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116.無人島

 ロクから洞窟を出たと連絡が届き、3人でロクの居る場所まで行くことに。

 場所は私が人間探知機能を使い場所を特定した。どうやらそこは森の中にあるようだ。と言っても迷いの森とか霧の森とかそう言った名称のある類の森ではない。本当にただの森。

 ちょっと魔物がいたりするが、それはすべて片付けたとロクは言っていた。


「建物があった形跡とかもあるみたい」


 ワープポイントを駆使して目的地に向かう。

 私は歩いている間にロクから送られてくるメッセージを読み上げる。

 イナトはその土地に何があった場所か調べるためだろう、片手に分厚い本を持っている。

 そんなイナトの様子をルーパルドは苦笑しつつ、周り様子を警戒していた――。


 

 ロクがいる場所まで到着したが、ロクの姿は見当たらない。最初に出会った時のようにどこかに隠れているのだろうか。ミニマップを見てもやはり表示されない。

 だが、人間探知機能はしっかりとこの場所を指している。


「ロク、ロクー? ……うわぁ!」


 ふわりと背後から抱きしめられてしまい思わず声が出た。

 もちろん抱きしめてきた正体はわかっている。ロクだ。鍛え上げられた腕を撫でながら、私はロクに言う。


「ロク、びっくりさせないでよ」

「性分だ」

「嘘つけ」

 

 ルーパルドはすぐにロクを引き剥がす。ルーパルドに引き剥がされたロクはチッと舌打ちをしつつも大人しく引きずられた。もうこれも見慣れた光景だな。

 ロクはルーパルドから解放された後、歩き出す。私達もロクを追いかけると、ロクは揃ったことを確認した後に口をひらく。


「ここから入れる」


 ロクが指を差した場所は、草や土でカモフラージュのされている地面だった。言われない限り気づくことは難しいだろう。それほど馴染んでいる。

 ロクがここから出てきたのだからカモフラージュが崩れていてもおかしくない。そう思ったが、どうやら魔法でこの見た目を保っているらしい。


「昔ここに住んでいた人々がいたようです。その人々により海の真ん中にある島へと行けるようになったとか」


 興味深そうに話しているイナト。となると住んでいた人が隠したのだろう。

 なお、それ以上のことは記録がなかったようで、特に島に何があるか等はわからなかったようだ。


「そんなことはいい。早く行こう」


 ロクは歴史に興味がないらしく、床に設置されている扉を開けて1人で階段を降りていく。

 私達もロクに続き階段を降りた。

 洞窟内部は磯臭く、足の生えた魚があっちへこっちへと走り回っている。魚についている足はまるで鳥足のようだ。


「アシギョウオは魚の中でも脂が多く乗っている。美味い。鳥足に見えるあの足は、見た目通り鳥足と同じ味と食感だ。あれも美味い」


 イナトが捕まえるのは難しいと言ったばかりだと言うのに、ロクは嬉々として語っている。

 

「ロク、あれを食べたことがあるのか? 自分で捕まえたのか……?」


 イナトは信じられないと言いたげな表情で、ロクにそう問いかけた。ロクは大きく頷き「当たり前だろ」とキョトンとしている。

 今も全速力で走っているアシギョウオ。目では捉えられるものの、いざ捕まえようと思っても捕まえられそうな速度ではない。高速道路を猛スピードで走る車くらい速そうだ。


「食べたいか? 捕まえるか?」

「いや、いい。脂の乗った魚も、鳥足も僕がいくらでも用意してやるから大人しくしていてくれ……」


 そわそわとしていたロクだったが、イナトにそう言われ嬉しそうな雰囲気で頷くロク。

 イナトの取り寄せたものは全て美味い。そうロクの頭には刻まれているようだ。

 実際美味しいので箱で勝手に補充されるものとは別に、イナトが買ってくれた高価な食材を使った料理を食べることもある。


「渡者、お前はなんなら食ってないんだ? スライム?」

「スライムは食べ物じゃないだろ」

「お前の食べ物かそうじゃないかの判定がわからねぇよ……」

 


 ◇



 長い洞窟は終わりを告げた。

 雑に空いた穴から抜け出すと、森の中のようで草木が生い茂っていた。

 洞窟での磯臭さは薄れ、草木の匂いや獣の臭いが漂っている。


 ロクは道を覚えているようだ。すぐに私の手を取り道案内を始めた。

 何かを思い出したかのようにロクはイナトとルーパルドがいる方向へと振り向いた。

 そして地面を指差す。

 

「足元に気をつけろ。木の根や大きな石、死骸もある」


 そう言ってスタスタとあらためて歩き始めたロク。なぜかずっと私の手を握ったまま。


「注意しろって言ってくれるのはありがたいが……なんで救世主さまの手を握ったままなんだ?」

「リンは意外とドジだ。俺が誘導することで危険を回避できる」

「え、私そんなにドジ?」

「渡者の言いたいことはわかるよ。だが、救世さまを取り囲んだまま移動する手もあるだろ」

「ねえ! 私そんなにドジ!?」


 私の話を無視して続けるロクとルーパルド。そんなにドジと思われるような行動をとった記憶はない。それなのにドジ前提みたいなこの話は一体何なんだ。


「救世主様がドジかどうかは置いておきましょう。僕はルーパルドの意見に賛成です」

「置いておかないでほしんだけどなぁ?」


 私はもう少し行動を見直した方がいいのだろうか。

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