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乙女要素のある死にゲーに転移してしまった件〜帰還エンドのはずが、様子がおかしい〜  作者: 勿夏七
3章 スタート国

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19.便利道具は沢山欲しい

「ゆ、許してくれ! 俺たちはただ雇われただけなんだぁ」


 おんおん男泣きする成人済みの男達。外傷はないようだが、何をそんなに怯えているのか。

 聞いてみようとルーパルドとロクを見たが、目を逸らされて聞ける様子はない。

 その中でただ1人、イナトだけスッキリした顔をしている。

 男達を使って個人的なストレス発散でもしたのかと疑うレベルだ。


「イ、イナト……何したらそんなに怯えさせられるの?」

「知りたいですか? そうですね……傷を抉ってその傷を治してまた傷を抉ってと繰り返したり、夢魔の瓶を使って精神を――」

「団長!! リン様に恐ろしいこと教えないでください!」

「まだ一部なのに……」

「だから止めたんですよ! それ以上は説明しなくて良いです。ほら、団長のせいで震えてますよ」


 体験した男達はいつの間にか涙を引っ込んでおり、青ざめた顔。ガタガタと身体を震わせている。


「あんな笑顔で尋問されたら怖いかもね」

「……そう言うことにしておけ」


 ロクは冷ややかな目でイナトを見つつ私の言葉に頷いていた。



 気を取り直して、男達の情報を聞くことにした。

 全員お金がなく短期で大金を稼げる仕事を探していたとのこと。

 全員面識はなく、ただ雇われた身なのだと言う。


「俺達は別に救世主が憎いわけじゃないんだ。でも、一度受けたらもう引き返せない。逆らったら殺すと言われていたんだ……」


 リーダーと思われる男は脂汗をかき、震える声でそう言った。

 雇い主も怖いが、今はイナトの方が上回っているのだろう。スラスラと情報を開示していく。

 雇い主と出会ったのはスタート国のとある集落。

 相手はフードを被っており、顔はマスクで覆われていた。声は変声機で変えており性別さえもわからないのだと言う。

 唯一わかったのは、肌は青白く小枝のように痩せ細った腕だったということぐらい。


 情報を吐いた男達をスタート国に引き渡そうと、イナトは伝書鳩ならぬ伝書紙を飛ばした。

 紙飛行機のように飛んでいくのかと思えば、丁寧に折り畳まれた紙は空に浮いた途端姿を消した。

 待つ暇もなく返事が届き「すぐ遣いを出す」と報せが届き、私達は偽物のワープポイントの近くで待機することになった。


 ロクは男達を一瞥した後、コインを指で弾いて暇を潰していた。それを繰り返しながら誰に語るでもなく話し出す。


「スタート国は貧困の差が酷いからな。金を積まれると軽率に受けてしまう奴が多くいる」

「あんたもスタート国の人間なのか?」

「わからない。スタート国とゲムデース国の境目に捨てられていたらしいからな」

「捨て子、か。……まぁ、そうか。渡者は大半が捨て子だと聞くしな」


 渡者は渡者を統括している人がいるらしい。

 統括者自身の金儲けのためというのは勿論だが、生きる術を身につけさせてくれる。

 そのため、住民からも拾われた子達からも批判は少ないのだとか。

 自立するまではお金を何割か統括者に渡し、衣食住を提供してもらえる。

 ちなみに、1人前になった後もずっと統括者の下で働く者もいるらしい。それだけ慕われる存在なのだろう。


「ロクは自立してるんだよね?」

「そうだ。統括者(おっさん)は基本自立を促している。だから残っているのは、独りが苦手なやつと後継者くらいだろうな」


 渡者は自立すると主人を探すようになる。受けるのも断るのも自分次第だ。と言っても渡者の人権は低く、選択権がない場合の方が多いのだと――。

 


 そんな話をしていたら、スタート国の騎士だろう人々が遠くから歩いてくるのが見えた。

 ゲムデースとは違い軽装。鎧はあまり厚みを感じない。重い攻撃ですぐに壊れてしまいそうだ。


「お待たせしました。こちらの男達ですね?」

「はい。よろしくお願いします」


 雇い主はわからないが、全員反逆罪として牢屋に入れられることになったそうだ。

 雇い主が口封じのために刺客を用意する可能性も考え、人通りの多い場所に置いておくとスタート国の騎士は話す。

 また、偽物のワープポイントは撤去しておくと言ってくれた。救世主以外に反応するかは分からないが、万が一もあるため安心だ。


 引き渡しが済み、私達はまたワープポイントの解放へと足を進めた。

 

 私を殺そうとした男達は全員汚れた服を着ていた。体も碌に洗えていないだろう汚れが染み付いており、痩せ細っていた。


「牢屋で食事は出る? お風呂入れたりするのかな?」

「最低限のことは可能ですけど……救世主様、まさかあの者達の心配を?」

「うん。そもそもお金があれば携わることもなかったんだしね」


 お金は出ないが食べ物がもらえてお風呂にも入れる。それならきっとあの人達もゆっくり過ごせるはずだ。

 しっかりと見張っているのなら殺される心配も少ないだろう。

 

「お金がなければ殺しをして良いわけでもないんですよ?」

「それはそうだけど、イナトのおかげでもう悪いことはしないだろうし、ね?」


 イナトは私を見て大きくため息を吐いた。

 その隣ではルーパルドが呆れ顔で私に言う。

 

「確かに悪いことはしなさそうですけど、救世主さまは人が良すぎますって。いつか後悔しますよ」

「その時はやり直すから大丈夫だよ。あと、私には頼もしい仲間が3人もいるし」

「俺もか?」

「うん、ロクもだよ。今後に期待してるからね」

「……貰った金額分は働こう」


 まさか自分も含まれていると思わなかったロクは、フードを深く被り直した。照れているのかもしれない。


「日も沈んできましたし、次のワープポイントの解放が済んだら休みましょう」


 イナトはランタンに火をつけた。

 まだ火をつけるほどでもない気がしていたが、魔物避けの効果もあるのだと後から教えてもらった。

 まだまだ私の知らない道具が沢山ありそうだ。

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