晴天の霹靂とはこのこと8
「はぁ??んで明日には国境越えて魔獣討伐してこいだぁ??頭イカれてんのか?」
夕食の少し固くなったパンを噛りながら、ゴウキリは悪態をついた。そりゃそうだ。自分もあの場では死んでも言えなかったが、同じ反応を心のなかでしていた。
「だから明日は朝早くにここを立つよ。でないと昼までに国境は越えられない。あの路銀じゃせいぜい3日程度が限界だよ」
クズ野菜が入ったスープを飲みながら、貰った装備品を見る。中にはお世辞にも綺麗とはいえないボロいマントに上下の服。それと年季が入ったボロい剣に少し重みのある路銀だった。その路銀も宿や食費を考えても3日程度しかない。いや、下手すれば3日すら持つか分からないほどだった。
「....相変わらずあそこは腐ってんな。先代の王が生きていた頃はここまでじゃなかったんだが。今の王.... いや、第2王子が大頭してきてから特に横暴になってきた。ここらの連中もいつ不満が爆発するか分からん」
あの後ゴウキリに、昔城に仕えていたのかと問うと、そうだ。とあっけらかんと答えてくれた。しかし何故自分を育てるために辞めたのかは、答えてくれなかったが。
先代の時代はセグラルドは知らない。この口ぶりを察するに、そこまで酷い王ではなかったのだろう。恐らくゴウキリが辞めたのは今の王が出てきてからだろうとセグラルドは推測した。
「切っても捨てるほど居る下民は、捨て駒同然か。はっ!反吐が出る。それらから搾取する税金で彼奴等は食ってんのにな。おいセグラルド、貰った剣見せてみろ」
そう言われ剣をとり、ゴウキリに渡す。鞘から抜き剣をじっくり見ながら段々と眉間にシワが寄って行くゴウキリをだろうなという目で見ていた。
「おい、マジで彼奴等。俺等の命なんぞどうでもいいんだな。こんな剣、ちょっと物に当たっただけでも砕け散まうほどボロボロだぞ。俺はそれなりに色んな剣を見てきたが、こんなに手入れされてないのは初めてだ」
それはセグラルドでも分かっていた。刃こぼれや所々亀裂も入ったこの剣では、魔獣なんてとてもじゃないが倒せない。
(師匠の剣術は一等だ。もちろん剣の目利きも凄い。その師匠がここまで言うんだ。よっぽど俺のことなんてどうでもいいのか)
何処か諦めていためにそこまでのダメージは無いが、やはり傷つくものは傷つく。
「....わざわざセグラルドを呼び出して命令するなんていくら何でも不自然が過ぎる。そこまで大事ない魔獣なのか...いや、そもそも何故他国の問題をこちらが対処するんだ....?」
ブツブツと呟くゴウキリに、言われてみれば...とセグラルドも思った。今まで全てがいきなり過ぎて、考えることを放棄していたのだ。
「....確かに変だな...?でもさー...あの場じゃ断るなんて無理だって...」
でかいため息をつきながら、天井を仰いだ。そう自分達は平民より下の下民なのだ。王族や貴族がやれと命じれば、やるしか無い。どんなに疑問に思っても、断ることは死と同意義だ。ゴウキリもそれは解っているだろう。セグラルドの言葉に対し無言だった。
「とりあえず、明日は何時もより早く起きるし、もう食い終わったし、体拭いたらもう寝るわ」
お休みと声を掛け、食器と共に奥に消えたセグラルドを、ゴウキリは何ともいえない表情で見つめていた。




