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100.主犯は誰か

 ワインに呪いを仕込んでいたのは、数日前にワインを持ってきた業者だったそうだ。業者側は新規で雇った男にワインを持って行ってもらったのだと話していたらしい。しかもその男は1日で辞めてしまい今は行方不明。


「その男はもしかして自称渡者? どんな見た目か覚えてますか?」

「残念ながら帽子を深く被っていたため、顔は見ていません」


 セヴァスチャンは申し訳なさそうに首を振った。

 高価なワインを飲むのはイナトか客人のみ。未開封となれば毒味をすることもない。だからこそバレずにいたようだ。なお、呪いはコルクに針を刺し注入されていたのだそう。

 

 イナトを廊下まで歩かせていたが、人を操れる呪いなのだろうか。

 そんなことを考えていると、突然イナトに届いた伝書紙。アデルからのようだ。イナトは早速開け、中身を読む。


「……誰の入れ知恵かわかりませんが、特定の呪いを受けたものの夢に入り込み、体を操れる呪いのようです」


 と言ってもちよっとした指示しかできないため、イナトは歩行のみだったようだ。

 また、その呪術を発動するには髪の毛1本が必要だと言う。

 どのようにしてイナトの髪の毛を手に入れたのかはわからない。


「そういえば元メイドがイナトの髪の毛を取ってこいってデボラ嬢に言われたって言ってなかった?」

「言ってましたね。……もしかしてその髪の毛を?」


 共犯だったのかはわからないが、元メイドが手に入れた髪の毛を使った可能性は高そうだ。

 イナトはデボラの手元に髪の毛が渡らなくて良かったと思う反面、デボラのせいで厄介ごとに巻き込まれた可能性があるとわかり、複雑な表情を浮かべていた。


 呪いで廊下を歩いていたイナト。あの時は夢と現実の境目にいたらしく、イナトはあまり覚えていないという。

 ずっと草原を歩いているような感覚だったとか。


「私を襲った男は、私を殺すために来たって言ってたけど……イナトを廊下まで誘導した理由は?」

「人質なんじゃないか? リンが呪術にかかればそのまま殺す。リン以外ならお前が死なないのなら、人質を殺すと言えば死ぬだろうしな」

「なるほど。それならどちらにせよ死に戻るなぁ」


 よく考えられたやり方だ。


「主犯見つけない限り続きそうだね」

「そうですね……。今後は出来る限り箱の中で休みましょう」

「夢避けの香を焚いておけば問題なさそうですしね〜」


 なお、夢避けの香はリムから買うことになった。

 アデルの作った夢避けの香は素材が貴重なものが多い。アデルから素材を用意してくれるのなら作ってやると言われたが、安定して仕入れることは難しいため断念したのだ。


「ねえ、呪術ならアデルさんに聞いてみない?」

「その方がいいかもしれませんね。意外とジュ村に犯人がいるかもしれませんし」


 アデルをまたここに呼び出すことも考えたが、時間制限付きのためそう何度もここに来れない。また、ジュ村に犯人がいる可能性を考えると、こちらから赴いた方が得策だろう。


「では準備が出来次第行きましょう」


 イナトに言われ、それぞれ部屋に置いてきた荷物を取りに部屋を出ていく。

 私も部屋から出ようとしたところで、イナトに話しかけるセヴァスチャンの声で立ち止まった。

 

「イナト様、朝食は持ち歩けるパンにいたしましょうか?」

「……ああ、頼む。騒々しくてすまないな」


 イナトはまだ自分が朝食をとっていないことを思い出した。いつもならすでに食べ終え行動しているはずなのだ、無理もない。

 扉付近に控えていたメイドは頷き部屋を出て行った。きっとこれからパンの準備をするのだろう。

 

「とんでもございません。そもそも、侵入者を防げなかったわたくしの落ち度です」


 セヴァスチャンは心苦しそうにに眉を下げた。だが、イナトはセヴァスチャンに微笑み首を横に振る。


「セヴァスチャンが気負う必要はない。今回は相手が悪かっただけだ」


 その言葉にセヴァスチャンは「イナト様……」と感動の涙を浮かべている。すぐに胸ポケットに入れているハンカチで涙を拭き深々と頭を下げた。

 

「僕達はもう出発すると兄様に言っておいてくれるか?」

「心配しておりましたので、顔を見せてから出発されてはいかがでしょう」

「いや、やめておこう。兄様も今は特に忙しいだろう。今後も手紙は送るしな」


 伝書紙を取り出しイナトはさらさらとその場で何かを書き、飛ばした。おそらく国王宛のものだろう。

 

 そういえば国王とは1日食事を共にしただけだ。

 忙しい理由としては、デボラのパーティーに関することが主なのだとか。

 国王は参加こそしなかったが、救世主関連ということで、どのような催しをするのかなどを確認する必要があったらしい。また、パーティーで起きた事件についても調べる必要があり、色々と手配しているのだという。

 個人のパーティーでも救世主が絡むと面倒になるのか。大変なことだなぁと私はぼんやりと思ったのだった。


「デボラ嬢に挨拶はする?」

「……なぜすると思われたのでしょうか。行きませんよ」


 イナトはあからさまに嫌な顔したのだった。

100話突破、感謝!

記念に番外編置き場を作りました。

IFストーリーやヒーロー達の視点、ヒーローとの恋愛編を書く予定です。(現時点ではIFのみ作成)

お暇な時にでも覗いてくれると嬉しいです。→[https://ncode.syosetu.com/n3057km/]

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