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乙女要素のある死にゲーに転移してしまった件〜帰還エンドのはずが、様子がおかしい〜  作者: 勿夏七
3章 スタート国

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16.きっかけは様々

 アズミから返信があった。『これでいつでも連絡が取り合えるね!』と満面の笑みの顔文字付きで送られて来たのだった。

 通話であればここまでテンションの高そうな返事はなかったと思うと、今後チャットでやり取りをするのが楽しみだ。

 

 イナトの作ってくれた通信機は良好だ。せっかくなのでイナトにお礼を言った。

 嬉しそうに微笑む姿に思わず甘やかしたい衝動に駆られたが、甘やかされるのが好きとは限らないので我慢した。

 その代わり、何かお礼ができないかと尋ねたところ、私の手料理が食べたいと気恥ずかしそうに私を見つめた。


「と、いうことで今日のお昼は私の手料理です」


 ワープポントの解放のために歩き進めていた私たち。

 途中で昼休憩にしようと箱庭へと入ったところでルーパルドにそう言った。


「俺もいいんですか!」

「もちろん。いいよね、イナト」

「あ……はい」


 一瞬嫌そうな表情を見せたが、イナトはすぐに良い笑顔でそう返した。

 ルーパルドもその一瞬の表情を確認していたが、「嬉しいな〜」と言うだけで、遠慮をするつもりはないようだ。

 私はイナトの好物を聞き、まとめて全員分作ることにした。

 どうやらイナトはポテトミートグラタンが好きらしい。

 遠征に出かけ、食料が底をつきお金も持っていない時、近くに住んでいたおばあさんに作ってもらったのがきっかけだと。


「そのおばあさんのレシピあったりしない?」

「さすがにないですね。ですが僕はおばあさんのではなく、貴女の知っているグラタンが食べたいだけなので気にしないでください」

「その時のおかげで好物ができたってだけ?」

「はい。なので気兼ねなく」


 おばあさんの味付けではなくても、お城で専属料理長に作ってもらった時も、街にあるレストランで食べた時も好んで食べていたとイナトは言う。

 ハードルを下げようとしてくれているのだろうが、料理ベテランと並べられても少々困る。

 とりあえず親に教えてもらったレシピでどうにかするしかないと、記憶を頼りにポテトミートグラタンを作ることにした。


 2人には装備の手入れや物資の確認などを任せ、1人で黙々と料理を作る。

 誰もいない部屋で1人というのはとても久しぶりのような気がしてくる。

 一応寝るときは1人なのだが、すぐに寝入ってしまうため、1人の時間というほどでもない。

 お風呂だって長風呂をしないタイプの私には1人の時間とも言い難い。


 この世界に来る前はそれが当たり前だったのになぁと1人辺りを見渡した。


「2人にこの世界に残るか聞いておいた方がいいかもなぁ」


 私は帰るつもりだ。新しいゲームもしたいし家族や友人にも会いたい。

 他にも会社が無断欠勤になっていないか気になってしまう。

 元の世界の自分がどのような扱いになっているのかも不安要素だ。

 

「……救世主様は帰ってしまうのですか?」

「うわぁ! びっくりした……。召使さんじゃないですか」

「急に申し訳ありません。貴女の召使はこの箱庭であればいつでも来られるのです」

「そうなんですね。それでさっきの回答ですけど、先に来ていた2人はわかりませんが、私はこの世界を救ったら帰るつもりですよ」

「……そうですか。それは寂しいですね」


 表情は見えないが、声色からして本当に寂しそうに聞こえる。

 この世界の人々は皆私に好意的で居心地がいい。だが、やはり元の世界の生活も好きだ。

 ここはゲームの世界で、元の世界でも遊べると考えると帰るのが1番だと私は思ってしまうのだ。


「世界救済するまでは帰らないのですよね?」

「え? まぁ、そうなりますかね。というか神様? も世界救済するまでは帰してくれないと思いますし」

「ええ、ええ。そうですね」


 納得したように数回頷き、真っ黒なノートに何かを描き始めた召使。

 よくわからないが、あまり私の帰りをよく思っていないようだ。


「突然の来訪、失礼いたしました。私はここから消えますね」


 そう言い残し召使は一瞬で姿を消してしまった。

 なんだったのだろうと思いながら、調理を再開。

 オーブンに入れて焼き始めたところでサラダやスープも作っておく。

 時間があればデザートもなどと思いながら、私は慌ただしくキッチンを行ったり来たり。


「料理を作るの、何年ぶりかな」


 学校卒業後に親元を離れ、1人暮らし。仕事が楽しくて彼氏は作らず料理も作らず。

 時々作るのは時短レシピを真似するだけ。親にたくさんレシピを教えてもらっていたのに、これまで作らずにいた。

 この世界にいる時くらい、人のために振る舞うのもいいかもしれないそう思ったのだった。



 ――料理が全て完成し、外にいた2人を呼んだ。

 自分なりに綺麗に並べた料理たちを、2人は感嘆の声をあげてくれた。


「頑張ったから写真撮りたくなるなぁ」

「写真機は残念ながら持ってないですねぇ。でも、その気持ちすごくわかります」

「写真機ってどこかで買える?」

「僕が作りますよ。リン様のためならきっと作れる気がします」

「いやいや、買ったほうが早いよ。イナトにはまた料理を作って欲しい」

「! もちろんです。貴女の好物を作りますよ」


 そんなたわいない話をしながら、3人でご飯を楽しんだ。

 2人とも美味しいと言ってくれたので、とても満足のいく昼食となった。

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