15.好感度は目に見えるといい
イナトはなぜか自分なら通信機を作れると自負していた。
もしかしたらゲーム内でも通信機を作るのはイナトだったのかもしれないが、結構無理やり感が否めない。
まぁ、私は通信機が作れて通話やチャットさえできれば誰が作ったものでも良いと思っていた。
だからイナト作でも問題はないのだ。
「じゃあ、作ってもらおうかな」
イナトに必要な素材を手渡すと、イナトはそれを1つ1つ眺めた後すぐに作業へと取り掛かった。
私の隣でイナトを眺めているルーパルド。
物珍しそうに眺めていることから、イナトがこういった類の作業をしている姿を見たことがないのだろう。
「もしかしてイナトってなんでもできる?」そうルーパルドに問えば、ルーパルドは難しい顔をした。
「正直、同じ班になったことなんて両手で数えきれるほどだから肯定しづらいですね。でもまぁ、団長がいれば安心だと言っている人は多く居たし、そうなんだろうなぁ」
取扱説明書もないのに迷うことなくパーツを組み合わせていくイナト。もしかしたらアズミより早く作り上げるかも知れない。
これがメインヒーローの力か。
「完成しました。試しに使ってみてくださいませんか?」
「早っ!」
イナトのスピードに感心している間に作り上げ、早く使ってほしそうに私を見つめた。
アズミにまた作って欲しいと頼んではいないが、一応イナトに作ってもらったことを報告しておこうかと私は画面を触る。
携帯電話のように相手の番号を登録する必要がないようで、すでにアズミとマリエの名前が並んでいる。
アズミの名前を指でタッチして通話かチャットか選ぶ画面へと移った。
アズミは通話が苦手と言っていたのでチャットを開き、『イナトに通信機作ってもらったよ』と送信。
すぐに返事が来ないかもしれないが、無事送信ができた。
顔を上げると、イナトがその様子を満足そうに眺めていた。
「よく作り方も見ずに作れたね?」
「天啓……とでも言うのでしょうか、突然頭に浮かび上がって来たのです」
「それでできちゃうのも中々すごい気がするけど」
「団長は天才ですからね……」
顔良し声良し頭も良くて手先も器用。戦闘能力も高いとなると、女性が放っておかないだろう。
ただ、王子なのでヘタに手を出せない感じも否めないけれど。
「絶対イナトってモテモテだったでしょ」
「そ、そんなことは……」
照れるイナト。否定の言葉を吐こうとしたところでルーパルドがイナトの言葉を遮り話し始める。
「そりゃあ、そうですよ。でも、団長はいつもこう言うんです。"僕はまだ若輩者。それに、貴女にはもっと素敵な人が迎えに来ますよ"と」
「イナトより素敵な人ってどんな人を指すんだろうね」
「わかりません。でも、女性たちはこう思い込むんです。"きっと成長したイナト様が私を迎えに来てくれる!" とね」
「え、怖い。どう言う解釈?」
「もっと素敵になった人がって解釈になっているのだと思います。ちなみに俺は告白される前に逃げるタイプです」
「イナトみたいなこと言えば紳士的なんじゃない?」
「厄介ごとは抱えたくないんです」
見た目のせいで軟派なイメージがあったが、意外と交際好きではないようだ。
確かにチャラい見た目とは書かれていたが、女性がいれば口説くとか女性には甘いとかそういう書かれ方は一切なかったように思う。
でも、主人公である私には少し甘い気がしたが、これも主人公補正なのか。
死にゲーと言えどこれは乙女向けのもの。だからこそあまり積極的に他の女性との関係は作っていないのかもしれない。
「……ルーパルドに告白できなかった女性もこちらに来るのですけどね」
途中から黙っていたイナト。どうやら私からの褒め言葉でさらに顔を赤くしていたようだ。
こんな褒め言葉にも素直に照れる男がモテないわけがないなと私は微笑ましく思った。
……ちょろいだけなのかもしれないが。
「そうは言っても、その程度の好きだったんでしょう? 俺は悪くないですからね」
「確かにバッサリ切った方がマシな気もするね」
「そ、そうは言っても告白を無視するのはどうかと思いませんか!?」
「いやいや、無視じゃないですよ。告白される前に相手の前から消えたり、好きな人がいるって匂わせておくんです」
「……嘘つきじゃないか」
「団長のかわし方よりいいと思いますよ……。"私がイナトの彼女よ!"とか言い出す女性が集まって大乱闘になったこともあるんですから」
「くっ」
言い返せなくなったイナトは「今後は気をつけます」となぜか叱られた子犬のようになっていた。
別に交際自体悪いことではないし、こちらとしては恋愛は自由にしてもらいたい。
「逃げても受け入れてもいいと思うよ。私のことは気にせず自由に恋愛してよ。ね?」
「……えっと、もしかして俺たちに魅力がない感じです?」
「いやいや、2人ともかっこいいし私が独占するのは申し訳ないな〜と思ってるくらいだよ」
そう言えば、イナトは考え込み始め、ルーパルドは苦笑いを浮かべたのだった。




