厄介ごとのにおい4
インキュバス、夢魔。男性の姿をして夢の中に現れる怪異。
大学生の中にそんなのが紛れ込んでいるらしい。
「そいつは随分と淫乱そうな怪異が出たな。学部内が男女のあれこれで荒れそうだ」
サキュバス、インキュバス。
もしも時代が時代ならば、魔女や悪魔が本当に存在すると本気で信じ、魔女狩りが行われていたような時代だったならば、不倫、不義密通の言い訳に大いに役立ちそうだ。
「そうね、確かに男女の人間関係壊しそう」
「でも、夢の中でいやらしいことされるだけの怪異じゃなかったか? 害があるかないかで言ったらあまり害にはならないんじゃないのか? 俺も文献で読んだことはあるけどこっちから動くほどの怪異じゃないはずだ」
夢魔、夢の中に現れる怪異。
夢の中ならば、現実世界での影響は少ない気がする。
「まぁ、普通に考えたらそうね。でも、人の夢の中に現れるってことはどういうことよ」
「それは人の頭の中に現れるってことだ」
「人の頭の中に現れるってことはどういうことかわかってる?」
「人の脳に現れるってことだ」
「そうよ。つまりどういうことかわかる」
そうか、そういうことか。脳に現れる怪異、それはつまり。
「人の脳を操ると?」
「近い、影響を与えるって言った方がいい。性欲を増強させたり、女の子と見境無く関係を持たせたり」
なるほど、確かにそりゃ女の敵だ。
「そんなやつ学部学科の中にいたら男女関係荒れるな」
「そういうこと」
「インキュバスが明石さんの学部学科に出たと言うことですか。そりゃ対応しないといけないですね」
「違う。主に被害が出てるのは別の学部学科」
「じゃあ明石さんの所属している学部学科には影響ないじゃないですか」
「いつこっちに寄ってくるかわからないじゃない。それに私の目をつけてる男性に害が及ぶと嫌な気になる」
つまり、明石さんには目をつけている片思いの男性がいて、その男性に害が及ぶ可能性があることをよく思っていないということか。
「なるほど、そう言うこと」
「そういうこと」
「ところで明石さん、会話するたびに体を近寄せてくるの辞めてもらえません?」
俺は怪異に関する話をするたびに、会話するたびに体を近寄せてきている明石さんを静止する。
会話するたびに徐々に体が近寄ってきている。
「ふざけないでもらえないかしら。こんなもの飲まされて我慢できるわけないじゃない」
そう言いながら明石さんは炭酸飲料を指差した。
俺の部屋に入ってくる前に適当に用意したちょっとした炭酸飲料だ。
「あ、気づきました?」
匂いか直感か、それとも別の彼女特有の能力か何かかはわからない。気づかれるのは当然だ。もしかしたら飲む前から気が付かれていたかもしれない。
気づかれる前提で炭酸飲料にちょっとした細工をしたのだから。
細工というより契約内容を遵守しているといった方がいいのかもしれない。
「当たり前でしょ。気付かないわけがない」
やっぱり気付いたうえで飲んでいたのか。
「それに、こんなものを目の前に用意されて飲まないわけないし、飲まされて我慢できるわけがない」
そう俺は明石さんに用意した飲み物。
それは俺の血液入りの炭酸飲料だ。
「私がサキュバスになりそうな気分」
「個人的にはなっていただいても嬉しいのですが」
「サキュバスにはならないけれど、契約通り血を吸わせて貰うわね。いやらしいことはしないけど、、、」




