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乙女要素のある死にゲーに転移してしまった件〜帰還エンドのはずが、様子がおかしい〜  作者: 勿夏七
3章 スタート国

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22.トキメキは突然

「ルーパルド、部屋に戻っちゃったけど……今日はもう休む?」

「早いですが、そうしましょうか」


 イナトとロクと別れ、私も自室へと入る。

 部屋は最低限の物しか置いていない。

 自身で置いたものは、イナトやルーパルドに貰った雑貨くらいだ。


「ルーパルドは毛嫌いするタイプじゃないと思うんだよなぁ」


 ルーパルドから貰った置き物を指で突きながら呟く。

 

 何かしら理由があるとして、私にその理由を教えてくれるだろうか。

 イナトさえ教えてもらっていないと言う。日が浅い私に話してくれるだろうか……。


 ルーパルドは渡者(ロク)に出会い、街に入ってからあからさまに機嫌が悪くなっている。

 あまり渡者とスタート国に良い思い出がないのかもしれない。


「うじうじ考えるの苦手だし、当たって砕けてこようかな」


 ルーパルドの部屋の前まで行き、一度耳を澄ませる。啜り泣いていたりしたら気まずい。

 静かだな……と様子を伺っていたら、足音が近づいてくることに気づく。慌てて扉か離れようとしたところで部屋へ引っ張り入れられる。


「……何しに来た?」


 ルーパルドの声はいつもより低く、背筋がゾクリとするような雰囲気を漂わせていた。

 それでもここで引き返すつもりはない。和かに笑いかけてみる。

 

「不機嫌な理由を聞きに来たよ」

「それは流石にストレートすぎだろ……」


 私の返しに怯んだのか、追い返すこともせず、ルーパルドはロングソファに座るよう私へ勧める。

 勧められるままソファへと座れば、ルーパルドも少し離れて同じソファに座る。


「俺が腹を立ててることは、もう過去のことなんだ。俺がまだ消化しきれていないだけ」

「消化しきれないほど苦しんでるってことでしょう? 言いたくないなら聞かないけど、泣いても良いし怒っても良い。必要であれば手を貸すよ」

「……リンは優しすぎるな。醜い俺なんて、捨て置けば良いのに」

「ルーパルドは醜くないよ。あ、頭撫でたらストレス軽減って聞いたし頭を撫でてあげよう」

「ちょっ、こんな大の男に正気です!?」


 ソファから立ち上がり、ルーパルドの前に立つ。逃げようとしたルーパルドの肩に手を置いて制し、もう片方の手で頭を撫でる。

 撫でられたことがないのだろうルーパルドは未知の感触に動揺の色を見せた。

 だが、次第に悪くないと思ったのか、大人しく撫でられ続けた。


「どう?」

「なんというか、変な感じだな。俺、身長高いから触られることさえなかったし……」


 目を合わせてくれたがすぐに逸らされてしまった。照れているのかもしれない。

 そう思いまた頭を撫でる。ほんのり赤い耳見て微笑ましく思った。


「落ち着いた?」

「まぁ、うん。……救世主さまのお手を煩わせました」

「これくらい良いよ。欲しくなったらまた言ってね」

「いやいや、これ知られたら団長に半殺しにされそうだしこれっきりで!」

「そう? 気が変わったら言ってね」


 また明日。そう言ってルーパルドの部屋を出てイナトとロクに見つからないように自室へと戻る。

 ルーパルドの部屋から出てきたのがバレたらきっとイナトの小言が飛んでくるはずだ。


「よし、セーフ」

「何がです?」

「わ、わぁ……イナト。ど、としたの……?」


 後は部屋に入るだけ、だったのに。

 背後にはイナトが立っていた。

 まだルーパルドに会いに行ったことがバレたと決まったわけではないし、平常心で対応したかった。

 だが、かなり不審な雰囲気になってしまった。

 イナトは訝しげに私を見ていたが、気にせず口を開く。

 

「ルーパルドに関してですが、触れないであげてください」

「あ……あー! うん、やめとくよ。今から行こうとしたの、バレちゃった?」

「貴女のことなので、気にして眠れないとか言いそうだったので」

「そんなにわかりやすい?」

「救世主様は真っ直ぐな方ですからね」


 イナトは私がすでにルーパルドのところに行っているとは思っていないようで、胸を撫で下ろす。

 バレていないならこのまま部屋に戻れば何も問題はないはずだ。


「用事はそれだけ?」

「いえ、もう1つだけあります」

「うん?」


 振り返りイナトの顔を見ようとした瞬間、いわゆる壁ドン。いつの間にか近くなっているイナトの顔に目を丸くする。

 

「異性を部屋に招き入れるのも、ダメですからね」

 

 このままキスされてしまうのではないかと目をぎゅっと瞑れば、イナトに耳元で囁かれ、思わず鳥肌が立つ。


「い、入れないよ! そんなに貞操概念低そう?」

「このまま僕が押し入っても、貴女は受け入れてしまいそうで心配なのです」

「何か事情があれば部屋に入れると、思います……」

「貴女はそう言う人ですからね。先程目を瞑りましたが、あれもダメです。OKだと思ってしまいますからね?」

「はい。ごめんなさい」


 イナトは私から離れて、何事もなかったように「おやすみなさい」と一言爽やかな笑顔で言った。

 返事をすれば満足気に自室へと歩き出す。

 イナトが見えなくなったところで部屋へと入る。

 バクバクと激しく動く心臓、ほてった顔。


「心臓に悪すぎる……」


 その場でへたり込み、顔を手で覆ったのだった。

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