張り終えた私達。
イナトがキャンプセットを持っていたおかげなので改めてイナトに感謝を伝えた。
すると、「救世主様に不便な思いはさせません」そうイナトは得意顔。
頼りになるなぁと思う反面、この人がいなければどこかしらで1人を嘆いていた可能性を考える。
イナトを突き放して、自分だけで探索や世界救済に行かず良かったのかもしれない。
「イナト、さっき使ってたアイテムって自分で作った?」
「いえ、旅立つ前に購入したものです。遠征の際に使うことが多いのですよ。ですが、今なら素材さえあれば作れると思います」
「色々作れたら便利だし、またいろんな素材集めて作ろうかな」
「その時はぜひ僕に声をかけてくださいね」
手伝いたいと目で訴えてくるイナトに思わず私は頷いた。その時、イナトはとても満足そうだった。
錬金が好きなのか、それとも誰かに作ってあげたい性分なのか。はたまたどちらもかもしれない。
というか、そもそものところイナトに仕事を取られなければ、私も独り立ちができる可能性も否めない……。
この際気にしないでおこう。この世界から解放された後、じっくりゲームをすれば良いのだから。
ルーパルドはアイテムを使い終わり、キャンプセットに入っていた存在感を薄くできるローブを羽織った。
「さて、少し外の様子を見てきますかね」
「気をつけてね」
「もちろん。何かあったらこれ、遠慮なく使わせてもらいますね」
そう言って一度通信機を私に見せた後、アイテム範囲外に出て行ったルーパルド。
イナトはルーパルドに何かあった時用にとアイテムを複数個渡し、ロクはただ頷いただけだった。
2人ともあまり心配していないようだ。
まぁ、イナトは団の人の力を知っているし妥当だろう。ロクはどのような気持ちでいるのかはわからないが。
◇
ルーパルドが外に出て10分ほど経った頃。
私はアウトドアチェアに座り、イナトの淹れたハーブティーを飲んでいた。至れり尽くせりだ。
このままではイナトなしでは何もできなくなってしまいそうだ。
眠くなってきたが、まだ寝るには早い。
マップを開き自分の位置を確認しようとした。
しかしモヤがかかっており、イマイチ場所を特定できない。
イナトと一緒に行った迷いの森のように、ボスを倒せばきっと霧も晴れるだろう。だが、こう何も見えないと手も足も出ない。
目を瞑り、ボスを見つける方法を考えてみる。だが、わかるわけもなく、私はそのまま寝落ちしてしまいそうになる。
そんな時にカサカサと草を分けてこちらに向かってくる音が聞こえてくる。ルーパルドだろうか。
「ただいま戻りました……って、救世主さま? 寝るならテントで寝てくださいね?」
「うん、うん……。大丈夫」
何事もなかったようで安心したが、帰ってきて早々呆れた声色で叱られるとは思いもしなかった。
私は目を開けてぬるくなったハーブティーを飲み干して、一息。
ルーパルドは少し離れた場所で腰を下ろし、拾った素材の仕分けを始めた。
ロクはルーパルドが何を持ち帰ったのか気になったのだろう。じっと素材を見つめていた。
だが、視線がぴたりと一点に集中。見慣れないものだったのだろう。指を差し、ルーパルドに問いかけた。
「それ、羽か? 随分大きいな」
「落ちてたから拾ってきたんだ。ここの魔物と関連があるかもしれないしな」
かなりの大きさの羽だ。色は黒や茶色など地味な色ばかり。
これまで旅をしてきて大きな鳥を見たことはない。もしかしたら、ここにしか生息していないのかもしれない。
「流石にこの大きさの羽を落とす鳥は見たことありませんね……」
「ここのボスだったりしてねー」
まさか鳥がボスだなんて――聞いたことも見たこともないと一同笑う。
だが、そのまさかが降りかかってくるとは、この時は思いもしなかった――。




