1.話は最後まで聞くが吉
「貴女は強くて美しい」
金髪碧目の男性は、私の手を取り甲にキスを落とす。それはそれは愛おしそうに私を見るもんだから、私は目を逸らしてしまう。
「いつまでもお前と…………しあいたい」
いつも被っていた黒フードを脱ぎ捨て、背後から抱きしめてくる黒髪黄色目の男。いい声を耳元にぶつけるのはやめていただきたい。
「あんたとなら、幸せになれる気がする」
一見チャラそうな見た目をしているこの赤茶髪灰色目の男。意外と硬派で一途。真っ直ぐにこちらを見据え一定の距離を保ってくるのは新鮮な対応だ。
個性豊かな男達。
そして、それぞれのアプローチ。
男達の愛の囁きを一身に浴びた私は、1人1人の顔を一瞥してから言う。
「ごめん、無理」
◇ - ◇ - ◇
小鳥のさえずりが聞こえて来て、慌てて飛び起きた。
早くゲームをやろうとコントローラーを探すが、足元は草で覆われている地面。
見上げれば、見慣れた天井ではなく青い空。
「これ、VRだっけ」
そもそもそれ用の機械を取り付けた記憶はない。これは夢かと頬を抓るが、痛みが返ってくる。
……夢でも痛みがあるかもしれない。うん。
私、乙女要素のあるゲームと死に戻りゲームが大好きな女――名前を凛と言う。
新しく出たゲームが乙女要素入りの死にゲーだと知り飛びついた者だ。
ありえない状況に思わず自己紹介をしてしまった。
これからどうしようかと立ち尽くしていると、天から何やら眩しい光が降りてくる。
それが地面に降りたかと思えば、人型を模しこちらに言う。
「私の声に応えてくれてありがとう。この世界をよろしくね」
「? どういう……」
「あ〜。やっぱり適当に読み飛ばしたタイプだったかぁ」
人型のその光る何かは1人納得した声をあげ、私の額を突いた。
突かれた痛みはなかったが、一気に頭の中に情報が流れ込んできて、思わず頭を押さえる。
「……よし。これで問題ないよね。君はこの世界を救うために来たんだ。元の世界に帰れるかは、君次第だけど」
頭の中に流れ込んで来た情報を要約すると、神から直々に「世界を救いにきてほしい」と頼まれていたようだ。そして、それに答えてしまったらしい。あの「はい」にそんな重い意味が含まれているなど知らずに……。
じゃあ、頼んだよ〜。と光は一瞬にして消えた。
「痛みを感じる死にゲーってこと?」
死んでも生き返る仕様は変わらずのようだ。もちろん何度も死ねるのは主人公だけの特権で、他の主要人物は一度死んだら復活できないらしい。
だが、私が死ねばリセットされる仕様もあるようなので、休憩のタイミングをミスしなければなかったことにできる、と。
「自分が痛いのは嫌なんですけど!?」
すでに消えてしまった光に届くことはなく。誠に不本意ながら、私の旅が始まってしまうのだった。
1話改訂しました。
修正前のものはどこかで公開する予定です。
(公開先見つけたらURLを貼る予定)