13.マルチ相手とは基本仲良く
スタート国に入国を済ませた私たちは、さっそくアズミのいる村へと歩く。
その時にやっと私も戦闘に参加させてもらうことができた。
敵は想像していたよりもずっと弱く、数回攻撃を当てるだけで倒せてしまった。
きっとこれは、2人がゲムデース国で倒した経験値のおかげで力がついているのだろう。
戦いも楽しみたい私にとっては"おかげ"というよりも、"せい"と言った方がしっくりくるが。
敵を難なく倒し、見覚えのある地形まで辿り着いた。ここまでスムーズに事が運ぶと死にゲーということを忘れそうだ。
村が見えてきたところでルーパルドが口を開いた。
「お、あそこがアズミという方がいる村ですね?」
「ルーパルド、失礼のないようにな」
「えぇ……。俺、リン様にも失礼してなくないですか〜?」
「してないしてない。大丈夫だから」
釘を刺されて不服だったルーパルドは、私にすがりつく。
その様子をむっとした顔で見ていたイナト。怒らせそうだと思った私は、すがりつくルーパルドを避けて村のワープポイントを解放する。
これでこの村にも帰りやすくなった。
「おお、救世主様ではありませんか。わざわざワープポントの解放に来てくださったのですか?」
「はい。それとアズミさんに会いたいのですが、部屋にいますか?」
「アズミなら今は畑にいますよ。働かざるもの食うべからず。ですからねぇ」
救世主ではなくなったアズミは、どうやら今はこの村で働かされているようだ。
村長はニコニコとしながらアズミのいる畑まで案内してくれる。
畑は広く、たくさんの人が種を蒔いたり水をやったりしている姿が目に入る。
だが、アズミの姿はない。
「おや? アズミはどうしたんだ?」
「アズミならあそこで寝てますよ」
村長がアズミを探す中、村の人が少し畑から離れた場所を指差す。
布が敷かれた場所で1人突っ伏しているアズミ。
スタミナ切れだろうか。
「アズミさん、大丈夫ですか?」
「おかしいな、リンさんの声がする……幻聴?」
「幻聴じゃありませんよ。お久しぶりです、アズミさん」
「おおおお!? お、お久しぶりです。見苦しい姿を、お見せしました……」
畑仕事の疲れと私が突然現れた驚きのせいだろう。
アズミは顔を真っ赤にしている。
後ろで畑の手伝いを始めているイナトとルーパルドに気づいたのか、アズミは私を見て小さめの声で聞いた。
「リンさん、あの人はもしかして新しい仲間の……?」
「はい。ルーパルドです」
「よろしくお願いしますね。アズミさん」
「わ、わわ……。よ、よろしくお願いします」
自分の名前を呼ばれたことに気づいたルーパルドは、すぐにこちらに来てアズミに挨拶をした。
だが、アズミはなぜか私の背後に隠れ、ルーパルドに聞こえたか分からないほどのか細い声で返した。
「アズミさんは恥ずかしがり屋さんですかね……?」
「まぁ、そんな感じ。アズミさん、以前、通信機が作れるって話してましたよね?」
ルーパルドには畑に戻ってもらい、私はアズミと会話を続ける。
渋々戻っていくルーパルドの背を申し訳なさそうに見ていたアズミだったが、私の問いに答えるように頷いた。
「はい。確かに言いました……けど、素材がどこで手に入るかがわからなくて」
「ワープポイントにそれらしい素材があったので買っておいたのですが、見てもらえますかね?」
購入の際表示されるメッセージに通信機が作れる〜とか書いてあったので買っておいた素材。
その場に並べると、アズミは1つ1つ確認していき目を輝かせた。
「これです! まさかワープポイントに売ってあっただなんて……盲点だったなぁ」
「それならよかった! それで……私のスキルじゃまだ作れないみたいなんです。アズミさんなら作れたりします?」
「大丈夫です。これなら2つは作れそう」
「そうですか。ならあと1つはマリエさんのところで買うことにします。そしたら3人で通話ができますね」
私が笑顔で言うと、アズミは目を大きく見開き顔を引きつらせた。
「え? も、もしかして……1つはわたし用、ですか?」
「そうですよ。せっかく同じ世界から来てるんですし、仲良くしたいな〜と思って。だめ、でしたか?」
「そんなことは……!ただ、電話、苦手なんです。せめてチャットとかだったら」
「なるほど。チャットならいいんですか?」
「はい、そう……ですね」
私が眉を下げたため失言したと思ったのか、顔を伏せその場で素材をつなぎ合わせ始めたアズミ。
少し馴れ馴れしすぎたかと私は謝ろうと口を開いたが、アズミが「できました!」と私の目の前に通信機を突き出した。
「これ、チャット機能があるみたいです。だから、その……わたしの力が必要な時は呼んでください」
「ありがとうございます!」
照れ臭そうにするアズミを思わず抱きしめると、アズミは「ひゃっ!」と甲高い声で鳴いた。
慌てて体を離すと、アズミはさらに真っ赤になった顔を手で覆う。
「ご、ごめんなさい。こういうの、慣れてなくて……」
「こちらこそいきなりごめんなさい! あの、よかったら今後は敬語なしでいきませんか?」
「い、いいんですか!? 馴れ馴れしくなりますよ?」
「その方が嬉しいです」
こうしてアズミとの距離を縮められた。
この調子でマリエとも仲良くなるべく、2人を呼んだ。
早く2人のために通信機を準備したい。
村の人たちの挨拶も程々に、村を出発したのだった。




