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乙女要素のある死にゲーに転移してしまった件〜帰還エンドのはずが、様子がおかしい〜  作者: 勿夏七
3章 スタート国

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21.スタート国

 箱から出てワープポイントを解放しつつ順調に前進した。

 村があったのであろう場所が数箇所あったが、ほとんどが雑草に侵食されていた。

 

 

 やっとの思いでスタート国の王がいる街まで辿り着いた私達。

 ゲムデース国と比べると街は狭く、お城も控えめに見えた。

 イナトに事情を聞いたところ、王は自身の威厳は保てなくてもいいから貧困差を解消したいと身を削った結果なのだそう。

 だが、貧困差が埋まることはなく、ただ王がお金をいたずらに消費しただけで終わってしまった。

 他の施策もことごとく失敗に終わり体裁が保たれず、王を慕っている者があまりいないのが現状だと言う。


「ある程度偉い人との差は必要ってことなのかな……」

「そうなんだろう。金がないと舐められるのは事実だ」

「渡者が言うと説得力があるな……」


 ルーパルドのその反応に、不快そうな表情を見せたロクだったが、ルーパルドを一瞥した後何事もなかった様に無表情へと戻ったのだった――。

 


 イナトの顔パスで容易に城へと入れてもらい、ゲムデース国とは比べ物にならないほどの短い廊下を歩き王の待つ部屋の前まで来た。


「ここまで足を運んでいただき、ワープポイントの開放を優先いただき誠にありがとうございます。入室前にお願いしたいことがございます。聞いていただけますでしょうか」


 鎧を纏った男性は困った表情を浮かべながら私を見た。


「構いません。どのような内容でしょうか」

「ありがとうございます。……何を見ても驚かないでほしいのです」

「えっと……?」


 何故かと聞く前に「早く中に入ってもらいなさい」と言う王と思われる声が部屋から聞こえてきた。

 男性は返事をして扉を開け、私達を中へと誘導する。


「よく来てくれた。何もないところで申し訳ない」


 部屋は殺風景で、煌びやかな装飾もない。

 それよりも驚くことは、王様の容姿だ。

 どう見積もっても10代前半だ。

 この年で国を統治しているのか。

 これは貧困問題以前な気もするが、ゲームだから関係ないのだろうか。


「とんでもございません。スタート国への入国後、真っ先に王にご挨拶をしなかった無礼を許容いただきありがとうございます」

「何を言っているんだ。私がワープポイントの解放を優先して欲しいと言ったんだ。気にすることはない」


 イナトは内装も王の容姿も気にせずに、いつも通り丁寧に対応する。

 イナトは王子だしもしかしたら交流があったのかもしれない。


 質素な玉座に座っている王。玉座が大きいせいで足が地面へとついておらず、ブラブラと足を揺らしている。

 可愛いと言えば不敬と言われてしまうだろうが、思わずにはいられないサイズ感だ。


「君が救世主だね。突然のことで苦労していることだろう」

「お心遣いありがとうございます。ですが、仲間がいるおかげで楽しく冒険をしています」

「それならよかった。それで、せっかく来てくれたのだが……盛大なパーティーは難しい。すまない」


 私を見て微笑む姿は大人顔負けだ。しかしやはり顔や声、体型からまだまだあどけなさが残る。

 このなりで大人だったりするのだろうか。

 

「気になさらないでください。この国のワープポイントを解放すれば少しは景気も良くなるはずです。まずはどうかご自愛ください」


 ルーパルドもイナトに負けないくらい丁寧に対応をする。いつも少しゆるっとした態度だが、こういう時にビシッと決められるのは素直にかっこいい。


 その後、イナトを中心に会話を続け、他の者の謁見があるためとお開きとなった。

 一言も喋らなかったロクは城から出てすぐに長く息を吐いた。


「息苦しい」

「外で待っていればよかったね」

「それはダメだ。主人の側にいるのが俺の役目だ」

「もっと自由にしていいのに」


 王の勧めで街を散歩することになった。

 それぞれ好きなところに行くかと思いきや誰もが私の行きたい場所に合わせるという。

 

 どこに何があるかわからない状態で歩き、ロクに合いそうな服を買ったり、皆で食べ歩きをしたり。

 狭い街ということもありすぐに1周してしまった。


 少し早いが街から出て一度箱へと入る。

 家へと入り楽な服に着替え、リビングへ集合。

 開口一番、イナトは問う。


「いかがでしたか?」

「正直に言うと、治安があんまり良くないかなぁ」

「やっぱり。そういう感想にもなりますよ。スリとか喧嘩とか、ゴミの散乱とか……騎士達も積極的に片付けてなかったんですから」


 上手く統治できていないことは城に辿り着くまでにすでに察しがついていた。だが、こここまで酷いとは思っていなかった。


 イナトが言うには、以前の王が早くに死んでしまい、まだ幼い子供に王の座が引き継がれたのだと。

 信頼できる臣下が多かったこともあり、どうにか国として保っているが、いつ崩壊してもおかしくない。

 子供だと舐めている民が多く、あまり王を表に出さない様にしているのだと語る。


「どうにかできないの?」

「そう言うと思ってたんですよね……」

「ぶっちゃけますと、これについては流石に俺達にできることはありませんよ」


 イナトとルーパルドはやれやれと言いたげな表情だ。

 そんな傍らでロクは今日新しく買った黒いローブを見に纏ったまま提案する。

 

「……王の評判を上げればいいんじゃないのか?」

「簡単に言ってくれるなよ渡者。それができればあの臣下達がとっくにやってる」

「ルーパルド、ロクに対して当たり強くない……?」


 私の問いに一瞬黙ったルーパルドだったが、息を吐いた。

 

「気のせいですよ、気のせい。とりあえず、ワープポイントを解放し、スタート国の国益をあげれば少しは良くなるでしょう。あとは時間が解決してくれます。この国は18歳で大人です。あの方は16歳。後2年の辛抱です」


 ルーパルドは怒涛の勢いで話し、この件はこれで終わりだと言うように席を立ち、自室へと引っ込んでしまった。

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