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105.騎士学校へ

 頼まれごととはナルとスミスへの荷物配達だった。

 ちなみにナルの居場所についてはルーパルドが事前に教えていたらしい。ネェオは行方不明だったナルのことをずっと気にしていたのだと言う。


「ナルちゃん、ずっと私のそばに居てくれてもよかったのに……」


 突然何も言わずに消えたから心配していたとネェオは寂しそうに語る。

 ナルを拾ったのは5年前。その時はかなり痩せ細っており、今にも死んでしまいそうなほどだった。誰もが無視する中、ネェオはナルに声をかけ、衣食住を提供。

 最初、ナルは一言も喋らずただじっとネェオを見つめていた。だが、次第に話しかけたら言葉を返すようになり、最終的には毒舌を吐くほどになったのだとか。


「懐かしいわぁ。あの子、すぐ揚げ足を取るし生意気だったの。でも、店の手伝いはしてくれるし厄介な客を追い払ってくれるし、いい子だったわ」


 アタシの元に帰って来て〜と嘆くネェオ。それを無視してイナトは「すぐ持っていきますね」と荷物を受け取り先に店を出て行ってしまった。


「イナト様ってば、ほんとつれないわね……。まあいいわ。お願いね〜」


 私にウインクをしたネェオ。私は頷いてルーパルドとロクと一緒に店を出た。

 店まで待っているかと思いきや、イナトがいない。少し離れた場所に人だかりができており、中心にイナトの頭が見えた。一瞬で女性に囲まれてしまっている。


「人気すぎない?」

「あれは序の口ですよ。早く助け出さないともっと増えます」


 どう助けろと言うのだろう。じっとその人だかりを眺めていると、イナトはこちらの視線に気づいたようだ。女性達へ断りを入れこちらに歩み寄ってくる。

 私を見て優しい笑みを浮かべているせいで女性達は私を睨んでいた。以前まで気づかなかった視線達が、痛いほど伝わってくる。よく今まで気づかずに過ごしたな。


「失礼しました。早速ですがナルへ荷物を渡しに行きましょう」

「俺も騎士学校に行く用事がある。せっかくだから一緒に行こうや」


 店から出て来たクロノダは店の外に置いていた大きな荷物を担ぎ、私の隣に立った。その瞬間女性達はイナトに挨拶を済ませ、そそくさと四方八方へと散っていく。クロノダの顔に驚いたのかもしれない。イナトとは違って怖い顔をしているので。


「クロノダさんほど迫力があれば睨まれることもないかなぁ」

「それはやめて。救世主さまは可愛いままでいてください」

「あはは、流石に冗談だよ」


 そうは言ったものの、ステータスの魅力部分をどうにかすれば相手を黙らせることもできるのではと1人考えていたりする。

 いつからあったステータスかは知らないが、乙女要素が含まれているゲームだからこそのステータスだなと思う。余裕があればそちらにもポイントを振ってみたいものだ。


「騎士学校までは少し距離があります。ゆっくり行きましょう」


 「救世主様!」と笑顔で手を振られたり、「イナト様〜」と黄色い声が聞こえてきたり。そんな中、クロノダの目つきにビクッとする人もちらほら。

 


 ――騎士学校へと到着。

 クロノダは別場所に用があるからと校門で別れた。

 ちょうど今日の授業が終わった頃だったようで、生徒達が放課後を満喫していた。

 近くにいた生徒へイナトが話しかけると、生徒は敬礼をした。


「ナルという生徒を知っているか?」

「ああ、途中入学の生徒ですよね? 目立つので多分皆知ってると思いますよ」


 ナルは座学が得意のようで好成績を収めているのだとか。だが、実戦は苦手のようですぐスタミナ切れとなることが多い。といってもスタミナが切れる前に魔法のゴリ押しで決着をつけるため、ナルに勝てる相手は少ないらしい。

 

 イケメンや美形は大体強いと相場が決まっているのだろうか……。

 しかもそれ以外にも目立つ要素がある。

 それが口の悪さだ。座学ができない人間を煽っているのだとか。また、スタミナがない自分に負けるなんてという煽りもある、と。


「好き放題してるなぁ」

「俺達と会った時はそこまで気の強そうには見えませんでしたよね」

「相手を選んでるんだろ」


 ロクの言葉にルーパルドは納得しているが、それを聞いていた生徒は苦笑い。きっとこの生徒も煽られているのだろう。


「……それで、ナルは放課後どこにいる?」

「部屋だと思います。授業が終わるとすぐに部屋に戻ってしまうんで」

「そうか。ありがとう」

「とんでもないです。失礼します」


 生徒は会釈をして友達のいる方向へと走って行った。その様子を見ていたルーパルドは誰に投げかけるわけでもなく言葉をこぼす。


「部屋に篭ってんのかぁ。あいつも友達いらないタイプか?」

「早期卒業がしたいそうだ。だから部屋で勉強でもしているんだろう」

「え、団長もしかして文通でもしてるんです?」

「今は僕がナルの保護者みたいなものだからな。日誌をつけてもらい、それを毎週送るよう指示している」


 内容としては、何の授業を受け何を学んだか、何を思ったかなどらしい。正直面倒くさそうだ。ルーパルドもそう思ったのだろうちょっと嫌そうな顔をしている。

 そんな中、ロクはただの興味でイナトに質問した。

 

「毎週ちゃんと送られてくるのか?」

「ルーパルドと違って優秀だよ」


 イナトはにっこりとルーパルドへと笑う。

 ルーパルドは報告書をよく提出し忘れるらしい。イナトはお前も見習えとルーパルドに無言で訴えかけているように見える。


「突然飛び火してきたんですけど」


 顔を歪め、努力しますとだけ言いルーパルドは口を閉じたのだった。

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