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103.行ったり来たり

 アデルに血や唾液を提供した後、イナトとルーパルドと合流した。


 男性は無関係。だが、女性は男性と会う前に外部の人との交流があったことがわかった。

 その外部の人の特徴は、長髪で丸メガネをした男性だと言う。人当たりの良さそうな優しい顔をしており、男性にあまり興味のない女性までほの字になるほどの美形らしい。


「人形になった女性は、どうやら魔力で動いているようです。男性が魔力を流し込んで話をさせていただきました」

「女性が言うには、救世主はどんな呪いも消し去れる液体を持っている。と教えてもらったらしいですよ」


 液体というのは間違いではない。だが、どこでそんな情報を手に入れたのかわからない。ただ当てずっぽうだった可能性も否めない。

 また、その情報と交換で自身が持っていた呪いを提供していたと言う。

 その提供した呪いが今回イナトに盛られた呪いだったようだ。ということは、私を殺そうとしていた男の可能性が高い。


「じゃあ、その長髪の丸メガネの男を探せば良さそうだね」

「一度もそれらしき男を見た覚えがありませんが、見つけられますかね」

「美形だったら目立つんじゃない?」

「ここにすでに様々な女性を虜にしている美形がいるからなぁ」


 ルーパルドはイナトをチラリと見た。確かにイナトは美形だ。きっと長髪も似合うしメガネも似合う。


「団長より劣る場合、俺たちは一生気づけないかもしれません」

「確かに」

「ルーパルド、ふざけたことを言うな。救世主様も納得しないでください」


 ルーパルドに怒ってはいるが、私に美形だと認められて嬉しいのか、耳だけ赤くしているイナト。結構照れ屋だ。


「団長に恋人取られた同期や、団長が好きだからと振られた先輩の身にもなってやってくださいよ」


 イナトはそんなこと言われてもと困り顔だ。それもそうだ。モテたくてモテているわけではないのだから。ただ、女性が放っておけないのだ。

 今の話を聞き、ロクはルーパルドも失恋しているのではないかと思ったのだろう、ルーパルドに問いかけた。

 

「お前は?」

「俺? 俺はそんなこと考える余裕もないくらい鍛錬してたからないぞ」


 平然とした表情のままルーパルドは言う。家族を亡くしてからずっと鍛錬や遠征を積極的に参加し、何も考えないようにしていたらしい。

 それを知った途端、ロクはやらかしたという顔をした。そんなロクを見て、ルーパルドは聞き返す。


「そういう渡者はどうなんだ? 色恋の話は何にもなさそうだが」

「もちろんない。あるわけがない」


 まるで自慢するかのように言うロク。だが、ルーパルドは胸を張るところじゃないとツッコミを入れた。


「救世主さまは? 恋愛とかは……。まさか俺達差し置いて元の世界に恋人いるとか言いませんよね?」

「いないよ。私は仕事が恋人だったからね」


 元の世界の仕事がもう遠い昔のことのようだ。私がいなくても仕事は回っているのだろうか……。そんなことを思っていると、イナトは大きくため息を吐いた。


「この話はもういいでしょう。その男は神出鬼没のようなので、ワープポイントの解放をしつつ探しましょう」

「早く片付けば良いですけどね〜」

「ルーパルド、ナルが以前世話になっていた男性はまだ店を開いているのか?」


 ナルはゲムデースに店を構えているオネェの世話になっていたと言っていた。何を売っているのか詳細は知らないが、勇者の剣のレプリカを売りたいからと許可を取ると言うことは子供向けのおもちゃ屋さんだろうか。

 

「ああ、オネェの……。閉めたって話は聞きませんし、開いてるんじゃないですか? なんで突然?」

「店を構えていればいろんなお客を見るだろう? 長髪で丸メガネをした美形を見たことがあるかもしれない」

「それは確かに。あの人、美形に目がないし見てたら覚えてると思いますよ」


 

 ということでまたゲムデースに戻り、店のある場所をルーパルドに案内してもらうことに。

 街中を歩いていると、綺麗なドレスを見にまとった若そうな令嬢からくたびれた服を着まわしていそうな婦人に「イナト様」と語尾にハートがつきそうな雰囲気で声をかけられていた。その度にイナトは軽く会釈をして、黄色い声をもらう。

 そして、ついでだと言わんばかりに「救世主様」とも呼んでもらえるものの、扱いは雲泥の差。

 以前はそんなことなかった気がするのだが……。どういう心境の変化かは知らないが、イナトはゲムデースの人(主に女性)にとってそれだけ存在感が大きいのだろう。色んな意味で。


「ここです。ここ」


  "Open"と書いている店を指差しルーパルドは私達を見た。イナトはすぐさま扉を開き、私に向かって「どうぞ」と言ってくれる。


「あ、ありがとう」

 

 いつもならありがたいな〜程度にしか思わないのだが、女性達の視線のせいもありちょっとお礼がぎこちなくなってしまった。それでも気にするそぶりを見せず、イナトはいつも通り笑顔で頷く。

 

 外装もそうだったが、かなり上品な店だ。高級ジュエリーを取り扱っていそうな雰囲気。


「いらっしゃ――あら? ルーちゃんじゃない。しかもイナト様まで! ということは、そこの可愛らしい子が救世主様かしら?」


 細マッチョと呼ぶべき人だろう。胸筋は詰まっているが、腕や足は太すぎず細すぎず。髪はウェーブのかかったピンク色。少し体格のいいお姉さんと言われれば信じてしまいそうなほどだ。

 ただ、一点だけ絶対に男だと確信するものがある。

 かなり野太い声だ。

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