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145.魔王弱体アイテム

 ローズクウォーツはここのダンジョンの主なのだそうだ。

 オジーの世代の時は別の龍だったそうだが、その後引き継いだのがローズクウォーツだと。オジーは知らされていなかったようで、驚いていた。

 

 このダンジョンでは、救世主の力量を測り、不足している場合はローズクウォーツと戦い勝利すれば獲得できるのだとか。

 力量不足なのに戦うのか……とも思ったが、死んで動きを覚えてしまえばまあ、無理矢理突破も可能ではあるだろう。


「力量ってなんですか? レベル?」

「レベルももちろん含まれるわ。でも、私はコミニュケーション能力やこれまでどれほどの人を助けたかなんてことも含んでいるの」


 結構シビアなんだなぁと思っていると、ローズクウォーツは私をじっと見つめた。瞬きもせず、何かを探すような視線。全て見透かされているような感覚になる。


「貴女は余裕で合格ね。おめでとう」

「流石リン様ですね」

「うん、ありがとう」


 嬉しそうなイナト。もちろんルーパルドやロクも口を挟まないだけで、よくやったと目が言っている。

 安心したが、どの程度だったら合格なのか。数字が表示されるわけでもないので何もわからない。

 

 私の目の前に突然現れたアイテム。見た目はただの小さな水晶だが、これが魔王弱体に使うアイテムなのか。

 まじまじと眺めていると、オジーも隣で眺め始めた。オジーは過去に取らなかったのだろうか。いや、それなら、このダンジョンを迷わずに最上階まで突き進むことはできなかっただろう。


「小さくなった?」

「ええ。誰かさんが壊したからよ」

「う、ごめんなさい」


 元々はもっと大きな水晶だったらしい。だが、手を滑らせてオジーが壊してしまったと。その時はなんとか修復したが、長くは持たなかったのだ。


「効果は別に変わらないんですよね?」


 いつの間にか近くまで来ていたルーパルドは水晶を見た後、ローズクウォーツを見た。ローズクウォーツは頷き、オジーを見て嫌味っぽく言う。

 

「ええ。それは大丈夫よ。ただ見栄えが落ちただけ」


 オジーは苦笑いを浮かべたが、ロクが隣で「持ちやすくなっていいだろ」と別にオジーを慰める雰囲気もなく言っている。感動したのか、「ありがとう!」と熱い抱擁を交わそうとしたオジーだったが、すぐにロクに逃げられていた。ちょっと面白い。

 

 

 一通りローズクウォーツと話終えた後、ローズクウォーツによって一瞬でダンジョンの外へと移動。

 だが、見覚えのない景色。先ほどのダンジョンは森があり魔族の住む建物が見えていた。

 今目の前に見えるのは、湖。何かが湖の近くを飛んでいる。また、湖を泳いでいる何かも見える。


「あれ? ここ違う場所?」

「魔王弱体のアイテムを先に取ると、別のダンジョン前に移動させてもらえるんだ。理由はわからないけど」

「便利だな」

「うん、とっても便利。でも、魔王弱体アイテム以外のダンジョンから行くと発生しないんだよね」


 それも理由は不明。オジーはそう言って湖を指差した。


「あれがエルフだよ。小さな妖精みたいにいたずら好きだから近づかないようにね。俺はあの子たちに水晶を取られた」

「あ、もしかしてそれで壊して……」


 ルーパルドは何かを察したようで、少し小さな声でオジーを見た。

 オジーは大きく頷き、私達の背中をダンジョンの方向へと押す。

 

「そう。だからほんとやめとこ――」


 オジーが言い終わる前に突然飛んできた水。と言っても殺傷能力の高そうな鋭い水鉄砲だ。私の近くを掠めたそれは、木に穴を開けて止まった。

 オジーは私を抱きかかえ、木の上へと逃げる。ロクが下から俺の役目! とでも言いたそうな表情をしている。


「救世主狙うのはダメだろ?」

「俺様たちを無視する奴が悪いんだ!」

「そーだそーだ! ていうか当てないようにはしてた!」


 エルフは頬を膨らませ、オジーに抗議をしている。


「つーか、救世主は死んでなんぼだろ。死ね死ね」

「物騒ですね……」


 イナトは近くを飛び回るエルフを見て顔を歪めている。ロクは1人のエルフを捕まえて睨んでいる。


「ロク、よく捕まえられたね」

「こいつがリンに水を噴射した。殺すか?」


 握りつぶしそうな勢いのロクに、私は慌てて首を横に振る。

 

「やめよう。私は当たってないし、実際死んでも問題ないから」


 舌打ちをした後エルフを放す。ロクのせいだろうが、「怖い奴!」「逃げろ!」と湖へとエルフは全員逃げてしまった。

 

「世界救ったら帰るって言ってたけど、死に戻りは躊躇わないんだね?」


 いまだに私を抱えたままのオジーは興味津々で私を見つめた。頷くとちょっと嬉しそうだ。

 オジーはエルフが皆いなくなったことを確認した後、木から降り、私を降ろしてくれた。


「え、もしかしてオジーさんは死に戻り賛成派なんです……?」


 ルーパルドはショックを受けているようだ。自身のご先祖さまが救世主に死を推奨するとなると確かにちょっと複雑かもしれない。


「救世主の君にとってはデメリットかもしれないけど、この世界の人なら皆喜ぶはずだよ。もしかして誰も教えてくれる人がいないの?」


 オジーは最初に救世主から死んだ時のメリットを聞いていたらしい。もちろん死に戻りのメリットは私も話したつもりだ。どのような説明をしたのか気になるところだ。


「1番のメリットは――」

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